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運命から 逃げる!!  作者: ビアダル
6/6

目覚めるとそこは牢獄だった

ウィンドウズ10大っ嫌い

 ふと目覚めると俺は牢獄にいた。

 目覚めた瞬間は何がなんだか分からなかったが、時間が経過していくに従い俺は状況を飲み込んでいった。

 俺は今二つの過去を持っている


 一つは碌でもない浮浪児としての記憶だ。獣のように生き、母相手にも容赦なく牙をむく


 もう一つの記憶は・・・まあいわゆる前世というヤツだ。

 服部半蔵正就 

 父上の後を継ぎ直ぐの襲名の日

 「あの時」俺は死んだ・・・


 俺は服部半蔵として何もすることが出来ぬまま果てる事となってしまった。

 申し訳ありません父上様母上様

 申し訳ありませんお師匠様

 ごめんよ正重肝心なところで役に立てなくって

 松尾・・・おまえ・・・


 

 ・・・え?言ってることが違う?


 ははははははははははははははははははっははなにいってるあわからないなおれのいしきがはっきりしだしたのはこのろうやでめざめてからだからそのまえなんてないのになにいってるかなきおくちがいでしょとにかくおれがめざめたのはあるひめがさめたらここにいたところからでそのまえのきおくはちがうおれじゃないじぶんのころだからだからいぬのまねとかあれおれじゃないというか



             喝



 ふう・・・やはりまだ少し混乱が見られるようだ。まあその辺り触らず優しく取り扱って欲しい


 さて、目覚めてからの俺だが幸いなことに現在は快適に暮らしている。

 牢屋なんてすることなんてほとんどないのでいざという時に備え、鍛錬に当てている。

 こんな時は小さい体が便利だ。何もない部屋でやれる修練などいくらでもある。

 何せ忍びの奥義の数々は使い方は分かっているもののそれを操る体が出来ていない。これらが行えるようにさまざまな肉体改造をしてしまわなければならないのだが、まあこの状態ですぐできるわけもなし・・・。今はやれることをやっていかないとね?

 体力全般は勿論そうだし気も練られていない。まあ平均の同年代(4・5歳か)よりは確実に上だがどうしたって俺が求めるのは死ぬ寸前の俺の状態だ。全く足りていない。

 そもそも肉体が変わっているのでどんな齟齬があるか分かったものではない。

 本当のことを言えば対毒訓練もしたいんだがまさか毒をくれとか言えんしな。


 大体にして俺は言葉がしゃべれない。


 馬鹿ってわけじゃないよ?「自分」はこれまでまともに会話したことが無かったってことだ。

 いや、驚いたの何の、そういえば「自分」母親からなんか怒鳴られてる記憶しかないわ

 お陰で最初どうしようもなくな・・・



             喝



 え~・・・まあしゃべれないってわけだ。

 まあ俺は困らんもんね。気にしない気にしない何も無い何も無い・・・

 むしろ俺を取り調べようとしているさむらい衆の方がかわいそうだ。あの手この手で事情を探ろうとしてくるが返しようが無いのだ。

 既に取調べが始まって七日が経過していた。


 初日

 最初に来たのは中々の美丈夫だった。女性的な顔立ちと控えめな佇まいから女武士かと思うほどであったが、発せられたこと――――――――――――


 はい無し これ無し これ俺の記憶違うから この次から


 初日

 この日尋問に訪れたのは巨漢の大男だった。彫が深く鼻が高く、どう見ても六尺はありバテレンの宣教師の特徴を思い出す。柿渋に似た色合いの髪をまるで被髪の様にしているので落ち武者のようだった。「ちゃんと結わないとだらしない」と言おうと思ったが何も言えなかった。

 だって最初一言二個と発した後すんごい震えながら睨んでくるんだもの

 絶対馬鹿にされたと思ったんだろうな・・・。

   こりゃあ勢い余ってこのまま殺されるかもしれないと思った最初の瞬間だよ


 二日目

 この日来たのは割と若い神経質そうな男だった。やはりバテレンの国のほうなのだろう。金の髪をしていて背も高い。目は中々素敵なんだがその奥が笑っていない。わっかり易い露骨な作り笑いだ。

 その日は何かの果物を持ってきて差し出してきてそれを食べながらの尋問だった。これは懐柔に来たのだろうな。意図は分かるんだ意図はな・・・

 でもな・・・言ってることが全く分からないんでどうしようもないんだよ。

 結局一刻程話して男は出て行った。最後にこちらに向ける視線がまるで汚物でも見るみたいだった。

    まあこのおぞましい容姿じゃ仕方ないか・・・自分の白髪を引っ張って溜息をついた。


 三日目

 筋骨粒々な男がやってきた。剥き出しの腕はもう丸太だ。脂肪が少なくまるでゴツゴツした岩みたいな感じだった。でも顔は・・・何でそんなに気弱そうなんだろうか?眉はハの字、目は垂れてちょんと小さな唇には紅が引かれている。あれは血色を誤魔化してるってことか?来る前からそんなに怯えられるとは・・・。

でも怯えて縮こまってちっとも近づこうとしない。ちょっとイラついたので「何なんだ!」と怒鳴ったら泣き出してしまった。どうやら気の小さい男らしい。可哀想になってとにかく必死になだめたら気持ちは伝わってえらく感動していた。怒鳴った時もそうだが言葉は通じずともそこそこ伝わるもんだな・・・などと思っていたらいきなり抱きしめてきた。

        うーおっ!     力強!!

 いってえ!!いってえ!!ちょおちょっ・・・まっ・・・

 てところで俺の記憶が無くなった。

 言葉って大事だよねよくわかったよ。


 四日目

 この日来たのはやたらひょろ長い男だった。なんだか蟷螂みたいな感じの男で、来ると同時になにやら色々運び込まれてきた。よもや拷問でも始めるんじゃないかと警戒したのだが、運ばれた物は本に色を塗った木切れに太鼓だった。

 これも懐柔策の一環なのかな?などと思っていたが結局男からは一言もなし。

 ・・・意図が分からない・・・

 只まあ本が手に入ったのはありがたい。早速開いてみて・・・うん・・・まあそうか読めなかった。てか字も見たことが無い。「あるふぁべっと」とも違うぞ・・・


 五日目

 この日来たのは料理人のようだ。いい物を食べているのだろう。恰幅がいい。触るときっと柔らかいんだろう。薄い茶色の髪を総髪で縛り、明るくこちらに語りかけてきた。そして来るなりどんどん運ばれてくる。肉・卵・野菜・汁に・・・乳かこれ?稗か粟とか・・・無いかなあ・・・

 この日知ったこととしてずっと出てたあの硬くてパサパサした物はこの国における主食だったこと。てっきり陣中食だとばっかり・・・いや失礼した

 この日は食べている物について色々説明してくるのでそれを学習してたのだが、料理人が自分を指差し、「マリー」と言い、こちらに手を差し出した。

「あ、これ名前を聞いてる」ことは理解できた。・・・でもな~俺自分の名前分からないんだよな~まさか半蔵なんて言える訳ないし~男の名前だし~

 で、「自分」の記憶から母親が俺を呼ぶ時に言ってた言葉を言ってみた。

 大失敗だった。料理人泣き出して出て言っちまった。

 ・・・俺どんな呼ばれ方してたんだ?


 六日目

 ついにお偉いさんの登場だ!眼鏡だ!眼鏡をかけている!大御所様以来だぞ!

 艶やかな黒髪(羨ましい)、厳しくまた均整な顔立ちだ。手には何か本を持っているし眉間にしわを寄せて入るなり睨んでくるし番をしている人に命令しているしこれは今日は絞られる・・・と思ったんだが・・・

 その数秒後には優しく抱きしめられる俺がいた。

 だから意図は何なんだわっかんねぇと怖いんだよ!後なんで俺の髪をいじるんだよ!

 そう思っていたら行水に連れて行かれた。

 ・・・そういえば「自分」の頃って行水したこと無かったっけ・・・

 それにしてもさすが石鹸を作った国。体を洗うための石鹸があるんだな!ちょっと気持ち良かったんで身を任せていたんだがこれが罠だった。

 ひとしきり現れた後俺はとんでもなくでかい鏡の前に座らされることになる。

 ・・・何か言ってきてるけどもうこっちはそれどころじゃない。

 目の前には不気味な姿の俺が移っている。おまけに洗われたことで一層異様さが目立っているではないか。

 洗って更に色が落ちたんじゃないかと思うほど白さが増した髪はつやが出始めて拍車がかかっているし

 よっく凝らしてみないと分からないほどしか黒味が無く青い瞳は大きく鋭いがじっとこちらを見ている

 あんだけ外にいたはずなのに全く焼けていない白い肌もどうなってるんだ気持ち悪い。・・・こっちも少し色が落ちたんじゃないのか?

 気色の悪い己の姿を目の前にしながら更にこの眼鏡男俺の髪を櫛で梳き梳き色々語りかける今までに無いきつい尋問は一刻ほど続き、結局何も語れずに終わると同時に俺はすぐ寝る事にした。


 七日目

 ・・・おや?失礼、これは今日のことだ。まだ尋問は行われていないので数え間違えたようだ。


 ・・・こんな日がいつまで続くんだろうか・・・

                    ・・・ああ・・・早くここから抜け出したい・・・


 

 

 

 

言葉が通じないとホント話が広がらない・・・

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