第26話 鈴の大反響
午後の**森のカフェしっぽっぽ**。
サトルが異世界から仕入れてきた新商品が、棚に並べられていた。
小さな鈴。
香り袋。
そして猫用干し魚。
どれも普通の店ではまず見ない品だ。
もっとも――
客から見れば「ちょっと珍しい雑貨」くらいにしか見えない。
だが猫たちは違った。
棚の前に集まっている。
イチが鈴を見つめている。
「にゃ」
トラは干し魚の箱の前で待機。
チビは香り袋の前でゴロン。
きなは鈴を見ながら寝落ち寸前。
ジルは少し離れた場所から様子を見ている。
ロンはなぜか干し魚を狙っている。
「ロン、それ猫用」
サトルが言う。
ロンは「え?」という顔をした。
その時。
カラン。
ドアベルが鳴った。
「いらっしゃいませー」
みどりが元気よく迎える。
入ってきたのは女性二人組だった。
「わー猫!」
「かわいい!」
二人はすぐに席に座った。
すると猫たちが動く。
トラが接客担当のように歩いていく。
ゴロン。
腹を見せる。
「きゃー!」
女性が笑った。
「サービス精神すごい!」
その時。
チリン。
棚の鈴が鳴った。
サトルが試しに鳴らしたのだ。
優しい音が店内に広がる。
すると――
猫たちが一斉にリラックスした。
トラがその場でゴロン。
チビはそのまま寝た。
きなは完全に熟睡。
イチまで目を細めている。
女性たちは驚いた。
「え、今の何?」
「鈴?」
みどりが説明する。
「新商品なんです」
女性が興味津々で見る。
「可愛い」
「音がきれい」
サトルが鈴を渡した。
「鳴らしてみて」
女性が軽く振る。
チリン。
すると――
膝の上のトラがさらに脱力。
「うわ!」
女性が笑う。
「寝た!」
みどりが言う。
「猫が落ち着く鈴なんです」
「すごい」
その時。
別の客が入ってきた。
会社帰りらしい男性だ。
「こんにちは」
席に座るとロンが近づく。
尻尾ブンブン。
「犬もいるんだ」
男性が笑う。
その時。
女性が鈴をまた鳴らした。
チリン。
店内がさらに穏やかな空気になる。
男性が言った。
「……なんか落ち着く」
サトルは心の中で笑った。
(そりゃそうだ)
この鈴は異世界の品。
森猫族の村で使われる、心を落ち着ける鈴だ。
猫も人もリラックスする。
女性が聞く。
「これ売ってるんですか?」
「売ってる」
「欲しい!」
即決だった。
みどりが笑う。
「ありがとうございます」
その時。
男性が棚を見ていた。
「この袋は?」
香り袋だ。
サトルが説明する。
「香りの雑貨」
男性が匂いを嗅ぐ。
「いい匂い」
ほのかな森の香り。
これは魔導士族が作った香り袋。
精神を落ち着かせる効果がある。
「これも買おうかな」
その時。
トラが急に起きた。
原因は――
干し魚。
蜥蜴人族が作った干し魚の匂いだ。
トラが棚の前で座る。
完全に狙っている。
チビも来た。
きなも来た。
ジルまで来た。
ロンまで来た。
みどりが言う。
「大人気」
女性が笑う。
「猫が並んでる!」
サトルは干し魚を一枚出した。
トラに渡す。
トラは――
一瞬で食べた。
「早!」
女性たちが笑う。
チビも食べる。
きなも食べる。
ジルは少し怖がりながら食べる。
ロンは「自分も」と座る。
「ロンはダメ」
ロンはしょんぼりした。
男性が言った。
「それも売ってます?」
「売ってる」
「じゃあ猫用に買おう」
こうして。
鈴。
香り袋。
干し魚。
次々売れていった。
みどりが小声で言う。
「大ヒットですね」
サトルはコーヒーを飲みながら言った。
「仕入れ成功」
棚の上ではイチが言った。
「にゃ」
まるで「当然だ」と言っているようだった。
その頃――
異世界の市場では。
森猫族が言っていた。
「サトルの店なら売れる!」
魔導士族も頷く。
「人の心にも効くから」
蜥蜴人族は笑った。
「干し魚もっと作るか」
そして地球では――
**森のカフェしっぽっぽ**の猫たちが、干し魚を狙って並んでいた。
サトルは小さくつぶやく。
「次は何仕入れるかな」
今日もこの店には、
猫と異世界の商品と、
少しの笑いがあるのだった。




