第29話 光玉の大騒ぎ
午後の**森のカフェしっぽっぽ**。
窓から差し込む日差しが店内の木の床をやさしく照らしていた。
カウンターではサトルがコーヒーを淹れている。
その横で、みどりが新商品の棚を整えていた。
「サトルさん」
「ん?」
「この光るボール、もう猫たちが独占してます」
床を見ると――
ころころ。
ぽわっ。
ころころ。
ぽわっ。
光る毛玉のおもちゃが転がっている。
異世界から仕入れてきた新商品だ。
森猫族が作った猫用玩具。
転がるとほんのり光る。
それを――
トラが全力で追いかけていた。
「にゃああ!」
トラがダッシュ。
ころころ。
ぽわっ。
今度はチビが飛びつく。
ドタッ!
転がる。
きながのそのそ近づく。
ころころ。
ぽわっ。
「にゃ」
きなは軽くパンチ。
その横で――
ジルが遠くから見ている。
「にゃ……」
臆病なのでまだ参加できない。
入口ではロンが興味津々だ。
尻尾ブンブン。
「ロン、それ猫用」
サトルが言う。
ロンは「え?」という顔をした。
棚の上ではイチが静かに様子を見ている。
「にゃ」
完全に監督ポジションだ。
その時。
カラン。
ドアベルが鳴った。
「いらっしゃいませー!」
みどりが元気に迎える。
入ってきたのは小学生くらいの男の子と母親だった。
「猫カフェだ!」
男の子は目を輝かせる。
「すごい!」
席に座ると、猫たちが接客を始めた。
チビが膝にジャンプ。
「うわ!」
男の子が笑う。
「重い!」
トラは足元でゴロン。
腹を見せる。
「この猫すごい!」
その時。
ころころ。
ぽわっ。
光る毛玉が男の子の前に転がってきた。
「なにこれ!」
男の子が拾う。
軽い。
そして――
ほんのり光る。
「光ってる!」
みどりが説明する。
「新しい猫のおもちゃなんです」
男の子は転がしてみた。
ころころ。
ぽわっ。
その瞬間――
トラが飛んだ。
「にゃあ!」
ドタッ!
「うわ!」
男の子が笑う。
今度はチビも参加。
ころころ。
ぽわっ。
チビが追う。
きなも追う。
ジルはまだ遠くから見ている。
ロンも興奮している。
「わん!」
「ロン、落ち着け」
サトルが言う。
男の子は夢中になった。
「すごい!」
ころころ。
ぽわっ。
トラとチビが激突。
ドン。
「にゃ!」
「にゃ!」
みどりが笑う。
「運動会ですね」
男の子の母親も笑っていた。
「こんなに遊ぶんですね」
サトルが言う。
「いい玩具」
その時。
男の子がボールを強く転がした。
ころころころころころ。
ぽわぽわぽわ。
光が強くなる。
「お?」
サトルが眉を上げた。
ボールが――
光り続けている。
「おかしいな」
ころころ。
ぽわー。
店内が少し明るくなる。
みどりが言った。
「サトルさん」
「ん?」
「光強くないです?」
その瞬間。
ぽわあああ!
ボールが急に明るくなった。
「うわ!」
男の子が驚く。
猫たちもびっくり。
トラが飛び退く。
チビも止まる。
きなは目を細める。
ジルはカーテンの裏に逃げた。
ロンが吠える。
「わん!」
棚の上のイチだけは動かない。
「にゃ」
サトルがボールを拾った。
「なるほど」
「どうしたんですか?」
みどりが聞く。
サトルは小さく笑った。
「魔力たまった」
この玩具は森猫族の魔法玩具。
たまに光が強くなることがある。
サトルが軽く振る。
すると――
光が消えた。
「直った」
男の子が言う。
「びっくりした!」
みどりが笑う。
「猫もびっくりしてましたね」
トラはすぐに復活。
ころころ。
ぽわっ。
また追いかけ始めた。
チビも参加。
きなものそのそ参加。
ジルも少しだけ近づく。
男の子は楽しそうに笑った。
「このおもちゃ欲しい!」
母親が笑う。
「買って帰る?」
「うん!」
みどりが袋に入れる。
「ありがとうございます」
男の子は嬉しそうだった。
「猫と遊べる!」
帰り際。
男の子はトラを撫でた。
「また来る!」
ドアが閉まる。
カラン。
店に静けさが戻る。
みどりが言う。
「今日も売れましたね」
サトルはコーヒーを飲む。
「大ヒット」
床では猫たちがまだ遊んでいる。
ころころ。
ぽわっ。
ロンも追いかけている。
「ロンはダメ」
ロンは止まった。
棚の上でイチが言う。
「にゃ」
まるでこう言っているようだった。
「この店、面白い」
サトルは地下への扉をちらっと見た。
その向こうには異世界の市場。
森猫族
魔導士族
鉱人族
蜥蜴人族
まだまだ面白い商品がある。
サトルは小さく呟いた。
「次は何仕入れるかな」
**森のカフェしっぽっぽ**には今日も、
猫と異世界の商品と、
少しの騒ぎがあったのだった。




