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異世界は思ったよりも俺に優しい?  作者: 大川雅臣
第一部 第一章 冒険者編
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砂漠を越えて

 日が暮れて小一時間が過ぎた頃、ようやく俺達は砂漠を抜ける事が出来た。


「やっぱり固い地面は良いな」


 俺の感想にみんなが相槌を打つ。

 昨日立てた計画に比べれば随分と掛かってしまったし無事にとは言えないが、何とか初めての砂漠を乗り越える事が出来た。

 メビナ砂漠を横断する商隊は砂漠を一〇日間も掛けるらしい。俺はお断りなので、迂回する道を選ぶだろう。


 俺達は疲れもピークに達していたのでここで野営をする事にした。同じように、周りにはいくつかのテントと野営の火が見える。


 ここに来るまでウォーレン達と色々な話をしていた。

 この砂漠越えでは鎧蜥蜴が出るのに護衛などを連れていなかったのは、護衛がいなくても対処が出来るはずだったからと言う事だ。

 もしかしてウォーレンさんは予定が狂いまくる俺と同じ境遇なのか。


 鎧蜥蜴は殻が素材として高く売買される為、砂漠越えの道中でついでとばかりに狩りを行う商人が多く、狩り尽くされているので遭遇する事は滅多に無いようだ。

 むしろ出会ったら幸運と言う商人もいるらしい。


 確かに、倒せる人には美味しい稼ぎだろう。

 それに危なくなれば逃げ切れる相手なので、いざ遭遇しても問題ないと判断していたが、ローレンの体力を見誤っていたらしく囲まれてしまったらしい。

 それなりに鍛錬をし砂漠越えも想定してきた俺達でさえ休憩が多めになったくらいだ、普通の子では俺達以上に酷だったろう。


 初めはラダという動物がいてローレンはそれに乗っていたらしいが鎧蜥蜴に襲われて、逃げてしまったようだ。

 振り落とされたローレンが砂の上だったのは幸いだった。


 ウォーレンはこの先にあるベルナードの町の商人で、俺達がメルドの町にいた時に香辛料の買い付けに来ていた。

 もしかしたら気付かなかっただけで擦れ違ってくらいいたのかもしれない。

 今回はローレンが成人したので仕事の一環として一緒に連れてきたらしい。


 ローレンが成人……この世界での成人は一五歳だ。俺やルイーゼより下だと思っていたが一緒だったのか。とてもそうは見えないけれど。

 思わず驚きの顔が出てしまったのでローレンにちょっと睨まれた。でも小さい子に睨まれても可愛いだけなのだが。


 俺は興味本位でどんな香辛料があるのか聞いてみた。良さそうなら買いたいところだ。

 香辛料には胡椒、ショウガ、ニンニク、唐辛子があった。他にハーブが有り、ミント、カモミール、レモングラスがある。カモミールは以前グリモアの町の宿で女将さんに持たされた事があるな。


 俺は胡椒以外を小分けしてもらう事にした。胡椒だけはメルドの町で買っていたので今は十分にある。

 他の三人は何に使うんだという感じだが、みんなはあの味気ない食事で満足なのだろうか。


 ウォーレンさんとは成り行きでベルナードの町までは同行する事になった。

 ベルナードの町には明後日の夕方には着く予定だ。余り長い間では不自由も出るが二日くらいなら問題ないだろう。

 朝は鍛錬があるので出遅れると言ったのだけれど、問題ないらしい。

 というより、どんな鍛錬をするのか見たい様だ。


 余りスマートな戦いだったとは言えないが、ウォーレンさんからすればまだ子供の様な俺達が鎧蜥蜴を倒したのを見て、普段どんな鍛錬をしているのか気になった様だ。

 同じ内容はこなせないだろうけれど、なんならローレンも参加させてみよう。


 夜はオベルさんが食事を用意をしてくれた。流石に香辛料を取り扱う商人だけあって、料理はとても美味しい物だった。これが香辛料の力だと力説したところで、ようやく他の三人にも俺の拘りが分かった様だ。

 ルイーゼは味付けについてオベルさんに色々教わっている。俺も教わらないと、宝の持ち腐れになってしまうな。


 メルドの町にいた時は夜になると涼しかったのに、砂漠を越えてからは昼間の熱気がなかなか抜けていかなかった。単に熱帯夜なのかもしれないが。


「魔法が使えれば氷が作れるのに……」

「魔法で氷を作ってどうするの?」


 マリオンが本気で聞いてくる。


「どうするのって、食べるに決まっているじゃ無いか。

 出来ればイチゴやレモン味のシロップがベストだけれど、無ければ砂糖でもそれなりにうまい。

 何よりこの熱さに冷たい物がおいしいじゃないか」

「え、魔法ってそういう物?」

「どういう物だと?」

「少なくても精霊魔法は攻撃の為の魔法よね」

「火の魔法で火を起こすくらいはするんじゃ無いか?」

「出来るだろうけれど、わざわざ魔法を使う人はいないと思うけれど」


 俺達は火を起こす時、火打ち棒と綿花を使っている。俺がこの世界に来た当初やった方法だな。どうやらそれが一般的らしい。

 確かに火事みたいな火を直ぐに起こしたいので無ければこれで十分だった。

 魔法を使うまでも無いか。


「暑かったら風の魔法で涼んだり、喉が渇いたら水の魔法でコップを満たしたりと、色々出来るじゃないか」

「アキト、確かに出来るだろうけれど、それくらいの事をわざわざ魔法でする魔術師はいないよ。魔術師は大抵忙しいからね。いつ仕事が入っても良い様に無駄に魔力は使わないんだ。

 もっとも魔術師くらいになれば十分に稼げるから、自分で火を起こしたりしなくても全部使いの者がしてくれるよ」


 そっか、この世界は人件費が安いというか貧富の差が激しいんだった。稼げる人ならいくらでも人を使えるのか。


「うーん、でも食べたいなぁ冷たい物。よし、最初に覚える精霊魔法は氷にしよう」

「アキト、氷の精霊魔法というのは無いよ」


 えっ?


「精霊魔法は六大精霊に連なる光・闇・火・水・風・土だけだね」

「でも水から火、つまり熱を取り除いていけば氷になるから水と火が使えれば氷は作れそうなんだけど」

「アキトの発想は面白いね。もし氷の魔法が出来たら新魔法になるからアキトは一躍有名人だよ」


 有名人はまずいな。俺はかき氷が食べたいだけで有名人になりたい訳じゃ無い。


「アキト君は若いのにその発想が素晴らしいですね」


 ウォーレンも感心した様な呆れた様な顔で言ってくる。


「それじゃ俺が初めて覚える精霊魔法は火と水にする」


 リゼットに教えてもらおう。得意なのは召喚魔法でも他の魔法の事は知っているだろう。


「楽しみにしているよ」


 リデルは終始和やかだ。モモの笑顔が移ったんじゃ無いかと思ったが、ルイーゼも和やかだ。マリオンは魔法の話になると結構真摯だ。私も覚えたいと言ってきた。

 ここ二日ほど旅程が詰まっていたので鍛錬らしい鍛錬も出来ていないからな、明日は少し時間を取ろう。

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