第17話 光祭り暴走
夜の異世界市場は、いつもよりずっと明るかった。
原因はもちろん――**サトルの懐中電灯**である。
石畳の広場では、あちこちで光が揺れていた。
「すごい! もう一回やる!」
元気に走り回っているのは、森猫族のミャルだ。
懐中電灯を振り回しながら叫んでいる。
「光剣ごっこだ!」
ミャルの相手をしているのは、兎人族の少年たちだった。
「いくぞ!」
「うおー!」
ピカピカと光がぶつかる。
完全に**チャンバラ遊び**である。
その様子を遠くから見ていたのが、魔導士族のアルト。
腕を組み、真剣な顔をしている。
「これは興味深い」
隣にいた鉱人族のバルドが聞く。
「何がだ?」
「魔力を使わず光を作る技術」
「ただの道具だろ」
「だが便利だ」
アルトは懐中電灯を観察している。
「この“電池”という仕組み……」
その横では――
牛鬼族のガルドが光を地面に向けていた。
「夜でも肉が見える」
ガルドは満足そうにうなずく。
「狩りが楽になる」
その時だった。
「サトルー!」
ミャルが走ってくる。
「なんだ」
「もっと光るのない?」
「ある」
サトルは段ボールを開けた。
取り出したのは――
**LEDランタン**。
「おお?」
ミャルが目を輝かせる。
スイッチを押す。
パチ。
ふわっと柔らかい光が広がる。
「きれい……」
ミャルが呟いた。
周りにいた森人族たちも近づく。
「これは良い灯り」
「森でも使えそう」
森人族の女性が言った。
「火を使わない灯り……安全」
その言葉を聞いた瞬間、蜥蜴人族の商人が手を上げた。
「十個買う」
「早いな」
「洞窟探索に使える」
その後ろでは――
狼騎士族のレオガルドが頭を抱えていた。
「サトル」
「なんだ」
「嫌な予感がする」
「なぜ」
レオガルドは広場を指さす。
そこでは――
鬼人族の戦士たちがランタンを持っていた。
「筋肉!!」
「光!!」
「強そう!!」
そして叫ぶ。
「祭りだ!!」
レオガルドが言う。
「ほら始まった」
次の瞬間。
市場の中央で太鼓が鳴った。
ドンドン!
鉱人族が太鼓を叩いている。
「光祭りだー!」
歓声が上がる。
森猫族
兎人族
蜥蜴人族
森人族
鬼人族
全員がランタンを持っている。
市場が光の海になった。
ミャルが叫ぶ。
「きれーい!」
アルトが真顔で言う。
「文化が生まれた」
サトルが腕を組む。
「またか」
すると突然。
「問題だー!!」
レオガルドが走る。
「サトル!」
「今度は何」
「城から苦情が来た!」
「城?」
遠くに見える王城。
その窓から光が見える。
レオガルドが言った。
「光が眩しくて眠れないそうだ」
サトルは空を見た。
市場は完全に昼のようだった。
「明るすぎるな」
ミャルが言う。
「楽しい!」
アルトが言う。
「文明の進歩」
ガルドが言う。
「肉が見える」
レオガルドが言う。
「城が怒る」
その時。
静かな声が響いた。
「面白い」
全員が振り向く。
そこにいたのは――
白い衣の男。
天人族だった。
市場でもほとんど見ない種族である。
ミャルが小声で言う。
「天人族……」
アルトが驚く。
「珍しい」
天人族の男はランタンを見て言った。
「この光……」
そしてサトルを見る。
「あなたが作った?」
「いや、地上の商品」
「地上?」
男は微笑んだ。
「面白い世界だ」
サトルは肩をすくめた。
「便利な物が多いだけ」
男はランタンを一つ買った。
「また来る」
そう言って去っていく。
ミャルが言う。
「なんかすごい人だった」
アルトもうなずく。
「天人族は滅多に姿を見せない」
レオガルドが言う。
「サトル」
「なんだ」
「お前、世界を変えてる気がする」
サトルは笑った。
「ただの猫カフェ店主だ」
その頃――
地上の**森のカフェしっぽっぽ**。
みどりが猫たちに言っていた。
「サトルさん、また騒ぎ起こしてそう」
イチが言う。
「にゃ」
きなが言う。
「にゃー」
ジルはカーテンの影。
トラは爆睡。
チビは通路封鎖。
ロンは大の字。
地下ではサトルがメモを書いていた。
次の商品。
・ソーラーライト
・キャンプランタン
・イルミネーションライト
サトルはつぶやく。
「次はもっと明るくなるな」
その瞬間、市場が叫んだ。
「光祭りだーー!!」
異世界の夜は――
ますます明るくなっていった。




