1話 【作業厨】のプロローグ
「ちょっと奥さん、今日は3話投稿ですって!」
*お待たせしました! ついに作業厨、スタートです!
本宮圭介が作業の楽しさに目覚めたのは中学2年生の頃だった。
テッテレ~! ピロロン!
「ソラすげぇ! またプレイヤーレベルカンストかよ」
「そんなことないって。作業がなくなっちゃったってことだよ? っと消去!」
「えっ? 消すの? ……かっ、カッコイイ!」
「圭ちゃん。私、一緒に世界一の作業がしたい……!」
「マジ? かっけぇ! 絶対だぞ。約束な」
「「作業はセカイを救う!」」
そんなことを言い放った少女、村主ソラに俺は憧れたんだ。
普通に考えれば「何言ってるの?」と思うかもしれない。
だが、ソラはそんなことは微塵も感じさせない程の天才級作業厨だったのだ。
ソラは一ヶ月で新作RPGゲームのユーザーレベルをカンスト。ブロックで出来た世界を冒険するゲームで全マップを掘り抜き、それもチートなしでやってのけた。
さらにソラは出会った時点で、10ヵ国語以上を話すことができた。超グローバル社会と呼ばれる現在、義務教育では日本語と英語は必修。そして中国語、フランス語、スペイン語、ポルトガル語のなかから一つ選択して学習する。
つまり、7か国語以上独学で勉強したということだ。
普通の人からしてみればすごいで済むどころの話ではないが、ソラにとってそれは作業のひとつなんだという。まさに天才だ。いや神か。
当時俺は中二病を患っていた。その影響もあったのだろう。
俺もソラの作業への情熱に魅せられ、作業道へと歩みを進めていった。
『世界一の作業』……カッコいい。ぶっちゃけ『世界一の作業』ってなんだし、曖昧過ぎるだろ! とは思った。だが、この目の前の少女、ソラと一緒なら。二人なら、良くわからないことでも不思議と出来る気がするのだ。
「さぁ、みんなも作業道を歩もうではないか!」
中二病を拗らせた俺はクラスのヤツに言い触れ回った。今考えると凄くイタイやつだ、俺。
放課後はソラと『つくってワックワック』という子供向け工作番組を見る毎日。
「ゴリラくん、もっとスピーディーに!」
「圭ちゃん、着ぐるみなんだから多目に見てあげようよ」
「しゃーねぇな、でも従兄弟のゴリネ。お前は許さん!」
「それな! 作業シーンゼロだし、尺長いし。お前は引っ込んでろ」
「あいつの『ハァイ。アタシ、ゴリラくんの従兄弟のゴリネでぇーす』がマジうぜぇ」
「わかりみが深い」
こんな他愛もない日常がずっと続くと思っていた。
しかし、それは何の前触れもなく起こった。
突然ソラは、死んだ。
死因は不明。発見されたときには息を引き取っていたという。
その日から、俺はソラの意思を引き継いでよりいっそう作業に精を出した。
『作業はセカイを救う!』
その言葉を胸に。
俺は高校に上がるときには、25もの国と地域の言葉を話せるようになっていた。美術では時間を惜しまず細部までかいて最優秀賞、もちろんゲームでもソラがしていたことは一通りした。
周りからは“天才”などと持て囃された。文系科目以外はな。
国語なんて言葉を知っていたところで読解なんて出来ないし、地理は作業じゃないから意欲も湧かない。そんな時間があるならもっと違う作業をしたい。それが本宮圭介という人間だ。
そんなことはさておき。俺は、
「もっと作業をしたい、ソラとの約束を果たしたい」
そう思って過ごしていた。
そんな俺の高校2年生の夏。
「今日も素晴らしい作業を!」
もはや作業=宗教という境地まで至った俺。
よし、パソコンの電源を入れてっと。
「ん? 何だこれ?」
画面に表示されていたのはあの言葉。
Q1.『作業は( )!』
当てはまるものを答えなさい。
A.つまんネ
B.セカイを救う
C.作業
俺は『B』を選択。
『A』とか論外! 『A』だと思ったヤツ、全員ブッ○す!
……という過激派レベルの信仰を見せていく俺。
Q2.『あなたは世界一の作業を求めますか?』
Yes or No
勿論、『Yes』!
突然パソコンの電源が落ちる。なにこれ怖い。
「く、苦しい……息が、でき、な。い……」
まるで、体全体に圧力を掛けられているような感覚。
意識が遠のいてゆく……。
そして視界がブラックアウトした。
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