ルール説明
――二対二、隠れ鬼ごっこルール――
互いに鬼は一名と逃走者一名。
通常の鬼の入れ替えはないので、互いのチームの話し合いで決める。
勝敗は鬼が逃走者に触れた時点で決定(服も含まれる)。
逃走範囲は町と町の大きさと同様の森の面積。
ゲーム中、他の手助けを受けてはならないものとする。破った時点で敗北とみなす。
最後に、負けた方は勝った方の言うことを聞く。
――以上――
「他になにかあります?」
急きょ考えただけなので不足している項目があれば加えるつもりで尋ねた。
「勝敗は誰が判定するのですか?」
「あ、」
普通ルールだと鬼が変わるから必要ないのだけど、今回の場合触れた時点で勝敗が決まる。必ずしもその瞬間に四人全員がいるわけじゃないし、さらに森の中だと証人がいない。さらに四人の内二人は貴族で町の人が優劣を付けられるかと言えば難しい。そんなわけで公平な審判が二人はいないと、貴族の二人は負けても言い訳をしそうだ。
「自己申告は無理……ですね。どうしよう」
町を見渡し審判を探す。目に映るのはフロルスさん、マルさん、バーパス側の従者の方の一部、そしてレナード、だけど身内は公平とは言えない。といって町の人は無理だ。
適任なのは二人より上位貴族か王族なんだけど、そんなに都合よくいるわけが……、
「ん?」
見渡していた中に一人だけおかしい人が紛れ込んでいた。
「レナード公爵!」
驚いて声を上げたのはバーパスの従者の人だった。応じて町全体にざわめきが浸透していく。
ざわめきの中レナードは歩を進めて僕達四人の間に入って来た。
「いつからそこに? というかなぜ?」
「な、貴様レナード公爵になんて口の聞き方を!?」
「バーパス君いいですよ、侵入者の言葉など気にしません」
あれだけ恋バナをさらけ出した相手とは思えない程、冷たい態度だ。
思わず名前を呼ぼうとした。
「レナ――」
「黙りなさい。あんたとレナードの関係性を明かすことは許さないわ」
小声で僕の行動をストック様が静止する。全てが城で起きた事とは真逆、レナードの態度もストック様の態度も立場を考えた行動だった。
その瞬間、僕の脳みそは急速に計算する。
「よければ私達が判定員を務めましょうか?」
「よろしくお願いします、レナード公爵!」
僕の空気の読む速度を自負したい。
そんな優越感も束の間、
「よろしくではないんだがな」
「ひぃいいいっ――あふん!」
突然、首元に冷たいものが突き付けられた。そこにはこの世界で初めて処刑宣告をした女性がいた。ちなみに距離が近いせいで胸も当たっているから恐怖と欲望の板挟みだ。
「セレンさん」
どうやらランさんと知り合いらしい。
「レナード公爵をこんなお遊びに巻き込んでほしくないのだがな」
「僕は首に突き付けられているものを引込めてくれてら嬉しいです」
「ですが――」
「お前の意見など聞いていない」
あのランさんが黙ってしまった。
「ランさんは悪くないんですよ」
それでもイケメンにも巻かれろ精神を僕は忘れない。
「これは貴族同士の問題だ、口を出してほしくないわ」
フォロー失敗……そして味方のはずのストック様も僕を無視。
「だが、場合によっては貴方たちの事とはいえ――」
「シア。いいのですよ。私は楽しいですから」
セレンさんがため息を吐いていた。
そんな中で僕はしらじらしいとも思う。僕の存在を知っているのだからこうなる事態は十分予想できたくせに。
「なんだその顔は」
「ひぃっ――あふん」
肌が傷つかない程度にナイフがめり込む。
「二度言わせないでください。あとナイフを収めてあげなさい」
「はっ、畏まりました」
ようやく離れた恐怖に安堵と、離れてしまった幸せに寂しさを覚える。
「あまり長くなっても困るので始めましょう。良いですか?」
指揮権はレナードに移ってしまったけど、その前に、
「ちょっとまった、ルールの確認は?」
ギロッ!
「ひぃっ――」
三人に睨まれた。
「大丈夫ですよ。聴いていましたから」
ちくしょう幸せが無い分恐怖しかなかった。それよりもレナードはいつから見てやがったんだ。
「では、一度互いの姿が見えないところから始めましょう。シアにはバーパス君の方の判定員をお願いします」
「はっ」
お互いが隠れる為、もしくは作戦会議の為に姿が見えないところまで移動し始める。
そこで僕達の知らない会話がなされていた。
「面白いことになりそうですね」
「恐れながらレナード様、何時頃からお気づきに?」
「おや、ラン君との昔話は終わったのですか?」
「失礼とは思いましたが――」
「結構ですよ。あなたの仕事にまで口は出しません」
「お気遣いありがとうございます」
「それで、訊きたいと言うのは『魔森回路』のことですか? それともこの決闘のことですか?」
「両方でございます」
「『魔森回路』に関しては、彼が逃げ続けた時点では気付いていましたよ。『魔森回路』は昔から好きな者には手を貸すと耳にしていましたからね。まぁ、今回彼に手を貸すことはルール上、無理でしょうが。それともう一つの方は、彼を最初に見つけたのは私でしたからね。その辺からでしょうか――」
「さすがでございます」
「ははは、では判定員の方お願いしますね」
「はっ」
決闘のカウントダウンが始まった。




