はいはい、と
タケルは、シュウイチの両親に向かい、さらに言葉を続けた。
「シュウイチ君がしたいじめを、本人に償わせます。今日学校に来ないで逃げようとした事も罰を与えます。もし親であるあなた達が彼をかばうなら、二人もシュウイチ君と同罪とします……。さ、どうします?」
タケルの言葉に、シュウイチの両親は、かばうのが当然だと言わんばかりに反発した。
「な、何言ってるの! あなた、少しおかしいわよ! 何が同罪よ! シュウイチが何をしたっていうのよ!」
「うちのシュウイチは、もう謝っただろう! それにその後にもいじめを続けていたなど、信じられん! うちの子は言えば分かるいい子だ! 証拠もなしに何を言ってる!」
そう言ってタケルに詰め寄る両親とは対照的に、シュウイチはその後ろで座り込んで震えていた。
「はあ……。証拠ね。はいはい……と」
タケルはそう言うと、話を聞く気のない両親に向けて、人差し指でちょんちょんと突く仕草を見せた。
「な、な?!」
その途端、二人の頭の中には、シュウイチが今までタケルに対して行ってきたいじめ、嫌がらせ、暴力の光景が、鮮明に浮かび上がって来たのである。
「こ、これは……?」
驚く二人に、タケルは無表情で答える。
「証拠がいるんなら、その通りですよ、お二人とも。これでもまだ文句あります?」
「こ、こんなの信じないわ! あなたが私達に何か変なことして、見せただけじゃない!」
「そ、それに、シュウイチはもう謝ってるんだから、もう良いだろう! 高校生の子供がやったことだ! 間違いだってある!」
なおもそう言って無意味に食い下がるシュウイチの父親に、タケルは無言で指を弾く動作をした。
「ぶっ!?」
いきなり目で見えない何かに殴られ、顔が仰け反る父親をみて、母親は驚きの叫びをあげた。
「きゃあっ! なっ、何よこれ! あぶっ!」
しかし、その母親も、タケルの不可視の攻撃を受け、顔を殴られて声を出す事が出来なくなった。
「子供を溺愛しすぎじゃないかな? ちゃんと子供のやってしまった事に向き合わないと……親としては駄目でしょ?」
そう言いながら、タケルは二人に対し、更に攻撃を加えた。目に見えない何かに、シュウイチの両親は顔に、腹に、避ける事も防ぐ事も出来ない攻撃を受け、痛みの叫び声をあげた。
「罪のある女性も、罪のある男性と同じ罰を受けるべき……。僕はそう思ってるんだけど、世の中ではちょっと違うのかな? まあ、どうでも良いけど」
そう言って、タケルはシュウイチの父親同様、母親にも、同じ様に攻撃を加えた。悲鳴と共に、彼女の顔にも殴られたような跡が浮かび、口から血と折れた歯が落ちる。
「わ、わかった! 分かった! 頼む、もうやめてくれ!
懸命に頼むシュウイチの父親に、タケルは初めて少しいたずらっぽく微笑んだ。
「ふふっ……。いやぁ、ごめんごめん。罪のあるものを庇うということに対する罰としては、少し痛めつけ過ぎたかな? でも、まあ良いよね? 高校生の子供のやったことだし、間違いだってある……よね?」
もはや敬語を使わなくなってしまったタケルの言葉が、血が飛び散っているリビングに響く。その言葉に、シュウイチの両親はもう反論する事も出来なかった。
「うっ……ううっ……」
殴られた顔を押さえ、座り込んで呻くことしかできなくなったシュウイチの母親を見ながら、タケルは続けて、優しく話し掛けた。
「あなた方両親のその様な態度が、シュウイチ君を更生させる機会を奪ったんだから、いじめ事実を知った後にもなお彼をかばうというなら、その分の罰を二人共受けなければならない。分かった?」
「ひっ……ひいっ! わっ、わかりまじだぁ!」
シュウイチの母親のその叫びを聞いて、満足気にうなずいたタケルは、次にシュウイチの方を見た。
「さて……と、1時間目が始まる前に戻りたいなぁ。さっさと済ませようか」
「う……うっ、うわああっ、嫌だああっ!」
そう叫んで、立ち上がって逃げようとしたシュウイチであったが、もうすでに体は金縛りにあっており、動くことは出来なくなっていた。
「シュウイチ君……逃げようとして、償いを放棄したね? 許されないよ……?」
そう言いながらゆっくりと歩いて来たタケルは、シュウイチの前に立ち、彼を静かに睨みつけた。
女性に暴力を振るって顔を傷付ける事について、やるかどうか少し考えましたけど、結局やることにしました。




