赤ちゃんだけど歌いましゅ
投稿日七夕です。皆さんは何を願いますか?
※なお、今回の話と七夕は関係ありません。
「しかも、立ってあるく方に先をこされた」
優先順位あるの、これ?
「悔しいですね」
ロゼさん、そこは共感しなくてよろし!
と、ツッコミ入れてたら、紅茶を嗜みながら、真剣に話し合い出した。
嬉しいけど、悩んで考えてくれてるのは嫌じゃないけど。
緊急を要する一大事みたいに話し合うのは止めて欲しい。
というか女子会は何処へ。
「そうです、歌を歌って教えるのは?」
ロゼさんが提案した。
「歌?」
「はい。ただ、教えるより、たのしく歌って教えるほうが良いかもしれません。ここにはピアノもあることですし」
確かに外国人は日本語を歌で覚える人もいるってテレビでやってた。
良いかもしれない。
それに楽しそう。
「あい!」
「ベル、やってみる?」
「あい?あい」
「ふふ、決まりですね。ユリネ、ピアノお借りしますね」
承諾をへてロゼさんは椅子に座りピアノの鍵盤に子どもらしい小さな指を添える。
まだ、弾いてもいないのに絵になる。六歳児ながらに炎の中で演奏しているような印象を想像させる。
タイトルは『炎の奏者』かな。
何か厨二っぽいけど、カッコいいし全くもって問題なし。
それにしてもピアノ演奏で歌うなんて中学校以来だ。
「では、いきますね」
「うん。でも最初はゆっくりお願い」
「ええ」
ロゼさんはピアノを弾き始めた。
心地好い演奏で眠ってしまいそうだけど、そこは耐える。
「あうあう、あうあう、あうあうあー、あうあう、あうあう、あうあうあー……」
僕は至って真剣です。でも、精神十八歳の僕にはこれがめちゃくちゃ恥ずかしい。
「キャー!ベルかわいい!」
お姉ちゃんが演奏をやめて、いきなり抱きついてきた。
それよりユリネお姉ちゃんは余り大声出さないからびっくりした。
なんか、めちゃくちゃ恥ずかしいよ。
「あうああうあうああうあうあうあう《だから可愛いとかやめてくださいお願いします》」
「ベルの言葉が分からないけど、かわいいから良いや」
良くないよお姉ちゃん!
あと、頬擦りしないで。あ、でもなんだろ、感触的にお姉ちゃんの頬っぺたも赤ちゃんみたいでモチモチしてめちゃくちゃ気持ち良い、あと、落ち着くぅ。
さて、落ち着いた所で、何か伴奏が乱れているのが聴こえた。
「ユリネズルいです。私もベルくん抱きしめてみたいのに〜〜〜〜〜!」
伴奏を止めてこっちロゼさんがやって来ると、ユリネお姉ちゃんに重なるような形でロゼさんまで抱き締めてきた。
二人に伴奏させるのは失敗だよ、これ。
「あうあーーーー!!」
*
「「申し訳ありません」」
あの後、僕の泣いてしまい、それを聞いて部屋の扉の側で待機していたミーシャさんが入ってくると、ユリネお姉ちゃん達は叱られた。
泣き止んだ僕はそれをミーシャさんに揺すられながら聞いていた。
ユリネお姉ちゃんの専属とはいえ、違う。メイドだからこそミーシャさんは叱った。
そして、温厚そうなミーシャさんが怒ると怖いのを知った。
「事情もベル様が可愛いのは分かりましたけど、自重というものを覚えていってください」
「「はい」」
「では、ベル様は私がこのままお預かりしますね。お嬢様達は伴奏をお願いしますね」
ミーシャさんがそう言うと、ユリネお姉ちゃんとロゼさんは「あ」と小さく声を漏らした。
凄い悲しそうな顔だ。
「何か?」
「「いえ、何でもございません」」
うん、ミーシャさん怒らせてはいけないと、六歳ながら二人は知ってしまった。
勿論、僕も。
その後、ユリネお姉ちゃん達は大人しく伴奏を弾き始め、僕は歌っていった。
ただ、とても音色が悲しく感じて、やるせない気持ちになった。
その間、ミーシャさんは「私はメイド私はメイド」と何かを耐えるように何度も呟いていた。
聞かなかったことにしよ。
どうも翔丸です。
この作品ブックマークまだまだ少数ですが増えてきました。
読んでくださった方もありがとうございます。
魔王学院の不適合者、達央さんの「これが俗に言う三秒ルールだ」面白かったです。




