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異世界は思ったよりも俺に優しい?  作者: 大川雅臣
第一部 第二章 王都編
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閑話:ローレン

 私は見ていた、二回り近く大きい男の人を次々に打ち倒していくマリオンの姿を。


 マリオンは私より一つ歳上だけれど、それでもたった一つ。それなのに私とこんなにも違うなんって!

 強いことは知っていた。だって私がメビナ砂漠で鎧蜥蜴に襲われた時、助けてくれたのはマリオンだもの。


 その強さを知っていても、今、目の前で見せられている戦いは現実味が無かった。

 だって、あんなに強面で大きくて太い腕をした男の人を、簡単に倒しているのよ。

 確かにマリオンは私より頭ひとつくらい大きいけれど、それでも女の子としてはちょっと背が高いくらいで、特別じゃないわ。


 私も教養だけじゃ飽きちゃうから実技もたまに受けるけれど、いつもすぐに負かされちゃう。周りの女の子もみんなそんな感じで、はじめから勝つとか考えていなかった。

 私は多分、女性じゃ勝てないんだからと勝手に決め付けていたかもしれない。


 マリオンはおかしいわ。

 あんなに綺麗な子があんなに強いなんて。私も冒険者になったら強くなれるのかな。


 また倒した。

 この試合は五対五なのに、開始早々に生徒側の四人は降参してしまったから、ほとんど一対五の戦いだったのよ。


 でも今は四人の大男を倒して、一対一になっているの。

 その間、一度も攻撃を受けていないわ。それどころか掠る様子も見せないの。

 だって、男の人が剣を振り上げるだけで、もう当たらない位置にいるの。


 男の人はまるで見えないお化けでも斬り付けているかの様に練習用の剣を振り回しているけれど、ただ振り回しているだけだったわ。

 そして、最後の一人も背後からあっさり斬られて試験終了。


 マリオンは他の試合には興味が無いのか、さっさと認証プレートを受け取って奥の芝生に寝転がってしまった。

 でも私は見た、マリオンの持っている認証プレートが白金なのを。


 白金よ、オールフリーパスなのよ!

 全施設の利用料無料、利用制限なし、講師も好きに指定出来て、全校生徒合わせても二〇人と持っていないわ。

 その持っている人も殆ど王族か有力貴族のご令息ご令嬢位なのに……冒険者ってすごく儲かるのかな?

 でもあれだけ強いなら持っていても不思議はないよね。きっと特待生だわ。


 ◇


 私は見ていた、二回り近く大きい男の人を次々に打ち倒していくルイーゼの姿を。


 ルイーゼは私と同じ歳の女の子。そして私よりちょっとだけ背が高い。それでもきっと一五〇センチに届かないくらいだから、私と仲間ね。

 ただ、スタイルでは完全に負けているわ。私はどう見ても寸胴だけれど、ルイーゼは……大きい。悔しいけれど、私が大人になってもきっと勝てない。

 早くも格差社会の荒波に揉まれるのは悲しい事だわ。


 目の前で、男の人が二人吹っ飛んでいく。

 よく分からない。

 右手に持った剣も振っていないのに、何故か男の人が吹っ飛んで、もう一人の男の人を巻き込みながら倒れていったわ。手品かな?


 危ない!

 ルイーゼに三人目の男の人が剣を振り下ろすところよ。


 でも、ルイーゼはその攻撃を盾で難なく受けて、その後、男の人が吹っ飛んでいったわ。

 どういうこと?

 盾に触ると爆発でもするの?


 その様子に一緒に試験を受けていた四人の同級生も、試験官の残り二人の男の人も唖然としているわ。

 良かった、よく分かっていないのは私だけじゃなかったみたい。試験を受けている殆どの人が分かってなかった。


 でもルイーゼにはそんなこと関係ないようね。

 あっという間に四人目の男の人に詰め寄ると――

 あぁ! 盾で叩いているんだ! 盾って武器だったのね!


 尻餅をついている男の人に目も向けないで最後の男の人に向かって行くけど、剣を構えているよー。

 

 それでもルイーゼは盾しか使わないのね。

 男の人はルイーゼに向けて剣を振るけれど、それが盾で防がれると弾き飛ばされて、そのまま無防備になったところを盾で殴られ、尻餅を着いたわ。


 結局、剣を使わずに勝っちゃった。

 そうか、剣は別にいらないのね。


 そして、ルイーゼが採点官から受け取った認証プレートも白金だった!

 マリオンもルイーゼも、もしかして超エリート?


 戻ってきたルイーゼになんで剣を使わなかったのか聞いたら、なんと驚き。剣は使った事がないんだって。

 剣も使った事が無いのに、なんであんなに強いの?


 私も強くなれるの? と聞いたら、すっごい素敵な笑顔で「もちろん、なれますよ」って言われたわ。

 私はちょっと恋に落ちそうだった。

 周りでちょっと恋に落ちた男の子がいっぱいいたけれど、残念。ルイーゼは私の友達なので、知り合いたかったらまずは私を通すことね。


 ◇


 放課後、貼りだされた掲示板には戦闘実技総合一二位ルイーゼ、一五位マリオンと書いてあった。それに二人の友だちのレティさんが魔法実技総合一二位……ほぼトップじゃない。


「まだ上には一〇人以上いるぞ」

「アキトさん、もうそれより上にいる人は王族様とか有力貴族様の世界ですよ。

 どんなに頑張ってもこれ以上は上にいけません。事実上トップと言っても良いくらいですよ……」


 アキトさんは、そう言うものかといった感じだけれど、これって凄いことなのに!

 それは確かに学生枠での話だし、いくら王都学園が優秀とは言っても、地方学校にも優秀な人はいっぱいいると思う。

 一番のライバルはトリテアの冒険者予備校だけれど、それでも王都学園で実質一番は凄いのよ!

 あぁ、もぉなんで感動が薄いんだろう。塩分が足りないのかな。


「それに、アキトさん達がエリート集団だとは思っていなかったわ」

「なんで俺達が?」


 むっき~!


「白金認証プレート持ちなのに、違うわけ無いじゃない、もぉ!」

「あ、これ、色の違いで何か変わるのか」

「何かって……どうやって手に入れたの?

 冒険者ってそんなに稼ぎが良いの?」

「いや、これは国王陛下がくれたんだ。

 俺はこれしか持っていないし、他との違いはわからないよ」

「国王陛下って……」


 私が蹌踉(よろ)めいたところをマリオンが支えてくれる。


「そのプレートがあれば、全講義、全施設すべての利用が無料で、立ち入り制限もないのよ……凄いことなのに、なんかそうでもなく思えてきた」

「まぁ、全てと言ってもあくまでも学生レベルの話だからな。

 国家機密にアクセスできるとかじゃないし」


 あぁ、私の白金認証プレートに対するイメージが壊れていく、このままでは駄目だわ。


「白金認証プレートは王子様にだけ似合うの、アキトさんは王子様って感じじゃないから使っては駄目です!」


 アキトさんは少し困った顔をしていたけれど、それくらい当然ね。

 はぁ、リデルさんなら絶対に似合うのに。


 傷ついた乙女心はひっそりと包み込んで、影のある女の子路線で行こう。

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