5話 【作業厨】と読書
俺の最近ハマッていること。それは読書だ。
うちには毎日一冊読んでも何年も持つくらいの本がある。
この世界の歴史や生物などの知識を覚えること、それは作業厨にとって作業の一環。つまり楽しみを感じることなのだ。
お前ら、「『前まで読解とかマジ無理』とか言ってたくせに」とか言うんじゃねえぞ? 誰だって趣味は変わるんだ。
気を取り直してさぁ、今日も本を読むぞ!
「『封魔の巫女と7つの秘宝』か……。また封魔の巫女かよ」
そう、うちにある本。10冊に1冊は封魔の巫女がタイトルになっている。それどころか、全く関係なさそうなところにまで封魔の巫女が出てくる。
例えば、『王族御用達! 素敵なガーデニング』の中にも。
『蛍透草。透明で美しい花を咲かせるわよ! 花を摘むと光るの、なんて幻想的なのでしょう。その美しさ、あの有名な封魔の巫女も愛したとか。旦那様との夜の……』
などと書かれている。
……ホントこのガーデニング本、どうにかしてほしい。
そんなことは置いておいて。
【封魔の巫女と7つの秘宝】
現在の王族がこの地を治める前、俗に言う神代の時代。この時代、シエロ王国は、『シノチ』と呼ばれていた。シノチには闇の魔獣が蔓延り、人々は安心して生活することも儘ならなかった。そんな中、『シエロ』と呼ばれる少女が現れる。彼女は現れた当時から驚異的な能力を操り、後述する7つの迷宮を造り出したことで知られる。彼女の、
『作業は全てを救う!』
という名言は有名だろう。
彼女はその、人並外れた力で、闇の魔獣を浄化した。のちに、彼女は『封魔の巫女』と呼ばれ、3000年経った今でも語り継がれている。だが彼女は突然、歴史の表舞台から姿を消す。近年では、『来るべき厄災』に備えるために永い眠りについたという説が有力だ。
そして、彼女は眠りにつく前に7つの迷宮に7つの秘宝を隠したとされる。
それが何なのか。それはシエロ自身にしかわからない。
ここから先は、作者の意見が書かれている。
取り敢えずわかったこと。
封魔の巫女は超有名、はっきりわかんだね。
重要そうなことと言えば『来るべき厄災』ね。
なんかいかにもな響きだし、覚えておこう。
それに『作業は全てを救う!』か……。
シエロとかいう人、ソラそっくりだ。
少し懐かしいような、そんな何かを感じながら俺は新しい目標を立てた。
「7つの秘宝、コンプするぞ!」
あったりまえだ!
作業厨として、そういうアイテムのコンプリートは是非ともやりたい。いや、やらなければ!
「秘宝の場所はわかるの?」なんて聞かれたら俺はまず、こう答える。
わからん。
あ、でも一応迷宮の場所は調べたぞ!
アミスター大迷宮、ブロッサ大迷宮、シーサイン大迷宮、ディルアング大迷宮、イーグリア大迷宮、エフレディ大迷宮、グレーティア大迷宮。それぞれその名前がつく地方にある。
ちなみに一番近いのはグレーティア大迷宮。それもそのはず。グローティア大迷宮があるのは、うちから一時間半歩いたところにあるのだから。
うちがあるのはグローティア州のディークという山上の街の頂上。父さんの親族が治めている隣街に大迷宮はある。
街の名を、イニジアという。
「父さん、今度イニジアに連れていってよ!」
俺は言った。
すると父さんは。
「いいぞ。イニジアは俺の弟が領主をやっている。安心出来るだろう」
お、弟!?
父さん、弟いたんだ。というか弟さんも領主か。
「こんなこともあろうと用意しておいたアレを使うときか」
「アレって?」
俺は尋ねた。
「リック、ちょっと来い!」
俺は父さんに言われるがまま、家の裏へとやって来た。
家の裏に置いてあったのは、円盤。
「これは『レコーズ』。国民的乗り物だ。どこの家にもだいたい有るぞ」
なにそれ。国民的アイドルとかは聞いたことあるけど、国民的乗り物って……。
「これに魔力を流せば隣街までなんてひとっ飛びだ」
父さんによると、国民的乗り物レコーズは空飛ぶ円盤で、魔力を流すと浮遊するように魔方陣が組んであるらしい。
体重を傾けると進む方向を変えられるとか。
それ、ハンドルのない飛行機じゃね?
なにそれ怖い。ちなみに1人乗り。
父さんは「乗ってみろよ」なんて言ってくる。ヤバい、謎の威圧感で断れなくなってしまった。
「ちょっと待って、魔力を流すってどうす……りゃあぁぁぁぁ!」
突如として浮遊し出すレコーズ。
ヤバい、ヤバいよヤバいよ。なんか回ってるし!どんどん昇ってるよ?あ、待って待って落ちてる落ちてる!
「……」
「ま、まぁ……。そんなことも、あるさ」
天国が見えた気がした。