ウルカ王国
誰か、私にやる気を分けてください・・・
すいません、真面目に書きます
正門から堂々と王城の中に入っていく。妙に開放的だなと思いながら進んでいくとその理由が判明した。よく見ると城の関係者ではない一般人が大勢出入りしていたのである。イメージとは違う城の中に唖然としていると、その様子に気付いたのかブレンが説明してくれた。
「この城は特別じゃない限り一般に公開されてるんだ」
「なるほどずいぶん奇抜なことをするんだな」
「これも先代の意向でな、『国民の税金で建てたものだからせめて公開ぐらいはしてやらんとな』
と言っていたよ」
なるほどな、と返しつつ箸の時に予想したことが現実味を帯びてきたなと思った。異世界の常識は知らないが、城を常時公開するのは防衛の観点からするとあまりいいことではない。ましてやこの王都の防壁の厳重な警戒状況からしてもそうだ。だとすればこの世界の人間ならばこんなことは考えないはずだ。やはり先代の当主は俺と同じ・・・
「ついたぞこの部屋だ」
ブレンが立ち止まって言った。考えているうちに目的地に着いたようだ。扉を抜け部屋に入ると、サラと顎髭をはやし筋肉がこれでもかと言わんばかりについた、いかにも戦士の風貌をした壮年の男性(服装的にかなりの高官だろう)が机に座っていて、その後ろには近衛兵団長のリアが控えている。
「よく来てくれた、座ってくれ」
その壮年の男に声をかけられ、失礼しますと言って目の前の椅子に座る。自分から何か言うべきだろうかと思った時、先にサラが喋り出した。
「昨日は助けてくれてありがとう、もしあの時あなたがなかったら私はここにはいられなかったわ」
「いえ、私は人として当然のことをしたまでです。お礼を言われるほどのことはしていません」
「謙虚な人なんですね」
と、言いつつ姫は笑う。それを見てそうだったかなと思いつつ自分も笑いそうになったが、その前に壮年の男が口を開く。
「姫、挨拶はこれくらいにしておきましょう」
「そうね、伝えるべきことがあるし…」
何のことだろうかと思っていると、男がおもむろに口を開く。
「本題に入る前に自己紹介をさせてくれ。私はロベルト・リプニツキー、王国騎士団の団長をしている」
なるほど、とレンヤは思う。最初のイメージ通りの人物だ。しかし理由がわからない、この会合になぜ
騎士団が関係してくるんだ?
「今日君に来てもらったのは、我々の姫を救ってくれたお礼を言うためだけではない」
他に何かあるのでしょうか?と返すと、少しの間を置いてロベルトが口を開く。
「単刀直入に言おう、
君にこの国の防衛を手伝ってもらいたいのだ」
なるほど、騎士団が絡む理由はそれか。俺の魔物との戦闘はすでにこの部屋にいる3人、サラとブレン、そしてリアが目撃している。おそらくこの3人の誰か
(もしくは全員かもしれない)がそのことを喋ったのだろう。
いくらゴブリンとはいえ奴らは武装し、しかも大群で襲撃していた。それをいともたやすく殲滅し、一国の姫を助けたとなれば、その戦力を手元に置いておきたくなるのも当然である。
だが、俺にとっては何の関係もない話だ。たまたま転生したところでピンチになった姫を助け、それを目撃されただけ。俺に利益は何もない。
前世ではあくまで利益だけを考えて動いていた。当然のことだ。PMCはあくまでビジネスであって、義理や人情で動いていたら埒があかないからだ。安易な判断で行動すれば、大切な仲間を失うことになる。
だが、一方で俺は心の奥底で疼く何かがある気がした。それはたぶん1人の人間、日本人としてこれを放っておいたらいけない気持ちが出たんだろう。
純粋に考えて、今は圧倒的に情報不足だ。この世界のことといえば、このウルカ王国が存在することぐらいだ。まずはこの世界についての情報を集める。そうすればあの神が言っていたこと、
『この世界を救ってほしい』
この真意にたどり着けるかもしれない。
「わかりました、お引き受けしましょう」
「そうですよね、やはり無理で…って、えぇぇぇぇ!?」
どうやら承諾したことが予想外らしく、その場にいる全員がポカーンとした顔をしている。
「そんな簡単に引き受けてくれるのですか?」
とサラが困惑しがちに聞いてくる。
「皆さんの役に立てるならば喜んで引き受けますよ」
「本当にありがとう、これでこの国は救われます」
「ええ、お父様が言った通りだわ」
またも先代の話が出てきた。しかも俺がこの世界に転生することを知っているとなればほぼ確定だろう。
「一つ質問があるのですがよろしいですか?」
どうぞ、と返答が返ってくる。意を決してその質問をする。
「その先代のご当主のことなのですが、いたるところで話を聞きました。その話から考えるに、先代はこの世界の人間ではなかったのではないですか?」
その問いを聞いた瞬間場の空気が一瞬止まった気がした。
「なぜそのことを知っているのですか」
とサラが聞いてくる。その反応からしてあたりのようだ。
「実は私は噓をついていました、一つは旅の者ではないということ。
そしてもう一つはこの世界の人間ではないということです」
黙っていて申し訳ない、と頭を下げる。さすがに不味いだろうかと思っていたが、予想外の反応が返ってきた。
「なーんだ、勇者って『世渡り人』のことだったのね!私はってっきり本物の勇者が現れるのかと思っていたわ」
「姫、それはさすがに失礼に当たるかと」
と、ブレンがフォローを入れる。
「あ、そうね。ごめんなさい。でもこの国を守ってくれることには最大の感謝をするわ」
とサラが笑顔で言う。この笑顔を見るとどことなく落ち着くような気がした。
「そうだ、『世渡り人』っていう言葉もはじめてよね?」
はい、と返す。話の急展開ぶりについていけなさそうだ。
「意味は分かると思うけど、『世渡り人』っていうのはこの世界とは違った世界からやってくる人たちのことよ。この世界には一定数存在すると言われているわ」
「なるほど…。ちなみに先代はどの世界から来られたかわかりますか?」
「確か…、『チキュウ』って言ってたような気がするわ」
「やはりそうでしたか…、実は私も地球から来たんです」
「へ~そうなの…、何か運命を感じるわね…」
そう言いながらサラは遠くを見つめる、先代のことを思い出しているのだろうか。
するとそういえば、と喋りだす
「別に私に敬語は使わなくてもいいわよ、こっちも聞いてて落ち着かないし。それに名前はサラって呼んでくれていいわ」
「そういうわけにも…」
「いいって~、『世渡り人』と『世渡り人』の娘なんだし敬語なんていらないいらない」
困惑しながら周囲を見ると、ブレンやロベルト、リアまでもが苦笑していた
「では…これからよろしく、サラ」
「こちらこそよろしく頼むわ、レンヤ」
と言いつつ笑うサラの顔はやはりどこか安心する。この光景はどこかで見たことがある気がする。
気のせいだろうか。
「何か外が騒がしいわね」
サラの言葉に現実へと引き戻される。確かに城内が騒がしくなっているようだ。
と、その時部屋の扉が勢いよく開かれる。
「姫様!会議中申し訳ありません、緊急事態です!」
何事なの?とサラが聞く。伝令係は血相を変えて説明した。
「王都の周辺を警戒している哨戒部隊から、北東より魔物の軍団が迫っていうとの報告が入りました!」
なんですって!?と大声で叫ぶサラ。ブレンはそれを落ち着かせ、ロベルトは伝令の兵士とともに部屋を後にした。
早速出番のようだな、と俺が言うとサラがうなずいて言った。
「王都を失ったら一貫の終わりよ、お願い、民を守って…」
「ああ、まかせろ。絶対に守り抜く」
そう言って俺は部屋を後にする。
姫との約束を守るために。
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