1話その4
「士?ちょっと言っとくべき事があるんだけど?」
「ん…何ぃ?あとしんどいぃ…」
目つきの悪い女の子、副山彩愛はプログラムを叩き込まれ死にかけている右目の隠れたチャラそうな優男、榴咲士に話しかけた。
「作戦が上手くいけば、あの管理者装備を外した後はいつもどおり動揺と慢心ついてフルボッコにできる。けど…」
「けどぉ…?」
「アプリゲームが元になっているならコンテニューする可能性もあるわ」
「な…なんだって〜ぇぇぇ…」
テスト勉強すらしない士は過剰な学習量により絶賛死にかけているが、ちゃんと話は聞いています。
「つまりいくらコンテニューしてもダメだって思わせないといけないのよ」
「なるほどぉぉ」
「だからトラウマになるまでボコるか、」
「わーいボコる〜」
「ステータスはまだしも最低限、魔法やスキルの取得個数を減らしなさい。生憎キングダムオンラインで覚えれる能力の数は魔法とスキルそれぞれ十個までだから」
「へーい…頑張りまぁぁすぅぅ…」
転生者を絶望に飲まれる前に士は眠気に飲まれていった。
士は勇太に金的を放つと、すぐさま片手でチート能力を持った剣を奪い取り、まあ一方の手で勇太の顔を地面へと押さえつけた。
一瞬の出来事で何もわからないまま景色がコンクリートの大地へと変わった勇太が次に見えたのは悪夢の文章であった。
[魔法をこれ以上覚えられません!忘れる魔法を選択してください]
たった一回ならまだしもそれが一秒毎に何度も現れて来るのだ。ゆっくりと忘れる魔法を考える時間も無くパニック状態に陥っていた勇太は何も出来ないまま十秒が経過してしまった。
すると今度はスキルを忘れろと来た、魔法の忘却画面でいっぱいの視界はさらに奪われることとなった。
盲目状態と今までの努力が無くなる恐怖で勇太はまた何も出来ないまま十秒が経過した。
すると新しい画面が写ってくることは無くなった。
攻撃を止めたのかと思った勇太はすかさず画面を操作した。
おそらくだがもう魔法もスキルも全て使用できなくなったため、勇太は迷うことなく全ての魔法とスキルを忘却した。
全ての能力の忘却にかかった時間は約一分、再び視界がコンクリートの大地に戻り、起き上がろうとしたが背中に何かが乗っており起き上がることが出来なかった。
いくらキングダムオンラインは攻撃力を武器に依存した方のゲームであるとはいえ、最高レベルとなった勇太の攻撃力は最強の武器に匹敵するほどはある。
まさかとは思い勇太はステータスを確認した。
すると攻撃力がもの凄い速さで低下していた。
400もあった攻撃力は今では200まで下がっており、さらに低下していった。
士は勇太が地面にうつ伏せになって倒れている間、魔法とスキルの取得個数を減らし終えると。勇太の背中に馬乗りになり両手で抑え込みながら攻撃力を下げ始めたのだ。
武器が使えなくなり攻撃力が約十分の1になった勇太は今では二十分の一となり、力を失ったため振り解く事ができないまま、勇太の攻撃力は遂に1に到達してしまった。
だが士はまだ両手で抑えながら馬乗りのままだった。
それから無抵抗になった勇太のステータスは長い時間をかけてHP以外の値は全て1になってしまった。
「あれ?魔法攻撃力ってやったけなぁ?まぁもう魔法使えないしいいや」
士はそういうと勇太から降り、何処かへ去っていった。
チート能力だけではない、魔法もスキルもステータスも全てを奪われた勇太の心は崩壊寸前であった。
絶望感に包まれた勇太はなけなしの勇気で立ち上がり、たった1の素早さで逃げようとした。
「おーいユータ!」
ユータ、ゲームの世界での自分の名前、異世界での自分の名前、無敵の自分の名前、理想の自分の名前、その一言だけでも希望を見出した勇太は声の方へと笑顔で振り向いた。
だが、そこにいたのは今まで愛用してきたチート武器を持った、恐ろしいほど生々しい蝙蝠の化け物であった。
「忘れ物」
士はそう言うと勇太の左胸に剣を突き刺した。
「ギャアァァァァ!!!」
痛みか恐怖かその叫び声の意味は勇太自身にもわからないものだったが、脳みそに墨汁をぶち撒けられたような真っ黒な気持ちではあった。
しかしゲームの世界では首を切られようと、心臓を潰されてようとHPさえ残っていれば生きていけるので、風前の灯とはいえ勇太は生存していた。
「マジか、管理者ブレードでも死なないってまさかステータスも転生者特権でいじられたのか?」
士は剣を心臓から引き抜くと勇太に振り上げた。
「頼む!助けて!助けてください!お願いします!お願いします!」
勇太が最後の力でやったのは命乞いであった。体が自然に動いたのか途中から敬語に変わり土下座までし始めた。
「いいけど条件がある」
「なんですか!何でもやります!だから命だけは!」
またも希望の光明が見えた、士の性格から無理難題を押しつけて来るのは当然だが、今の勇太は藁にもすがる思いだった。
「お前さ、今は逆の立場だけど、こうやって無茶苦茶な力でビビらせたやつどんくらいいる?」
「ビビらせた…やつ?」
異世界転生しチート能力を手に入れた勇太に敵はいなかった。だがその力の前に恐怖する魔族もいた。
それだけではない、近隣諸国の王や国民、はたまた自分をしたってくれている姫王ソフィアまでも自分の力に恐怖し頭を垂らしていたのでは無いのか。
自分にとっては極々自然な行いが周りからすれば畏怖そのものだったのかもしれない。
最初あの蝙蝠の化け物に「人の姿をした化け物」と言われた、最初は冗談だと思っていたが、今になってみると正しいかもしれない。
自分と同じ種族でありながら、技を磨きもせず才能だけで敵を虫のように容易く滅ぼし、圧倒的な力を見せつけている。
それが化け物と言わず何と言うのだろうか。
「………」
勇太は士の条件をクリア出来なかった。
生きてるだけで周りを恐怖させる力、自分が倒した者、自分の噂を聞いた者、自分を慕う事で恐怖の牙から逃れようとする者、それら全てを数えることなんてどのようなチート能力があっても不可能であろう。
「虫のように全てを殺す、呼吸のようにカンニングをする、圧倒的な力ってのは自分だけじゃなく関わる全てのものの環境を変えてしまうってことがわからないならそいつはもう人間じゃない、ただ好き勝手に力を振るうだけの化け物だよ」
士は振り降ろした剣で勇太を一刀両断にした。
勇太の目の前にはgame over の文字が写り込んだ。
「いやぁ、終わった終わった!」
士は元の姿に戻ると河川敷に座り込んでいた。
異世界転生者との戦いは一瞬たりとも気の抜けない戦いである。
馴れ馴れしく話している時も実は全神経を研ぎ澄ましている状態のため、戦闘が終わると体力的にも精神的にも一気に力が抜け落ちてしまう。
「上から見てたけど、大丈夫そうだったじゃない」
突如河川敷に現れた化粧の濃いギャルのような女の子は士に話しかけた。
「そりゃな、やっぱり俺の考えた陽キャタッチ作戦は最強だからな!」
「私は二度と嫌よ、自分でも遺影イェーなんて言って恥ずかしい」
実は鬱陶しく絡んできたギャルの正体は彩愛で、転生者と肩を組んで写真を撮った瞬間、士は武器の装備個数を減らしていたのだ。
「俺は転生者に警告してたんだけどな、不意打ちするかって、俺がするんだから相手にもチャンスを与えようとする辺り俺は優しい」
「何度も言ってるけど、あんた本当にクズよね」
「いやいやそれほどでも」
クズと罵られても士は嬉しそうに照れていた。
「それにしても好きなゲームを奪った奴らに復讐ね、何にもできないオタクがいきなり異常な力を手に入れたらとんでもない考えを持つのものよね」
「案外そうでも無いさ、野球オタクが一生野球ができなくなったら死にたくなるほど落ち込むだろうし、ファッションオタクが服を買えなくなったらそりゃ生きる気力を失うだろうさ。それを奪った奴なんて死ぬほど恨みたくもなる」
「いや、それと違ってゲームなんて将来何にも役に立たないじゃん」
「例え人類が正しいと決めた物から間違いと決めた物まで、個人がそれを生きがいとしているならそれはとても大事な物だと思うぞ。大小も善悪も役に立つ役に立たないも関係無く人生を形成する核のような存在だからな」
「それでも加減は必要よ、クイズ番組でアホな元プロ野球選手やモデルなんてわんさかいるんだし」
「まあな、だがそうやって学業社会から溢れないためにカンニングが生まれた。今回の転生者はそれが生まれていない時代に生まれてしまった。俺ももしかしたらあいつみたいになっていたかもしれない」
カンニング行為を誇らしげに言う士に彩愛は呆れていた。
「じゃあついでに聞きたいんだけど、士は何を核にして生きているの?」
「え、毎日風呂入る前の床オナ」
士が平然と汚い言葉を発すると彩愛は無言で歩き始めた。
そして転生者が持っていた剣を拾い、何度か素振りをすると化粧越しにもわかるほどの殺意で士を睨みつけた。
「よし、あんたの生きがい切り落としてやるわ」
「いぃぃぃやぁぁぁ!!!助けてぇぇぇ!!!」
数日後、夜の河川敷で男に捨てられたギャルの幽霊が若い男の男根を切り落とすべく大きな剣を持ちながら追いかけてくる怪談が噂になった。
異世界の時間経過にして3カ月後
正義の国ジャスティスランドはほぼ壊滅状態になっていた。
勇王が現世からいつのまにか帰還したのはいいものの、全ての魔法とスキルを失い、ステータスはHPとレベル以外全て1、そして何も装備できないパンツ一丁の姿のため無事ではないのは明らかなのだが。
そして最強の勇王が無力になったという噂が立つと、近隣諸国はジャスティスランドに戦争を仕掛けた。
当初は他の王の力もあり戦争には勝利出来たものの、何国も何度も戦争を仕掛けられ2カ月もの間保ち続けたジャスティスランドは遂に敗北した。
その後国民は奴隷とされ、勇太を慕ってくれたソフィア達女は辱めを受けている。
そして転生者である勇太は隣国が今まで隠していた勇太への不満が爆発したかのように、無力と化した勇太を牢へ閉じ込め、サンドバッグにしていた。
「ほらほら勇王さんよぉ!俺のブラットインフェルノをくらいな!」
「熱い!やめてください!助けて!」
強面の男は嬉しそうに勇太の乳首に松明を当てると、勇太は泣きながら苦しみ悶えていた。
「おいお前!勇王様は無敵なんだぞ!俺のようなもっと強力な魔法を使わんか!」
隣にいた兵士が松明を奪い取ると勇太の股間に炎を押し付けた。
何度味わっても慣れない痛み、勇太は悲鳴すら上がらなかった。
「やれやれ、これだから三流どもは…」
「「何だと!…っ!お前は!」」
突如現れた兵士の言葉に二人の兵士は反応したが、彼の姿を見て驚いていた。
「お前は姫王から処女を奪い…」
「脱童貞を果たしたあの…」
「そうソフィアの初めての相手、人呼んでヤリ王様だ」
勇太は現れた兵士に言葉に耳を疑った。
「嘘だろ…ソフィアが…」
自分だけではなく仲間すらそんな仕打ちを受けているのか、だが逆らうことも怒りを見せる事もできない、何故ならチート能力が無ければ何も出来ないのだから。
「三流どもに見せてやるよ…究極の脱童貞魔法ジャスティス・スプラッシュを!」
兵士はそう言うとズボンを脱ぎ、下半身を露出した。
「まさか、やめろ!やめてくれ!」
「勇王…貴様に敗れ、童貞を捨てきれなかった同志達の手向と思え!いくぞ!ジャスティス・スプラッシュ!!!」
復讐を決意した転生者、清水勇太の目の前には、顔すら覚えていない者達の代理としてたった男の復讐の聖水が目の前まで迫って来ていた。
高校教員連続殺人事件は急に幕を下ろし、有名人の不祥事や入学した学生へのインタビューなど数々のニュースに変わり、人々の記憶から消えていった。
正直言えばやりたくもない学問や仕事で夜まで時間を潰し、趣味、交友、食事、入浴、睡眠、それぞれの人々がそれぞれのやりたいことやるべきことをしてまた最初に戻る。
しかし人は力を求める、財力が有れば働かなくていい、権力が有ればあのウザい上司をクビに出来る、もっと力が有ればいじめられない。
多種多様の欲望がそれぞれある、全知全能にタダで成れるなら誰だってなるだろう。
しかし人は変化を恐れる。学校という新しい世界に緊張する新入生、増税などの値上げに怯え前日に爆買いする人々、リスクを恐れ行動しない自分。
だが力には変化がセットで付いてくる物だろう。
立場が変われば人が変わる、収入が減れば生活が変わる、全てを思い通りにできるチート能力を手に入れれば心が変わる。もう二度と昨日の人間らしい自分には戻れない怪物と化す。
人の姿をして、人を虫のように殺し、人の感性を失った、心の歪んだ化け物に。
だからこそ力に対して一歩ずつ歩まなければならない、一日でレベルが100になった者は畏怖されるが、十年でレベル100になった物は人々の憧れとなる。
結果に違いはないのだが、日常が起こす微量な成長は人の目を晦ますことができる。
仮に毎日1mm身長が伸びるなら、来年には36.5cm去年よりも身長が高くなる。
そんなに上手くはいかない?それならコップ一杯だけでいいから牛乳を毎日飲んでみるといい。
自分が決めようと騙されようと毎日続ける事は案外難しかったりする。
だが、悪い事かもしれないが何かを生み出せるだろう。
ちなみに彼は中学の時実践していたが身長は伸びなかった。
だが毎日腹を下したせいで授業を何度もサボっていた。クズだな。
田中真侍は葛藤していた。
仕事中に他事を考えるべきではないのだが、異世界犯罪対策課なんて超常現象に立ち向かう者達とこれから関わり続けるため、気になってしょうがないのである。
しかし、どちらかと言えば鬱陶しい榴咲士、話しかけづらい切矢宙、そしていつも機嫌の悪そうな副山彩愛の三人に話題を振ることができないのである。
今日は副山彩愛と二人っきりの勤務なのだが、黙々と作業をする彼女に話しかけるのは真侍にとって至難の業であった。
ただただ時間が過ぎていきアルバイトの退勤時刻となった。その時
「あのさ店長」
副山彩愛が話しかけてきた。女性関係が無かったというのもあるが、突然の事で心の準備が出来ておらず真侍は慌てた。
「え、ど、どうしたの?」
「榴咲士について詳しく知ってる?」
副山彩愛の質問に真侍は疑問に思った。
榴咲士と付き合いが長いのは当然自分よりあの二人だろうし、逆に自分が知りたいのだ。
「いや全然、強いて言うなら元気な子だなぁってくらい」
「絶対内心鬱陶しいやつって思ってるでしょ」
図星である。しかし顔に出してはいけない、腐っても課長なのだから。
「あいつは極力こっちに関わらせたく無いからって嫌われようとしているから、逆にグイグイ行けばあいつは嫌がるわよ」
彩愛の言葉に真侍は意表を突かれた。
その日の気分で動いてそうな士が実はそんな事を考えているなんて思ってもいなかったからである。
「でも、そんな事まで知っているのに僕に彼の事を聞いたんだい?」
「え?だってあいつキモいもん」
尚更思う疑問の答えが単純かつ曖昧なもので真侍はさらに混乱した。
「士はオタクだしすぐ下ネタ言うし、服のセンス猿以下だし、大抵のことに手を抜くし、やる事なす事全部汚いやつよ。でも一番キモいのは他人の心の中を徹底的に調べるくせに自分の事はほとんど言わない。何故転生者と戦い始めたかも、いつ一回死んだのかも、異常な右目のことも、あいつ自身わかってないかもしれないこともあるかもしれないけど、表面的なキモさの奥にある本心がどんなものかだけは知りたい。だいたい五年くらい一緒にいるんだからそろそろ教えてほしいわよ」
最初はただの悪口だったが、次第に彩愛の表情は何処か不安そうになっていった。
「男同士なら話しやすいと思うし、些細なことでもいいから、士のこと何かわかったら教えてよね、それじゃ」
彩愛は真侍に軽く頼むと部屋から出ていった。
長い付き合いの人でも詳しく知らない人間、榴咲士。
彼が異世界犯罪対策課の中心であることは間違いない、だがそんな彼の本心を何の力も無い自分ができるのだろうか。
だが真侍はふと思い出した。士のことをヒーローと例えたときに殺気立ったことを思い出した。
それだけで彼の本心がわかるわけではないのだが、重要なピースであることは間違いないだろう。
真侍は課長としても職務もあるが、異世界犯罪対策課と榴咲士の秘密を知らなければならないと、密かに思うのだった。
榴咲士は全裸だった。
当然自宅であり入浴するために脱衣したため、ごく普通のことであろう。
まあ自宅ではしょっちゅう全裸なのだが。
士は椅子に座りながらシャワーを浴びると、右目を隠している黒い前髪をかき上げた。
痩せている方だが筋肉が付いた男らしい体型が鏡に映っていた。
鏡には入っていないが股の間にある男の誇りと魂が、士を一人の男性であると証明している。
口と顎には薄いが髭が生えており、チャラい優男のような目つきをしていた。
だがそれは左目だけであった。
鏡に映る士の右目は大人の女性のような冷たくも妖艶な瞳であった。
目の形が左右違う人間は少数だが存在する。しかし士の左右の目は誤差とは言い切れないほど全く違うものであった。
士は鏡に映る自分を見て何処かイラついた表情になると、無言のままシャンプーで髪を洗い始めた。
鏡に映る自分を見るたびに気分が悪くなる。
この右目のせいで社会から拒絶され、家族からも拒絶され、ただただ暴力を振るう日々。
そんな奴は愛されない、だから愛することもできない。
時に思う、アニメに出てくる異世界系のヒロインのような圧倒的なチート能力という鎖に繋がれた従順な雌犬が欲しいと。
彼女たちなら愛してくれるだろう、彼女達なら向き合ってくれるだろう、だって俺には力があるのだから。
だがそんなことを考えてしまう自分が世界で何より嫌いだ。
本当に力に溺れてしまえば、見た目通りの化け物になってしまう。
だからこそ力に溺れた死体を蹴る、どれだけ絶望しても蹴る、後悔しても蹴る、反省しても蹴る、死ぬまで蹴る、死んでも蹴る、自分の生写しのような化け物の死体を蹴る。
血だらけで転がっている人形がいるが、これで今日の醜い自分が死にみんなに愛されるチートな明日に転生できるだろう。
危険なのは当然だが、一人蹴れば癖になる。
俺の無双は止められない、止まれない、止めたくても止められない。
だって明日で愛を授かるのだから。
それに比べれば死人の愛なんて大したものじゃないのだから、消して何ら問題は無いだろう。
俺は何か間違っているのか?
士は体を洗い終えると、浴場を出た。