表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
森のカフェしっぽっぽ  作者: 森のカフェしっぽっぽ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/30

第24話 青石のお守り

 数日後の午後。


 **森のカフェしっぽっぽ**は、穏やかな空気に包まれていた。


 窓からは柔らかい光。

 コーヒーの香り。

 そして猫の寝息。


 棚の上ではイチがいつものように店長顔で座っている。


「にゃ」


 ソファではきなが丸くなっている。


「にゃー」


 トラは床でゴロン。


 チビは通路のど真ん中で寝ている。


 完全に邪魔である。


 カーテンの影にはジル。


 相変わらず少し臆病。


「にゃ……」


 入口では犬のロンが尻尾を振っていた。


 その時。


 カラン。


 ドアベルが鳴った。


「いらっしゃいませー」


 みどりが元気に迎える。


 入ってきたのは――


「こんにちは」


 あの男性だった。


 数日前に来た客。


 みどりが気づく。


「あ、この前の!」


 男性は少し笑った。


「また来ちゃいました」


 その声を聞いて、サトルがカウンターから顔を出した。


「久しぶり」


「まだ数日ですけどね」


 男性は窓際の席に座った。


 すると猫たちが動き始める。


 まず来たのはトラ。


 トコトコ歩いて――


 ゴロン。


 また腹を見せている。


 男性は笑った。


「覚えてくれてるのかな」


 その時。


 チビがジャンプ。


 膝の上に着地。


「おっと」


 丸くなって寝始めた。


 完全に前回と同じだ。


 サトルがコーヒーを持ってきた。


「どうぞ」


「ありがとうございます」


 男性はコーヒーを受け取りながら言った。


「実は、ちょっと報告があって」


「報告?」


 男性はポケットから小さな袋を出した。


 中には――


 あの青い石。


 サトルが渡したお守りだ。


「まだ持ってるんだ」


「はい」


 男性は少し照れながら言った。


「仕事中、机に置いてるんです」


「ほう」


「見ると落ち着くんですよ」


 男性は続けた。


「それで……」


 少し言いにくそうにする。


「上司とちゃんと話してみたんです」


 サトルは静かに聞いている。


「自分の考えとか、困ってることとか」


「うん」


「そしたら……」


 男性は笑った。


「意外とちゃんと聞いてくれて」


 みどりも聞いていた。


「よかったですね!」


「はい」


 男性は言った。


「なんか、勝手に怖がってただけだったみたいです」


 その時。


 カーテンの影からジルが出てきた。


 そっと男性の横に座る。


 男性が笑った。


「この子も同じですね」


「ジルか」


「怖いけど来る」


 サトルは頷いた。


「それでいい」


 男性は青い石を見た。


「これのおかげかもしれません」


 サトルは肩をすくめた。


「猫の力」


 その時。


 ロンがやってきた。


 男性の足元で座る。


 尻尾ブンブン。


「ロンも覚えてるのかな」


 男性が撫でると、ロンは嬉しそうに目を細めた。


 しばらく店は静かだった。


 猫のゴロゴロ音だけが響く。


 男性は言った。


「実はもう一つ相談があって」


「なんだ」


「同僚が、ちょっと落ち込んでて」


「うん」


「この店、紹介してもいいですか?」


 みどりが笑った。


「もちろん!」


 サトルも頷いた。


「猫は多い」


「それがいいんです」


 男性は笑った。


 その時。


 棚からイチが降りてきた。


 トコトコ歩いてテーブルに飛び乗る。


「にゃ」


 男性が笑う。


「この子が店長ですよね」


「そう」


 イチは堂々としている。


 まるで「当然だ」と言っているようだ。


 男性は青い石をポケットにしまった。


「また来ます」


「どうぞ」


 帰り際。


 男性は振り返った。


「ここ、不思議な店ですね」


 サトルが言う。


「普通の猫カフェ」


 みどりが笑う。


「ちょっとだけ相談も聞きます」


 男性は言った。


「あと……」


「うん?」


「なんか安心する」


 サトルは軽く手を振った。


「猫がいるから」


 ドアが閉まる。


 カラン。


 店内に静けさが戻る。


 みどりが言った。


「いい話でしたね」


 サトルはコーヒーを飲む。


「そうだな」


 棚の上でイチが言う。


「にゃ」


 きなは寝ている。


 トラも寝ている。


 チビも寝ている。


 ジルはまたカーテンの影。


 ロンは入口で大の字。


 サトルは小さく呟いた。


「青石、もう少し持ってくるか」


 それは異世界の森で採れる、小さな魔力石。


 森猫族(フォレストキャット)の村でよく使われる、心を落ち着ける石だ。


 もちろん、地球の人にはただの石に見える。


 だが。


 ほんの少しだけ。


 心を軽くする力がある。


 サトルは地下への扉をちらっと見た。


「今度仕入れてくるか」


 **森のカフェしっぽっぽ**には今日も、

 猫と、少しの不思議があるのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ