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第1話 転送

主人公が死んで別の世界に行くというありがちな作品ですが、読んでいってくれると嬉しいです。

「ようやく買えたぜーっ!」


今年、高校3年生になったばかりの俺────如月昴(きさらぎすばる)は念願の夢を叶える事が出来た。

先程買ったばかりのゲームソフトを袋の中から取り出し、箱を見る。その箱に描かれているゲームタイトルは『アンフォルイアクエスト・オンラインver』、俺が何年間もやりこんだゲームがついにオンラインとなって発売されたのだ!

このゲームにクエストなどは存在するが、プレイヤーに自由にプレイしてもらう為にメインとなる明確なストーリーは存在しない。クリアするには世界中に100個あるダンジョンを全て攻略し、最後に出現する魔王を倒す事。

オンラインとなった事でNPCではなく、プレイヤー同士でパーティを組む事も出来るようになったし、プレイヤー同士でアイテムの交換をする事で新たな武器を入手できるらしい。

それに加えて、オンラインverの早期購入者5名にそのプレイヤーにしか与えられない特典があるのだ。俺はその早期購入者の一人である。いやー、昨日の夜から待っていたかいがあったな。それでも俺は早期購入者3番目だったが。


「よーしっ、早く帰ってプレイし────っ!?」


俺が箱から視線を外した瞬間、目の前の赤信号を一人の子どもが歩いているのが見えた。その子どもに向こう側からトラックが走ってきていた。まずい、あのトラックの運転手、子どもが見えていない。


「くそっ!」


俺は地面を蹴り、全速力で走り出した。これでも高校の体育祭で行われたレースでアンカーを務め、最下位から一位になった記録がある。足の速さには自信があるんだよ!


「あぶねぇっ!」


俺は子どもを向こう側へと勢いよく突き飛ばす。転んで怪我をしたり、頭を打って最悪死んでしまったりしないだろうかと考えていたが、次の瞬間────全身を襲う激痛と共に俺は意識を失った。












「────……どこだ、ここ?」


俺は真っ白な場所で目を覚ました。体には怪我一つすらない。でも、俺はトラックに轢かれた。まさか、ここって……天国?それとも地獄?いや、地獄ならもっと酷い光景になっているはずだ、たぶん。


『ようやく目覚ましたか』

「っ!?だ、誰だ!?」


どこからか聞こえてくる声。俺はその声に反応し、返事をするが誰もいない。まさか、幻聴か?この年で?あ、でも死んでたらそんなの関係ないか。


『探しても意味はありません。私はそこにいませんので』

「……ここはどこなんだ?」

『ここは『アンフォルイアクエスト・オンラインver』の全てを司る場所、つまりはマザーコンピューターとでも言えばいいでしょうか』

「な、何だって……!?」


何だってそんな場所に……いや、ここはきっと夢の中なんだ。現実の俺は今頃病院のベットに寝ているに違いない。その証拠に頬をつねっても痛くな──────痛い……。


『何を馬鹿な事をしているんですか?』

「別に何だっていいだろ。それで何で俺はここにいるんだよ」

『私にも分かりません。突然貴方はここに現れましたから』


一体どうなってるんだ……?子どもを助けようとしてトラックに轢かれたら今いるのは『アンフォルイアクエスト』のマザーコンピューターって……。


『貴方は『アンフォルイアクエスト・オンラインver』をお買いになられましたか?』

「ああ、買ったよ」

『何故?』

「何故って……やりたかったからだよ。『アンフォルイアクエスト』もやりこんだしな」


俺がそう言うと、謎の声は黙り込んでしまった。どうしたんだろうかと考えていると、突然目の前に画面と宙に浮かぶキーボードが現れた。


「へ?」

『ここにいても邪魔なだけです。ならば『アンフォルイアクエスト・オンラインver』に貴方を送ろうかと』

「えええっ!?」


な、何だよそれ……送るって、それってプレイヤーを操るんじゃなくて俺がプレイヤーになるって事か……?


『他のプレイヤーにとってはNPCかもしれませんが、メニューもスキルも全て使えます。また、貴方がオンラインverを購入した際の特典も使えます』

「断った場合は?」

『邪魔なので消去します。今の貴方はほぼ(・・)データでしかないので』

「ぜひ送ってください!」


ここで消去されるなら『アンフォルイアクエスト・オンラインver』に送られた方がまだマシだ!


『では、目の前の画面に名前と年齢、性別を入力してください』

「お、おう……」


キーボードを操作して俺は画面に言われた通り入力する。如月昴、17歳、男性っと……。


「これでいいか?」

『はい。では、転送を開始します』

「えっ、もう!?」

『何度も言いますが、邪魔なので。では』


体が突然軽くなってきたと思うと、なんと爪先からどんどんポリゴン状になって俺の体がどんどん消えていってるではないか!


「お、おい!?何だよこれ!」

『大丈夫です、目を覚ました時には貴方は既に────む?』

「な、何だ……?」


周囲をいくつもの雷らしき物が流れている。何事かと思っていると、雷の1つが俺に向かってきている。逃げようとするが、ポリゴン状になってしまっているせいか足が動かず、俺は雷を受ける事になった。


「ぁがああっ!?」

『ッ……緊急事態発生……転送を停止……不可能……データ化失敗……世界の構築が不安定……全プレイヤーに、あくエイ……キョガピ、ガガ……』


何が起こっているのかすら分からず、痛みに苦しむ俺の意識は一瞬にして落ちていった。

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