覗く
そんな他愛のない話をしていると、日差しが差し込んでいたこの席も段々と暗くなり窓を覗けば空は紫色のグラデーションになり、星達がぽつぽつと光を放っていた。
「そろそろ暗くなってきたことだし、ここを出ようか。」
春李が冷えたコーヒーカップをから手を離して席を立つ。
俺も続いて席を立とうと、腰をあげるがその時に重大なことに気がついた。
「あの、俺金持ってないんだけど。」
そう、何せ急にこの世界に飛ばされたので財布おろか携帯もない。
まぁ、この世界に携帯を持ってきたところで意味はなさそうだけど。
俺の言葉を聞いた春李はどこか不思議そうに首を傾げてから。
「何をいっているんだ? 『カード』があるだろ? 」
「カード? 」
クレジットカードのことか? そんなハイテクなものがこの世界にあるとでもいうのか。
そもそも俺クレジットカードとかもった事ないんだけど。
「カードだよ。ほら、聖戦参加登録のカード。これがあればお金なんて払わないでファイトマネーから引き落としになるんだ。」
そういって差し出してきたのは名刺程の大きさがあるカードだ、確かに春李の顔と名前が載っている。
そんな物貰った覚えはないが一応ジャージのポケットを漁ってみる。
すると、それらしき感触、手にとって確認して見ると春李と同じ物だった。
つか、俺の顔写真なんて何時撮ったんだよ、しかも寝癖とかついてるし。
俺はそれを春李の見よう見まねで店員に渡し、会計を済ませて喫茶店を後にした。
外に出ると当たりは真っ暗になっており、街灯がないこの町には月明かりが僅かながら道を照らしているだけだった。
「もう暗いし、今日は宿をとって休もうと思うのだが、どうだ? 」
春李の提案に俺はコクリと頷いた。
宿に着いた、玄関先にはトイレと風呂、部屋の中はベットが二つと化粧台が置かれており中々良い部屋だ。
「ふぃー、どっこいしょっと。」
俺は布団に寝転びながら一息ついた。
ベットも中々の弾力を持っていて心地がいい。
「では、私は先にシャワーを浴びてきてもいいか? 」
「ああ、いいけど。」
「ではお言葉に甘えて。タモツも好きにくつろいでいるといい。」
そういって春李は玄関先にある風呂場に向かった。
……今、考えると俺は女の子と同じ部屋で一夜を過ごすのか。
そう考えると物凄くドキドキしてきた。
俺は向かいのベットに目を移す。
これから俺の向かいで春李が寝るんだ。
あのスタイルのいい身体が無防備に可愛い寝息をたてて無防備に唇なんかをこちらに向けて寝るんだ。
昼間、山道での出来事が脳裏を映画のフィルムのように駆け巡り、柔らかい彼女の双丘の感触が手に再び感じてくる。
こりゃあ寝れないな。
なんだか悶々としてきたその時、玄関先からシュルシュルと服が擦れる音が聞こえてくる。
恐らく向こう側で今、春李がチャイナ服を脱いでいるのだろう。
脱ぎたてでまだ体温の温もりや匂いが残っている服を脱ぎ降ろし、大きな胸と桃尻をさらけ出してシャワーに打たれるのだ。
そんな素晴らしいイベントが今、俺のすぐ隣で行われているのだ。
学校では彼女おろか同姓の友達もいなかった俺の目と鼻の先で行なわれているのだ。
だったら、俺は。
さて、春李は先程好きにくつろいでいていいと言っていた。
今、この部屋におけるベストなくつろぎポイント。
それは。
「更衣室が見えるところがベストでーす。」
俺は風呂場からみておよそ死角であろう場所に移動した。
正面に見えるのは春李が脱いだ白いチャイナ服が綺麗に畳んであり、その上には純白のパンティーが鎮座している。
これだけの材料があれば思春期の男子なら十分満足できるだろう。
しかし、俺にとっては副菜でしかない、今夜のメインディッシュは……。
「フンフンフフーン。」
風呂場から楽しげな鼻歌が聞こえてくる。
俺は細心の注意を払って顔を覗かせる。
そこから見える絶景というのは。
「おぉ……! 」
俺は思わず感嘆の息をついた。
そこにあったのはギリシア神話における愛と美の神であるウ゛ィーナスを描いた名画『ウ゛ィーナスの誕生』のような神々しくも美しい裸体のシルエットがあった。
格闘技にその身を捧げた彼女の鍛え抜かれた身体のラインに甘い大きな二つの果実、そしてその昔、食べれば不老不死になれるとも言われた桃が雨にうたれ、粒を見に纏いながら美しく、そこになっていた。
俺はそれを目に焼き付ける為、食い入るように見つめる。
生の女の子の裸なんて見る機会は早々ない、もしかしたらこの先、一生ない事かもしれない。
そんなこんなで幾分か裸のストリップショーを観覧していると、なんだか物足りなさを感じた。
何か刺激が足りない、性的刺激とかじゃあなくてな?
もっとこうスリルが欲しいのだ、人間はジェットコースターやバンジージャンプなど自らの危険を冒してまでスリルから生まれる快感を求めている生き物であり、俺も例外ではない。
俺は音を立てないよう、腹を地面に伏して、匍匐前進の要領で進んでいく。
ゆっくりだが確実に、フランダースの少年がルーベンスが描いた絵画に憧れたように、俺も目の前にある彫刻のような裸体を拝むために進む。
そして遂に彼女の着替えが置いてある場所まで辿り着くことが出来た。
手を伸ばせばパンティーが、目をやればダイナミックな裸体が堪能出来るのだ。
「こいつはすげぇや……。」
俺は今置かれている状況に圧倒されている。
映画と言うのは映画館の大スクリーンで見たほうが迫力があるのと同じ、ようはなんでも大きければいいんだよ。
身長も、企業も、おっぱいも大きい方がいいだろ? まぁおっぱいはその人の性癖によるが。
そんな訳で暫し楽しく観覧した後、俺はふと綺麗に畳んであるパンティーに目がいった。
……これ被ったらとんでもないわくわくが起こるんじゃね?
パンティーを被ることによってまず触覚が刺激される、そしてその匂いを嗅げば嗅覚、風呂場の裸のシルエットを覗けば視覚、シャワーの水が裸体に弾かれる音を聞けば聴覚までもが満たされ五感のうち四感が堪能できる。
パンティーを食べれば味覚も刺激されるが俺はそんなド変態じゃあないのでそれはやらない。
そうと決まれば行動に移す。
俺は右手をクレーンゲームのようにゆっくり下に下ろしてパンティーを掴む。
しっかりと握りそのまま腕を引き上げていく、よし、パンティーゲットだぜっ!ピッピカチュー(裏声)
ゲットしたパンティーを両手で広げ、しっかりと確認、うむ、いいパンティーだ。
さて、いよいよこれを頭に装着する時が来たようだ。
少しずつ心臓の鼓動が速くなっていく、新作のゲームソフトを開封するようなわくわく感だ。
何度か鼓動を落ち着かせるために深呼吸をし、気を高めた後で。
「行くぞっ! 変身っ! 」
意を決してパンティーを頭に装着だっ!
ガラララっ。
「ふぅ、いい湯だったな……ってタモツそこで何をやって」
「あっやべっ。」
「こ、この淫乱物めぇーっ!!! 」
「ぶわいぷっ!!! 」
春李に思い切り殴られ俺の身体は宙に吹っ飛び頭が天井をぶち破った。
天井裏では音にビビッたネズミ達が俺の顔の前を行ったり来たりを繰り返している。
とほほ、作戦大失敗。
皆はのぞきなんかしちゃあいけないぞ。
読んで頂きありがとうございますっ!
雨踏猫子先生に素敵なレビューを頂きましたっ!いやぁ、いいクリスマスプレゼントになったなぁ笑
と、いう訳で僕からは覗き回をプレゼントしたいと思います笑
少しでも楽しんで頂ければ幸いです。
最後になりますがもしよろしければブックマーク、感想、評価等つけて頂くと今後の励みになりますので宜しければお願いします。
では、よいクリスマスをお過ごしくださいっ!