ご注文はコーヒーですか?
俺と春李は一緒に山道を降りる。
幾分か歩くと前方には町が広がり始めた。
町並みは日本とはかけ離れていて石レンガで舗装された道路に、家、まるで社会科の資料集で見たことのある中世ヨーロッパのような景色が広がっている。
道行く人々も布のローブを羽織っていたり、服装が前時代の物だ。
いや、前時代というよりはゲームの世界でありがちな服装といったところか、ロールプレイングゲームのNPCみたいな格好の人ばかり。
そんな人の中だと俺達の格好は酷く目立つ。
春李は白いチャイナ服だし、俺なんて使い古した学校指定のジャージだしな。
名前とか思い切り斉藤って胸に書いてあるしなんだか恥ずかしい。
「よし、ではここでゆっくり話でもしようじゃあないか。」
春李が立ち止まり指差した建物にはぶら下がった木製の看板にコーヒーカップの絵柄が描いてある。
恐らく喫茶店のようだ。
俺はなにも言わずコクリと首を縦に振り、店のドアを開けた春李の背中に続いた。
店に入るとおよそ十組のテーブルが並べられていて、そこにはカップルがいちゃついたり、おばちゃん達の井戸端会議が始まっていたりと狭い店内には淹れたコーヒーのいい香りとお客の楽しそうな声が充満したいる。
俺達は一番奥の日差しが降り注ぐ窓際の席を選んだ。
「いらっしゃいませ。ご注文はお決まりですか? 」
声の低いダンディな顎髭が特徴の店員が注文を伺いに来る。
「私はコーヒーで。タモツは何を飲むんだ? 」
春李がメニュー表をこちらに渡してくる。
ええっと、何々、文字は日本語で表記されてるんだな。
しかし文字は読めても意味不明な記号とかがある、なんだこのサイズの『Tail』とか『Short』とか『Grande』とかは? 正直こんなお洒落なカフェに入ったことがないのでなにも判らない。
これがイケてる奴らの飲み物ということなのか、いいじゃん馴染みのある『S』とか『L』とかで。マックを見習えよ。
「ああ、えっと俺も同じので。」
自信が無いので結局同じ物を注文してしまった。
店員はかしこまりましたと綺麗にお辞儀をしてから立ち去る。
うう、なんか場違いな所にきた感が半端なくてそわそわしてしまう。
つか、この世界感の中でジャージの俺って時点で色々場違い感が半端ないんだけどな。
「さて、タモツ。早速質問してくれていいぞ。何でも答えよう。」
春李はまた腕をおっぱいを支えるように腕を組んだ。
「じゃあそのぷるんぷるんなおっぱいのサイズを。」
何て聞いたら怒るんだろうな。
「な、ななな何を聞いているんだ君はっ!? 何でも答えるとはいったが物の限度をしれっ! 」
ダンっと机を叩き顔を真っ赤にして睨んでくる春李。
おっとまずい、心の声が口に出てた。
「すまんすまん、今のは無しで。冗談だよ冗談。」
「全く、冗談になってないぞ。」
春李は顔を赤くしながらも呆れ顔でため息をついた。
「お待たせしました。こちら、当店オリジナルのコーヒーになります。」
店員がタイミングを見計らったようにコーヒーを持ってきて俺と春李の前に置いた。
春李がコーヒーカップを手に取り、艶やかな唇を当てて一口飲む。
「うん、これは美味いな。」
満足げな表情を浮かべながら舌鼓を打った。
白いチャイナ服にコーヒーとなんだか世界観がバラバラな気もするが美味しそうに飲んでいるのでそこは良しとしよう。
俺も早速一口……。
「うん……美味い、な。」
苦い、超苦い。
これが大人の味というのか、コーヒーを嗜む時は独特の苦味と酸味やらを楽しむというが万年炭酸ジュースと牛乳を飲んでいる俺にはわからない。
「どうした? コーヒーは苦手だったか? 」
苦虫を潰したような顔をしている俺の表情から察したのかそんなことを聞いてくる。
「いや、別に。うまいよ。うん美味い。」
俺は餓鬼みたいに思われたくないので無理してもう一口飲む。
げえぇ……苦い。
そんな俺の顔を見て春李は笑った。
「君は変わっているなぁ。変わった覇拳を使うし、一体何者なんだ? 」
「あ……。そこんところだが俺もよくわからないんだ。覇拳使いも聖獣も聖戦も……てかこの世界観すらわからねぇ。」
俺の発言に驚いたのか、凛々しい瞳を見開いた。
「ふむ、では順を追って話していこうか。」
読んでくださりありがとうございました。
おかげ様で当作品が連載が始まって三日程ですがジャンル別日間ランキングで五位と大変名誉な記録をとることが出来ました。
これもひとえに読者様のお陰です、ありがとうございます。
これからもっと作品を面白く、読んでいてわくわくさせられるように頑張りますので引き続き当作品をよろしくお願いしますっ!