最初の友人はかみちゃま
今日も今日とて猛暑です。実験でレンズに光を収束させれば一瞬で集まりそう。
時間は一週間前に遡る。
目を覚ますと真っ白で、何もない空間に僕はいた。
似たような場所に以前来た、というか連れてこられた?かな。
とにかく、ここは転生神様の空間に似ていた。
当時と同じく僕に体が無く、ケサランパサランみたいなふわふわ魂だった。
「やあ、また会えたね」
声の方を見るとそこには見覚えのあるお兄さんがいた。
でも今回は、神気を感じれなかった。
「どう?神気を消してみたんだけど驚いた?」
このひ、神様は僕を驚かしたかったらしい。
けど、残念。似た空間だったからそうでもないんですよね。
「はい、お久しぶりです転生神様」
「ええスルーぅ。というかリネカでいいって」
少し不満げな表情でアピールしながら転生神様は言った。
「ではそうし、そうするよ」
リネカは、それで良いと言うようにうんうんと頷く。
本当にこの神はフランクだな。
でも…………またここにいるってことは僕はまた死んでしまったって事、だよね。
赤ちゃんで終わるなんて呆気ない……………。ユリネお姉ちゃんとロゼさん、シウちゃんという子は大丈夫だったかな。
『……すい、ま…せん……』
これで終わりとか無いよ。
せっかく良い家族に会わせてくれたのに。
一ヶ月ちょっとなのに新しい家族は凄く愛情を注いでくれた。
この上なく幸せだった。
僕の前にいるリネカにも申し訳が立たないよ。
でも、お姉ちゃん達を助けた事に後悔ないし、どうしたら良いんだろ。
「あの奏多くん……もしかして死んだと思ってる?」
『………え?』
「ここに連れてきたのは、魔力枯渇で魂が一時的に離脱したから可及的速やかに避難させたからなんだ。あ、でも、魔力の方も体の方も安心して自己回復程度には魔力戻しておいたから今は睡眠状態なだけだから」
体がないから表情は分からないけど声で悟ったリネカが慌てて説明してくれた。
ただ、逆に安堵とその嬉しさに涙は出ないのに込み上げてくるみたいだ。魂だけだと枷なんて無いから感情の抑制が赤ちゃんよりも効かない。
そんな僕を見て更に慌てて落ち着かせようとリネカは五、六分程奮闘した。
「落ち着いたね」
『うん』
「ここに連れてきたのは緊急措置みたいなものだから直ぐにでも戻れるよ。起きるのは疲労や魔力回復諸々で明日だろうけど」
『ありがとうございます』
「全くだよ、保持量以上の魔法を使うんだから。あんなのいつ覚えたの?」
『偶々、リーナお母さんのお腹の上で寝てたときに偶々リーナお母さんが読書してた本に…っ!』
そういえば、僕初めて誰かにリーナお母さんって口にした。いや口今無いけどさ。しかも最初の相手が神様ってスケールが大きいな。
「どうしたの?」
『いえ?何も』
「そう?それにしても、なるほどね。使おうと思ったのはウィンドカッターでは無理と思ったからかな?」
『はい、まあ感覚で』
「流石、赤ちゃんだね」
赤ちゃん、そうだ!
『あの、イメージだけで魔法使えるのってリネカがやったの?』
「まあね、でも出来るのは直接見た魔法か魔法陣を見たやつだけ。魔法を創造するなんてのは君の希望に反するからね。浮遊魔法は別として、君が使えるのは今のところ二つだけかな」
『直ぐ使えるのも十分外れてますが』
「じゃあやめる?僕としてはオススメしない」
突然、リネカの声はさっきまでの陽気なものとは一変してワントーン下がった真剣なものになった。
確かにイメージ行使がなかったら今回切り抜けられなかったと思う。明らかにあの狼の魔物はその前に遭遇した同種とは異質な気配だった。
『もしかして、他にも同じ、いつか何かが起こるの?』
「言えるのはここまで、僕も神だから。まあ一応まだまだ先とだけ」
『ありがとうございます。でも何でここまで?』
「………本当は平等に見ないといけないんだけど、まあ友達サービスって事で」
友達。
え?
『僕とリネカって友達だったんですか!?』
「あ、やっぱり違う。ごめん、勝手に忘れて忘れて」
その言うリネカの顔は寂しそうで悲しい表情をしていた。
神様の中にはきっとそういう関係はいなかったんだろう。神様だから平等に見ることが神の世界でもあるのかもしれない。
もしくは、リネカは転生神だから、ここに来た魂を転生させ続けていて他の神様と会ったことがないのかもしれない。
ただ転生神としての役割をこなしてきただけなのかも。
『うん、いいね!友達』
「……え?」
『神様と友達なんて普通なれないだろうし、それにリネカは僕を助けてくれたしね』
「………奏多くん」
瞳をうるうると潤ませて僕を見つめる。
『それに親近感ありすぎて神様っぽくないし』
「酷っ!……ありがとう」
『あと、ベルね。僕の名前』
リネカは意外と言ってるみたいに目を丸くしてぱちくりと瞬きする。奏多の名前に未練がないと言われると、ある。
好きな名前だから。でも、今の僕はベル・ルーデレ・アズリーだから。今度はこの名前を大切に生きていきたい。
あ、でもそれでさよならする必要無いんだよね。
はは、うっかり。
リネカは前世の僕の名前を知ってるんだもんね。
『ごめん、やっぱりリネカだけは奏多で良いかな』
「大丈夫だよ。どちらも大切にしなきゃ」
『うん。じゃあそろそろ戻りたいんだけど』
「分かった。ああ、無茶はしないで」
僕の真下に魔法陣が現れた。
それで戻るんだろう。
『なるべく善処します』
「そこは無茶しないのを確固たるものにしてほしいんだけどなぁ」
『ここに来ざる得ない事態は避けるよ』
「そうして欲しい」
来ないのを少し悲しく感じてるみたいで、眉間にシワがよってる。イケメンが残念だよ。
『じゃあ』
「がんばれベイビー」
*
目を覚ますと、カーテン越しから射し込む陽射し目に入った。
そして、起きて早々僕はお腹が空いて大泣きし始めた。
「ん……ベル!お母様、ロゼ!ベル起きた」
僕はユリネお姉ちゃんに早々抱き締めれた。
起きるのは翌日って言ってたから、きっと側にいてくれたんだろう。そして、ロゼさんも側にいてくれた程に心配してくれたんだろう。
ユリネお姉ちゃんが呼び掛けると、シュルっと衣擦れの音がした。リーナお母さんが起きたのだろう。
「…ん……ああぁ〜ベル起きたのね、良かったわ。お腹が空いたのかしら?」
「所用かも」
「ん〜それはないわね。だって私に手を差し伸べてるし」
嘘!いやきっと本当だろう。あれからずっと寝てたんだったら食事を取ってないんだから。
ユリネお姉ちゃん、むむむと唸りながら僕をリーナお母さんに渡した。
リーナお母さんが僕を抱いた瞬間、僕は直ぐにお母さんの胸に口をつけた。そして、直ぐに僕は泣き止み、リーナお母さんはまた艶かしい声が漏れた。
「ロゼ起きて」
「ん〜〜何ですかぁ〜?ふぁ〜」
「ベルが起きた」
「ベルくんが!?」
そんな会話が聞こえてきた直後、母乳を飲んでる僕の方に視線が向いた。
僕は夢中過ぎて気にせずに食事を続けている。
その間、リーナお母さんが抱いたまま頭を優しく撫でてくれる。
安心する。
すると、「私も撫でたい」とユリネお姉ちゃんが言って、お母さんと僕の方に近づいて、頭を撫でる。
「ベル、ベルはお姉ちゃんが守るからね」
「わ、私もベルくん守ります」
リーナお母さんの「あらあら」と言って微笑んだあと、とんでもない発言をした。
「それじゃあ将来は私の義娘になるのかしら」
「あ、いや、そのあの……えっと」
まだ早いですよ、僕まだ赤ちゃんですよ。
そんな早くに結婚話持ちかけるのはどうかと。
「ロゼは家族を守るべき」
そうそう、そうです。六歳児でもユリネお姉ちゃんは既にしっかりしてる。
「ロゼがベルが良いなら否定はしない」
「ユリネまで〜!」
お姉ちゃんまで〜!
でも、僕も守りたい。今の家族を、ユリネお姉ちゃん達と一緒に心配してくれてたロゼさんを。
その為にも僕は強くなりたい。
一つ捕捉。
使える魔法が二つだけというのですが、先程設定の入った話を改稿したことをお伝えします。
主に改稿前を読んでくださった方にお伝えします。




