第30話 猫カフェ大拡散
朝の**森のカフェしっぽっぽ**。
サトルが店のシャッターを開けると、ひんやりした朝の空気が店内に入ってきた。
「よし、今日も営業」
カウンターの奥ではコーヒーミルの音。
ガリガリ。
みどりはエプロンをつけながら言った。
「サトルさん」
「ん?」
「昨日の光るボール、まだあります?」
「ある」
サトルは棚を指さす。
そこには新商品が並んでいた。
光る毛玉の猫玩具。
落ち着く香り袋。
眠くなる鈴。
猫が夢中になる干し魚。
すべて――異世界の商品。
もちろん客にはそんな説明はしない。
ただの「珍しい雑貨」である。
店内では猫たちがすでに仕事をしていた。
イチは棚の上で監督。
「にゃ」
きなはソファで丸くなっている。
トラは光るボールを見つめている。
チビは通路で寝ている。
ジルはカーテンの影。
ロンは入口で尻尾を振っている。
その時。
カラン。
ドアベルが鳴った。
「おはようございます」
入ってきたのは若い女性だった。
スマホを持っている。
「猫カフェですか?」
「そう」
みどりが席へ案内する。
女性が座ると、猫たちが接客開始。
チビが膝へジャンプ。
「うわ」
女性が笑う。
「かわいい!」
トラは足元でゴロン。
腹を見せる。
「サービス精神すごい」
その時。
ころころ。
ぽわっ。
光る毛玉が転がってきた。
「なにこれ?」
女性が拾う。
ほんのり光る。
「かわいい」
みどりが言う。
「新商品なんです」
女性が転がしてみる。
ころころ。
ぽわっ。
トラがダッシュ。
「にゃあ!」
ドタッ。
女性が笑う。
「すごい!」
今度はチビも追う。
きなも参加。
ジルも少しだけ参加。
ロンまで走る。
「ロンは違う」
サトルが言う。
女性はスマホを取り出した。
「動画撮っていいですか?」
「どうぞ」
撮影開始。
ころころ。
ぽわっ。
トラがジャンプ。
チビが転ぶ。
きながマイペース。
ジルが恐る恐る追う。
ロンが邪魔。
女性は笑いながら撮影していた。
「これ絶対面白い」
しばらくして女性は帰った。
その夜。
みどりがスマホを見て叫んだ。
「サトルさん!」
「ん?」
「これ見てください!」
画面には動画。
タイトル。
**「猫カフェの猫が光るボールで大騒ぎ」**
再生数――
五万。
「多いな」
「まだ増えてます!」
コメントも大量だった。
「猫かわいい」
「この店どこ?」
「光るボール欲しい」
「行きたい」
翌日。
カラン。
カラン。
カラン。
ドアベルが鳴りっぱなしだった。
「いらっしゃいませ!」
みどりが大忙し。
客が次々入る。
「動画見ました!」
「光るボールあります?」
「猫かわいい!」
トラは人気者。
チビも人気。
きなは寝ているだけで人気。
ジルは隠れて人気。
ロンは撫でられて人気。
棚の商品も売れた。
「この鈴ください」
「香り袋も」
「干し魚も!」
サトルは静かにコーヒーを淹れていた。
「すごいですね」
みどりが言う。
「バズった」
その時。
カラン。
ドアが開いた。
入ってきたのは若い男性。
「動画の店ここですか?」
「そう」
男性は光るボールを見た。
「これ欲しい」
「売ってる」
男性は笑った。
「SNSでめちゃ有名ですよ」
その頃――
異世界の市場。
森猫族の青年が言った。
「サトルの店どう?」
魔導士族が水晶を見ている。
「面白い」
水晶には地球の映像が映っていた。
猫が光るボールを追いかけている。
「人気」
蜥蜴人族が言う。
「干し魚も売れてる?」
「売れてる」
鉱人族が笑う。
「商売上手だな」
そして地球。
**森のカフェしっぽっぽ**。
店は大賑わいだった。
ころころ。
ぽわっ。
トラがジャンプ。
チビが転ぶ。
客が笑う。
みどりが走る。
ロンが邪魔。
イチが棚から見ている。
「にゃ」
サトルはコーヒーを飲みながら呟いた。
「宣伝費ゼロ」
みどりが笑う。
「猫の力ですね」
サトルは地下への扉をちらっと見た。
その向こうには異世界の市場。
まだまだ面白い商品がある。
「次はもっと仕入れるか」
**森のカフェしっぽっぽ**は今日も、
猫と異世界の商品で大繁盛していた。




