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異世界は思ったよりも俺に優しい?  作者: 大川雅臣
第一部 第二章 王都編
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閑話:とある侍女の話

 私はテドラ。恐れ多くも、メルティーナ王女様付き筆頭侍女の地位を授かっています。

 そんな私は一ヶ月半ほど前に、死を覚悟した事がありました。サハギン族による王女様の襲撃事件の時です。


 近衛騎士は強く、王女様や親友のリリスには怪我の一つもありませんでした。それでも延々と続くサハギン族の襲撃に、近衛騎士の疲労も大きく、一人、また一人と怪我を重ねていきました。


 私は近衛騎士の方々が怪我を重ねるに連れて、自分の身にもそれが迫っているように感じ、恐怖に動けなくなっていました。王女様は気丈に振る舞っておられましたのに。


 状況は一人の女性がサハギン族の群れに飛び込んだことから一転しました。

 続いて金髪の少年、武器を片手に持った街人や、冒険者と思われる人達がサハギン族を相手に戦いを始めたのです。

 サハギン族は海に引き上げ、私は助かったのだと安堵しました。


 ◇


 私は子供の頃から目が悪く、目付きが悪いと言われることが良くありました。よく見ようとするとまるで睨まれているようだと言われます。高級なものですがメガネを用意すれば少しはましになるようです。ただ、お給金の殆どは実家へ送っているため、購入するのは難しいでしょう。


 親友のリリスは大変可愛らしい、私からすれば理想の女の子です。そのリリスが、今日、私達を助けてくれた一人の少年と会食をすることになりました。どうしてそういう話になったのか。私に分かるのはその事実だけでした。


 少年の名は確かアキトと言ったのを覚えています。

 私は会食に姿を表したアキトが、リリスに何を思っているのかを見極める必要があります。表情や仕草から少しでも多くの情報を引き出すのです。

 そう思いましたが、目を逸らされてしまいました。仕方がありませんね。目付きの悪さはもって生まれたものですから。


 ◇


 会食が終わり、王女様が寝床に着くと本日のお仕事も一段落です。

 私はリリスと、リリスに送られた銀の髪飾りを見つめていました。ただの銀ではないようです。銀その物が淡い光を放つような綺羅びやかさを持っていました。そして、それらを飾り付けている赤い光を放つこの塗料は何なのでしょうか。


 銀の髪飾りはリリスの紺色の髪によく似合い、赤く発光する模様はワンポイントとしてよく出来ていました。

 正直嫉妬してしまいそうな品物です。この様な品物は王女様も持っていません。


 ◇


 サハギン族の襲撃から一月以上が立ち、久しぶりに王都に戻った私とリリスは、王女様から再び会食への参加を命じられました。

 またあの少年、アキトが来るそうです。


 そしてアキトは再び私達に驚くような品物を、王女様へのプレゼントとして持ってきました。

 それは銀糸で出来た不思議な輝きを放つベールのような布です。縁には植物を模様した柄があり、その柄の部分が黄緑色に発光していました。どのような原理で光っているのか。これは魔法具なのでしょうか。それにしては魔法陣らしいものが見当たりません。


 続いてリリスにもプレゼントが渡されました。

 それは蝶を模様した髪飾りのようなアクセサリーで、同じく黄緑色に輝く羽を持っていました。ため息の出る美しさです。再びそんな贈り物を受けるリリスに嫉妬をしていました。


 ですがリリスはそれを私にと、アキトにお願いをしています。私はリリスに嫉妬をしていたのに。恥ずかしいことですね。自分が贈り物をされないからと言って嫉妬するのは。

 リリスの嬉しそうな顔を見られて満足だとアキトは言っています。私もそういう気持ちを持ちたいと思います。


 そのアキトはリリスへのプレゼントとは別に、懐から別の紙袋を取り出しました。リリスの親友へ、つまり私にと。



 夜は部屋でリリスと二人、アキトの贈り物をテーブルに並べて見ていました。

 私に送られたのは不思議な素材で出来た白いハンカチです。蝋燭の光に浮かび上がる真っ白な、それでいて虹色の光沢を持つ不思議な布。触ると、乾いているはずなのにしっとりとした肌触りで、とても柔らかい不思議なハンカチでした。


 贈り物に値段を付けるのは失礼かと思いますが、きっと私がどれだけお給金を貯めたとしても買えない物でしょう。

 それほど高価なものを頂いてもよろしかったのでしょうか。私はアキトさんにあまりいい印象を持たれているとは思えませんが……そう言えば、リリスの親友が私とは思ってもいないでしょうね。


 今度お会いすることがあれば、さり気なく見せつけてお礼を言いましょう。

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