第9話 魔導雑貨市
森のカフェしっぽっぽの朝は、コーヒーの香りと猫のあくびから始まる。
そしてその日は――
地下からのため息で始まった。
「……これは売らないとまずい」
サトルは地下倉庫の前で腕を組んでいた。
木箱。
木箱。
木箱。
魔導市で仕入れた品が、まだ大量に残っている。
魔導ランタン。
自動保温カップ。
魔力反応スプーン。
魔導ミニ加湿器。
どれも便利だが――
量が多い。
「ガルドのやつ、絶対多めに押し付けたな」
サトルは天井を見上げる。
相手は蜥蜴人族の商人である。
油断すると商売が三倍になる。
⸻
作戦会議
一階。
サトルはカウンターで考え込んでいた。
みどりさんが聞く。
「どうしたんです?」
「地下の商品を売りたい」
「いつも売ってますよね」
「今日は本気で売る」
その時。
イチがカウンターに座る。
王の風格。
サトルは言う。
「今日は“魔導雑貨市”だ」
みどりさんが笑う。
「イベントですか」
「イベントだ」
完全に思いつきである。
⸻
店内準備
一階の棚に商品を並べる。
サトルが説明する。
「これは魔導保温カップ」
「普通のカップと違うんですか?」
「冷めない」
「それ便利ですね」
次。
「魔力反応スプーン」
「それは?」
「甘い物に反応して震える」
「どういう用途ですか」
「……俺もよく分からない」
だが見た目はオシャレだ。
売れるかもしれない。
⸻
猫の宣伝
商品を並べ終わると。
猫たちが来る。
トラが箱に入る。
チビがランタンを転がす。
きながカップの横で寝る。
イチが中央に座る。
展示が猫カフェ仕様になる。
みどりさんが言う。
「猫付き雑貨ですね」
「むしろ猫が主役だ」
ロンは入口で寝ている。
いつもの警備体制。
⸻
最初の客
ちりん。
ドアベルが鳴る。
若い女性客が入ってきた。
猫カフェ常連だ。
「こんにちはー」
トラが迎えに行く。
サトルは笑う。
「今日はイベントです」
「イベント?」
女性は棚を見る。
魔導商品。
ランタンが柔らかく光る。
「かわいい!」
第一声がそれだった。
サトルは心の中でガッツポーズ。
⸻
実演販売
サトルはカップを出す。
「これ、冷めません」
コーヒーを入れる。
五分後。
湯気が出ている。
女性が驚く。
「本当だ」
「魔導技術です」
チビがカップを覗く。
危ない。
サトルが慌てて持ち上げる。
「猫安全設計ではないので」
「そこ大事ですね」
⸻
スプーンの真価
次にスプーン。
サトルはケーキを出す。
スプーンを近づける。
ぶるぶる震える。
女性が笑う。
「かわいい!」
用途は謎だが人気はある。
トラが机にジャンプ。
スプーンを触る。
ぶるぶる。
猫がびっくりする。
客が笑う。
完全にエンタメである。
⸻
ランタン事件2
そして問題児。
魔導ランタン。
サトルは慎重に説明する。
「これは光量調整できます」
ランタンを置く。
スイッチ。
柔らかい光。
店内が暖かい雰囲気になる。
女性が言う。
「欲しいかも」
その瞬間。
チビがスイッチを叩く。
光最大。
ぴかー。
店内が昼間のように明るい。
サトルが叫ぶ。
「だから触るな!」
客は爆笑。
⸻
意外な売れ行き
その後。
客が増える。
猫目当て。
雑貨も見る。
結果――
売れる。
カップ。
ランタン。
スプーン。
意外と人気。
みどりさんが言う。
「異世界商品って強いですね」
サトルもうなずく。
「猫と相性いい」
きながカップの横で寝ている。
完全に宣伝モデル。
⸻
ジルの仕事
その時。
ジルが棚から出てきた。
臆病猫。
しかし今日は違う。
ランタンの横に座る。
客が写真を撮る。
「かわいい!」
ジルは固まっている。
怖い。
だが逃げない。
サトルは小声。
「接客してる……」
みどりさんが笑う。
「店員ですね」
⸻
完売間近
夕方。
棚はかなり空いた。
サトルは驚く。
「こんな売れるとは」
地下の在庫も減った。
まだあるが。
だいぶ減った。
猫たちは満足そう。
ロンだけ寝ている。
⸻
異世界の反応
夜。
サトルは地下へ降りる。
市場側。
ガルドがいる。
蜥蜴人族の商人。
サトルは言う。
「売れた」
ガルドが目を細める。
「ほう」
「追加発注だ」
ガルドは笑う。
「人間、いい商人だ」
サトルは肩をすくめる。
「猫が優秀なんだ」
それは本当だ。
⸻
地上へ戻る
店に戻る。
猫たちは寝ている。
イチ。
きな。
トラ。
チビ。
ジル。
ロン。
静かな夜。
みどりさんが言う。
「いい一日でしたね」
サトルは笑う。
「商売も猫も順調だ」
その瞬間。
地下からぽんという音。
サトルは天井を見る。
「……次は何だ」
森のカフェしっぽっぽ。
猫カフェであり。
異世界貿易会社であり。
そして――
魔導雑貨店でもある。
ただし。
トラブル付きである。




