この世界は
僕はなぜか彼女の家に案内されていた。
女性の家(もしくは部屋)にはあまり入ったことはなかったので、少し緊張した。そしてこんなときに否応なく京子の部屋のこと思い浮かべてしまう手前、まだ僕は京子が好きなんだなあ、としみじみ思う。
「君がなぜこの世界についてあまり多くを知らないのか、その理由はきかないでおこう。ただ、私の話をきけ。この世界の常識だ。
さて、まずは『青樹の儀式』について話すとしよう。」
「ちょっと待ってください、まず、名前を教えてもらってもよろしいですか?」
「ああ、そういえば自己紹介がまだだったな。私はトウキョウで軍人をしている、トウカという。名字はない。というのも、私は孤児院の出だからな。宜しく。そして私の部下が迷惑をかけた。謝罪しよう。」
といって頭を下げた。
美人はどんな所作をしても絵になるな、と感じたが、今はその場合ではない。
「いえ、気にしてませんよ。僕はユウスケといいます。名字はありません。あなたと同じ理由です。よろしくおねがいします。」
「そうか、だから儀式をしていなかったのだな?」
「まあ…」
詳しく言うと違うのだが、面倒くさいので、そういうことにしておこう。
「すまないな、嫌なことを聞いた。
まあ、話を続けよう。
『青樹の儀式』というのは、君がやった通り、あの大きな樹、青樹に触れることだ。これは一種の成人式なのだ。十五才の時に、村単位で行われる。
何でそれをやるか?自然にこの身を捧げるという決意の表明のようなものだ。
代わりに自然は人々に『魔法』を授ける。これはその人が十歳の時に願っていたことに基づくのだ。これは村長の家にある水晶を見るとわかる。君も後でいってみるといい。
しかし、その事を悪用するやからもいる。
例えば十歳のとき、子を洗脳し、望み通りの能力を持たせたり、もしくはこの儀式に参加しなかったり。君は後者を疑われた訳だが…
もし儀式に参加しないと、子は親の能力をそのまま引き継いでしまうんだ。
これは反自然的な行為なのだが、これを行うと、非常に強力な魔法がてにはいる。
その強大さに、この世界に住み着く悪魔はこぞって力を提供し、この世界を終わらせようと試みる。悪魔に提供された魔力は、使うさいに赤く発光する。
もうわかったろう?それが『赤の魔法』なんだ。そしてそれの使い手を『赤子』と呼ぶ。
この世界は自然との調和を第一とした世界なのさ。」