十三
「……うん」
しばらくして、やっと十字架少年は浅くうなずいた。黒かった十字架の下から、黄金の光が漏れる。
「きれいな色じゃな。きれいな信仰心じゃ」
それを見て与羽が表情を緩めた。
「ありがとう」
彼も淡く笑みを浮かべた。年相応の若く無邪気な笑みだ。背負う十字架が金の輝きを取り戻した。
「神様に会いに行っといで」
「うんっ!」
明るく答える彼の目が無表情に様子をうかがっている月とその手の中の太刀に向いた。
「月ちゃん、解き放っちゃってくれ」
「わかった」
月はそう言って、少年を見た。
「神様は本当にいるし、天国も本当にあるから」
そっけない言い方だったが、隣で聞いていた与羽には、その言葉に月の精一杯の思いやりとやさしさが込めらているのがわかった。きっと彼にもそれは伝わっているだろう。
本当なのか、少年を気遣った嘘をついたのか定かではないが、なぜか与羽が言うよりも、月が言った方が信憑性があるように聞こえる。
そして、胸の前で指を組んで穏やかに笑んだ彼に光り輝く太刀を一閃した。
その瞬間、少年は細かい光の粒になった。
十字架の同じ輝きを放つ無数の黄金の粒はゆっくりと天に舞い上がっていく。
「……きれい」
誰ともなくつぶやく。
しばらくそうしていたが、不意に耳に虫の声が届いて、先ほどまでそれが聞こえていなかったことに気付いた。
元の世界に戻ってきたようだ。光の粉ももう見えない。
「きっと会える」
そうつぶやいて慣れないしぐさで胸の前で指を組んだ月に与羽たちも倣った。あの純粋無垢な少年の希望が叶うように祈って――。




