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異世界は思ったよりも俺に優しい?  作者: 大川雅臣
第一部 第一章 冒険者編
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振り返って

 今日は昼過ぎに狩りに出る予定だったが、買い物が長引いたのと武器の手入れの仕方を教わっていた為、狩りは休む事にした。

 たまには体を休めて次の戦いに備えるのも良いだろう。


 リデルと分かれた後、早めに休むべく宿に戻った俺はここ最近の事を思い出していた。


 俺はリデルのおかげで十分に稼いでいた。

 駆け出しの冒険者なんて月に銅貨三,〇〇〇枚稼げれば良い方らしい。その三倍近くを稼げたのは三つの要因が大きい。


 一つは魔法。

 魔法を使える事で、魔物と距離を取った状態からも攻撃が出来る上に、上手く急所に魔弾(マジック・アロー)を当てる事が出来れば気絶を誘発出来た。慣れるまでリデルに盾となってもらったのも大きい。


 魔法が使える人はそれなりにいるらしいが、用途別に分けると攻撃魔法・支援魔法・回復魔法・生活魔法とある。魔法の使える多くの人は生活魔法程度で、一般には魔術師では無く魔法師と呼ばれていた。

 生活魔法以外の魔法が使えて初めて魔術師と呼ばれ、特に強力な攻撃魔法が使える人は上級魔術師。無詠唱で魔法が使える人を魔道士と呼ぶらしい。


 この分け方で言うと俺は魔道士になる。でも、魔道士の中でも自分の位置付けがハッキリしていない。魔弾(マジック・アロー)は攻撃魔法だと思うし無詠唱で使っているが、上級魔術師のさらに上の魔道士と言えるほどの能力があるとはとても思えない。これは希にいるという直感で無詠唱魔法が使える分類で魔道士とは違うのだろうな。


 リゼットの話では攻撃魔法とは一般的に精霊魔法の事で、その名の通り六大精霊(光・闇・火・水・風・土)に基づく具現化された力になる。

 その特徴として魔法発動時における魔力の残滓にも六大精霊を示す色が現れる。つまり光の精霊魔法なら白、闇の精霊魔法なら黒、火の精霊魔法なら赤といった感じだ。だけれど俺の魔弾(マジック・アロー)にはその色が無い、無色だ。だから一般的には攻撃魔法というカテゴリーには入らない……のか?


 いずれにしても俺が使える魔法は今のところ魔弾(マジック・アロー)だけなので、一般的に魔術師だろうが魔法師だろうが呼び方に興味は無いけれど。


 二つ目はリデルの助け。

 狩りに対する知識もそうだし、実際の狩りにおいて盾役として前衛をこなしてくれる為に安全に狩りが出来た。リデルの前衛としての腕前は十分に信頼出来る物で、安心して攻撃に専念出来るのが大きい。


 それに狩りだけで無く冒険者としての知識も教わった。

 これはリゼットにも分からない事だったので凄く助かった。主に安全な水の調べ方とか、火のおこし方とか、獲物の選び方とか。冒険者として生きる為に必要な事は殆どリデルに教わったと言ってもいい。この恩はいつか返さなければならないと思っている。


 三つ目はモモの存在。

 普通なら一角猪を狩る事は出来ても一人では持ち帰る事が出来ない。だから複数で狩りに出る必要がある。そうすると当然分け前も減る。だけれど俺にはモモがいるから、持ち運びの事は考えずにひたすら狩り続ける事が出来た。これだけでも相当なコスト削減だ。


 冒険者の中にも空間魔法を得意とした魔法使いが、一時的に物を別の空間に保管し、必要に応じて取り出す事で荷物の運搬ロスを減らす事が出来る。他にも魔道具で空間魔法を使った魔法鞄というのがあるらしい。これはかなり値段が高いので、持っている人は少ないらしいが、いないという事も無い。


 この二つと比べてブラウニーが決定的に違う点があった。それは時間の概念だ。魔法使いの空間魔法と魔法鞄は納めておいた物にはきちんと時間の経過が発生する。つまり氷を空間魔法や魔法鞄で保管していても時間の経過と共に溶けてしまう。

 だが、ブラウニーの場合は時間も保存の対象になる。よって、氷も溶けずに状態を維持出来た。


 いつまでもリデルに獲物の換金をお願いするのも難しいので、高いけれど手に入れられる方法がある魔法鞄を持っている事にした。モモの存在がばれた時のカモフラージュとして用意しておく建前だ。魔法鞄と言うけれど、見た目は様々らしいので、適当なポーチでも誤魔化しはきくだろう。


 モモには何がしてあげられるだろうか。

 モモはベッドで俺の向かいに座っている。俺が目を向けると何が楽しいのかニコッと笑って首を傾げた。


 モモは夜になると元々着ていた襤褸に近い服を脱いで、俺の買ってあげた服に着替える。俺が普段は他の人に見られないように姿を消していて欲しいとお願いした時から元の襤褸を着るようになった。どうやら俺の買ってあげた服を着たままでは姿を隠す事が出来ないみたいだ。


 だから日中は襤褸を着て、夜になると買ってあげた服に着替える。とても大切に扱ってくれるので折角だから好きなだけ新しい服を着ていて欲しい。どんな素材の服を買えば良いのだろうか。


 そういえば、モモが今着ている襤褸は見た目が確かに襤褸なのだが、実は古いだけで綺麗だと言う事がわかった。初めて会った時は確かに汚れていたけど、いつの間にか綺麗になっていた。


 どうやらモモに服を預けると洗濯というか何かの効果で服が綺麗になるようだ。洗濯が煩わしいなと思っていたけれど、モモのおかげでとても助かっている。狩りでモモが汚れる都度、体を拭いて、服を洗ってあげたら覚えたようだ。ただ、いつ洗濯しているのかは分からないが。魔法的な物なのだろうか。


 それからもう一つわかった事がある。

 モモは俺と同じ物を食べるけれど、魔力を食べるというか吸収する事がわかった。偶然だが、魔法の練習をしている時にモモが近寄ってきたので抱き上げたら、体から魔力が抜けるような感覚を感じた。

 モモは話せないけれど、言葉は通じるので確認してみた所、偶に栄養として魔力を吸収する必要があるそうだ。そうしないとこの世界にいられなくなり、精霊界に戻らないといけない。気付いて良かった。


 モモの事では分からない事や不思議な事も多いが、俺の中では全てファンタジーで解決している。見た目は八歳くらいなので小学校低学年だが、登校班の最年少よりは落ち着きがあるし、お願いした事はきちんと守ってくれるので俺にとって負担は全くなかった。

 正直二つ下の妹の方が、手が掛かるくらいだ。


 一時はハードモードかと思ったが、結果的には三つの要因に助けられ、この世界で生きていく為の力を手に入れる事が出来た。

 それから、これまで魔法を使ってきた事で、もう一つの魔法を実現する準備が整った。しばらくは実戦投入が難しいと思うけれど、リザナン東部都市に向かうまでに何とか形になればくらいの気持ちで練習していこう。

 間に合えばリデルにこの魔法を教えて力になりたいと思う。


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