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「……まさかとは思うけど、ただ肝試しがしたくてここまで来たわけじゃないよな?」


「ぎくっ!」


「わかりやすすぎじゃろ……」


「そうなの?」


 与羽(よう)と月の冷気を帯びた視線が日向に注がれた。


「でもっ! 幽霊の話は本当ですから!」


 日向はほほに汗を伝わせながら、必死に弁明している。


「そりゃあ、かっこいいと評判の古狐(ふるぎつね)先輩と一緒に歩いてあわよくば、『きゃー!』って抱き着いたりしたいとか思ってないこともないですけど、本当に私たちは生徒たちが呪われたりしたら危険だと思って――」


 ちなみに、「古狐」とはかっこいいと評判らしい辰海(たつみ)の名字だ。


「本音がダダ漏れなんじゃけど……」


 与羽がため息交じりに言う。


「もう辰海かしちゃるけ勝手に行って来い」


「え? ちょっと、勝手に決めないでよ、与羽」


「与羽ちゃんも一緒に行ってあげなよ」


 慌てたように言う辰海に、落ち着いた口調で諭すミサ。無口な千斗(せんと)はすでに我関せずと、模試の問題冊子を見比べる作業に戻っている。


「いや、でも、辰海と肝試ししたいんじゃろ?」


「与羽っ!」


 首を傾げた与羽の肩を辰海がそっと制止するように掴む。

 与羽にひそかな恋心を抱く辰海は、必要以上に与羽以外の女の子と接するのを避けようとする節がある。


「会長もぜひ」


 そんな辰海の内心を察したわけではないだろうが、月が与羽を見てそう言った。やけにまじまじと見てくる。


「うわー、月、目をキラキラさせて――」


「キラキラさせとんか……。ガンつけられとんかと思った」


 日向の言葉に与羽がぼそりとつぶやく。


「月はわかりにくいからねー」


 日向がからかうように無表情な月のほほをつまむが、小さな月の口から「痛い」という言葉が漏れただけで表情の変化はほとんどない。


「というか、私も会長にも来てもらいたいしー。ね、ね? お願いしますっ!」


「こっちの二人は――?」


 与羽がほかの生徒会執行部役員――、ミサと千斗を指した。


「お二人も、ほかの執行部の人々もぜひ!」


 日向が言って、月もその隣で「ぜひ」とうなずいた。


「……まぁ、聞いてみるか」


 いつの間にか、肝試しをすることになってしまったらしい。しかし、たまにはそういうのも悪くないだろう。

 与羽はカバンの中から携帯電話を取り出して、メールを打ちはじめた。

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