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その人を赦す事にするよ

 朝礼が終わったあと、イジメをしている生徒たちのリーダー格であるヒロユキは、それが自分の務めであるとでも言わんばかりに、タケルの座る席の前までやって来た。


「おい、お前あの時何であんなに遅くなった? 俺達ずっと待ってたのに、お前帰って来なかっただろうが!」


 それに合わせて、イジメをしているクラスメートのうち、何人かがヒロユキの近くに集まって来た。あの時……廃神社に置いてけぼりにしていった時に、その場にいた者達だ。


「そうそう、俺達を待たせやがって、どういうつもりだ?」


「あんたさぁ、裸でずっとあの辺うろついてたんでしょ? 何やってたの? キモいんだけど」


 各々、言いたい事を言っている。その中に、タケルを心配するような言葉は全く出てこない。


「でさ、早く出せよ、あのとき持たせたビデオカメラ。ちゃんと撮影してたかどうか見てやるから」


 そうヒロユキに言われたタケルは、笑ってカバンからビデオカメラを出した。手のひらサイズの、そのビデオカメラを机の上に置き、タケルは答える。


「ビデオカメラはここにあるけど、結局何も撮れなかったよ」

 

「あぁ? ふざけんなよお前。これでずっと撮影しとけって言っただろうが!」


 そう言いながら、ヒロユキはビデオカメラの再生ボタンを押してみた。


 すると、何も撮った映像が入っていなかったので、タケルが何も撮影しなかったと思ったヒロユキは、怒って席に座っているタケルにいきなり蹴りを入れ、タケルは椅子から倒れて床に転がった。


「てめぇ何も撮影してねえのか! 殺すぞコラ!」


 叫ぶヒロユキに対し、タケルはゆっくり起き上がると、笑ってヒロユキを見つめた。


 いつもであれば、怯えながら「ご……ごめん……」とか言ってるはずのタケルが、そんな様子が全く無いので、ヒロユキ始め周りの者は違和感を感じたが、ただ単に舐められているとしか感じなかったヒロユキは、タケルの胸倉を掴み、睨みつけた。


 タケルも背が低いわけではないのだが、ヒロユキは身長180以上あり、力も強い。胸ぐらを掴まれると、タケルは踵が床から離れてしまい、つま先だけで立たないといけない。


「撮影してたけどね、何も映って無かったよ。それから……」


 タケルは、相変わらずヒロユキを怖がる様子が無い。


「こういう風に、いきなり人を蹴るのは良くないと思うな」


「あぁ? 何だとてめぇ!」


 タケルからそんな事を言われて、余計に頭にきたヒロユキは、声を荒らげてタケルを睨む。


「クラスの皆もだけど、君達は今まで僕を散々いじめてくれたよね。本来なら絶対に赦されないよ? だけどね……」


 タケルから、クラスメートから見れば意外とも言える言葉が出てくる。


「特別に、もしクラスの誰かが、本当はやりたくないけど仕方なく僕をいじめてるというのだったら、放課後までにそれを僕に言ってくれたら、そして謝ってくれたら、僕はその人を許す事にするよ。今回だけね」


 タケルのその声は、何故かクラスの全員の耳に届いた。タケルは別に大きな声を出した訳でもないのに、全員がその声をはっきりと聞いたのである。


 タケルの胸倉を掴みながら、その言葉をポカンと聞いていたヒロユキであったが、ふと我に返ると、声を上げて笑いだした。


「はぁ? はははっ、何言ってんだお前? お前に許してもらう必要なんかねぇんだよ! ボケ!」


 そう言うと、ヒロユキは乱暴にタケルの胸倉を掴んでいた手で、そのまま彼を突き飛ばした。机の方に突き飛ばされて、タケルは机ごと倒された。


「お前、放課後いつもの所な。また調教してやるからよ」


 そう言われているタケルの顔は、恐れる様子も無く、不気味にニヤつく笑顔のままであった。

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