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異世界は思ったよりも俺に優しい?  作者: 大川雅臣
第一部 第二章 王都編
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進展そして転移魔法・前

ちょっと長かったので前後編に分けての投稿になります。

後編は21時頃投稿予定です。

 最初の一週間こそドタバタとしていたが、落ち着いてしまえば日が経つのも早いもので、入園から既に三週間が過ぎていた。


 変わった事と言えば、俺には無関心だったテリウスの見る目に、憎悪が混じってきたくらいか。

 忌避、嘲り、嘲笑、蔑み、妬みにプラスして憎悪か、本当に悪感情の全てをコンプリートしそうだな。

 態度が変わりすぎて、まるで私が犯人ですと言っているようだ。


 ◇


 今日も何時もと同じように、午後は俺とレティが魔法理論へ、ルイーゼとマリオンが一般教養へと別れる。


 講義では質問を受け付けていたので、いくつかの質問をさせてもらった。

 その都度、視線が集まるのはやりにくいったらありはしないが。


 取り敢えずは魔力についてどのように捉えているかを確認する。

 俺の考えとどの程度違うか聞いておく必要があった。それによってどの程度まで情報を開示していくかを決める必要がある。


「魔法は、意識下に魔法陣を形成し魔力を通す事で具現化しますが、魔法を失敗した時に具現化していないにも変わらず魔力が減るのはなぜですか?」

「魔力が具現化されるのは魔法が発動したからだが、具現化に至らなくても一度役割を与えられた魔力は霧散すると考えられている」


 ここまでは俺の認識と変わりないな。


「霧散とは体内で起こることですか?」

「いや、体外に放出される事を指す」


 さすがに体内で霧散という事はないようだ。これも認識と同じだな。


「体外に放出された魔力には力としての作用が無いのでしょうか?」

「珍しい例ではあるが、霧散する魔力を制御する事で力として扱うことが出来る。

 ただし、その魔力制御は難しく、仮に力になるとしても精霊魔法ほどの威力が期待できない為、そうする事に大きな意味があるとは考えらていない」


 クロイドの話と一致するし、俺の経験上も同じ考えだ。

 だが一つだけ利点がある。


「魔法を具現化しようとして失敗した結果ではなく、はじめから魔力を力として使う為に出力する事も可能ではないですか?」

「意味はともかく、理論的には可能だ」

「その場合、具現化する為のプロセスを省略出来るので、発動までの速度は早いですよね」

「そうとも言い切れない。さっきも言ったが、体外において魔力は霧散する。

 その魔力を力として制御し、更にそれに方向性を与えるとなれば、それに必要な魔力制御の難しさは精霊魔法の比ではない。

 結果的に発動までに時間がかかるだろう」


 これは俺の認識と違うな。

 俺が使う魔弾(マジック・アロー)は確かに魔力制御を行う必要はあるが、そこまで意識を集中する必要はない。そうなっては戦闘中に使うことも出来ないだろう。

 それに最近はマリオンも近いところまで出来るようになっている。別に俺だけが出来るというわけでもない。練習次第では誰にでも出来る可能性がある。


「もし、魔力を瞬時に制御し、力として使う事が出来た場合、その脅威はどの程度と考えられますか?」

「……発動の早さという点では魅力的ではあるが、対魔術師戦においては脅威とは考えられない。

 理由は飛距離や威力的な問題として精霊魔法には到底かなわないからだ。

 魔術戦が想定される一定の距離を置いた状況では、飛距離の問題は大きい。

 もちろん初手必中という形で不意を突けば結果は変わってくるだろうがね。

 その場合は剣や弓を使っても同じ結果が得られるだろう」


 確かに速度以外の性能では精霊魔法にかなわない。

 それについては俺の経験上同じ認識だ。


「今、対魔術師戦においてという話でしたが、近接戦では脅威となりませんか?」

「魔術師が近接戦を行う時点でその戦いは負けだよ」


 室内のあちこちから押し殺した笑い声が湧き上がる。

 中には俺が精霊魔法を使えないから必死になっているとも見えるだろう。


 だが俺は二つ目の認識の違いと思っている。

 近接戦闘においても魔法は使用可能だし、むしろ使用することで驚異的な戦闘能力の向上が望める。俺は魔弾(マジック・アロー)を使う事で何度も好機を引き出したし、何度も危機を救われている。


「最後の質問になります。

 今の話に出て来た魔法は無属性魔法と呼ばれていますが、近接戦闘の得意な人間が実用的な速度で無属性魔法を使用した場合、それは脅威と言えますか」

「歴史が変わるとまでは言わないが、歴史に残る変革だろうね」

「ありがとうございました」


 強化魔法や魔力吸収・付与といった事についても聞きたいが、俺の中でもまとめが必要なので、この辺にしておく。


「アキト君だったかな。君はこの件で論文を書くのかな」

「そこまでは考えていませんでしたが、自分の認識とのズレを修正しているところです」

「なるほど。興味深い考察だと思う。必要ならいつでも聞きに来ると良い。時間を空けよう」


 室内の笑い声が、今度はどよめきに変わる。

 何があったのか分からないが、わからないのなら無視しよう。別に害はなさそうだし。


 ◇


 害はあった。


 俺が初日に気に入って講義を受けることにした先生は、ジーナス・アレクサンドリアといい、王都学園でも非常に人気のある講師だった。

 自身も優れた魔術師であり、各地の魔法学校や有力貴族のご令息ご令嬢の家庭教師にと引っ張りだこの有名人らしい。

 王都学園でも彼の教えを受ける事は光栄な事であり、常に個人授業は申し込みが殺到している。

 それを逆に来いとまで言われる事は滅多になく、また、来いと言われた事で俺に対する視線は更に激しい物になっている。


 昨日までは忌避、嘲り、嘲笑、蔑みという感じだったのに、そこに憎悪が、続いて妬みが入ってきた。

 増えるのが早すぎるだろ!

 なんだろうこれは。その内、何かをコンプリートして暗黒面に落ちるのだろうか。


「アキトさん、凄いです!

 ジーナス先生の教えを受けられるだけでも素晴らしい事なのに、個人授業までお誘いを受けるなんって」


 レティはまるで自分の事のように大喜びだ。

 王都に住んで魔術師を目指すなら、憧れの目標でもあるのかもしれないな。行く時はレティも連れて行ってみよう。


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