プロローグ①
城の台座に腰かけながら、無駄に有り余る広い空間にため息を吐いた。城の部屋の数と大きさに似つかわしくない従者の数、端から端まで見渡せるのは台座が高い位置にあるからと言う理由だけではない。
従者となった者は自分の意思でどの貴族の下で働くか選ぶことができる。当然、貴族側からの要請や逆に受け入れられないこともあるが、基本的には実力が認められたものが従者になるのだから貴族側から拒否をされことは少ない。
だが、要請は様々な理由から断ることが多々ある。
例えば、すでに貴族から申し出に返事を返している場合や、心に決めた主人がいる場合、そして例外としてその貴族の元では働きたくない場合だ。
そしてその例外が私なのだ。
『強さ』が貴族としての象徴になる『ルナレト』で、私はたった二人の従者からしか認められなかった。
「ため息なんて吐いたらだめですよー」
たった二人の従者の一人、『トラヴェスラス・フロルス』に言われても、たった二人しかいない従者に私の価値がどれほどのものなのか考えさせられてしまう。
「……問題ない。二人いればフェルを守れる」
そしてもう一人、『クワイエッド・マルギナタ』に補われる。
「ええ、貴方たちは従者としてだけじゃなく大切だけど」
二人は私の大切な友人だ。どっちが欠けても私は私でいられない。でも、マルに慰められる辺り私の底が知れる。他の貴族が従者に慰められる姿なんて見た事がない。
「あらあらまた落ち込んじゃいましたねぇ」
「……う、ごめん」
「落ち込む姿も可愛いですよーマルちゃん」
「マルをからかうのは止めなさい」
「ヤキモチですかー、お嬢様ぁー」
「そんなわけないでしょ」
「うふっ、お嬢様も可愛いですよー、あ、綺麗って言った方がいいですねー」
「だからっ、ヤキモチじゃないって言っているでしょう!」
気分が少しだけ誤魔化された。これ以上二人に心配させていても仕方ない。貴族として、二人の主人として私はもっと強くならなければいけない。
「湯浴びをするわ、フロルス用意をお願い」
強くなって私に付きたいと思わせれば従者は増える。そうすれば、もう二度と『成り上がり』なんて呼ばれることもなくなる。
「はいはーい、畏まりましたー」
『エスフェルソ・ストック』の名において私は貴族としての立場を守る。そうすれば、二人が私を選んでくれたことも誇りに思えるはずだから……。