表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
森のカフェしっぽっぽ  作者: 森のカフェしっぽっぽ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/30

第12話 異界注文

 森のカフェしっぽっぽの朝は、いつものように静かに始まった。


 カウンターの上ではイチが丸くなり、王様のような顔で店内を見渡している。

 窓際のクッションにはきなが寝転がり、微動だにしない。

 トラは朝から元気で、床を歩くチビを追いかけて遊び始めている。さな

 ジルは棚の奥から顔だけ出して、外の様子をうかがっている。


 入口では犬のロンが伸びをして――


 また寝た。


 「……平和だな」は


 サトルはコーヒーを一口飲んだ。


 みどりさんがカップを拭きながら言う。


 「昨日は魔導ねこ玉が全部売れましたね」


 サトルはうなずく。


 「予想外だった」


 異世界の商品はたまに大ヒットする。


 ただし。


 理由はだいたい猫である。


 サトルは地下の在庫を思い出していた。


 魔導ランタンは残り少ない。

 保温カップも残りわずか。

 魔導ねこ玉は――


 完全完売。


 「追加仕入れしないとな」


 サトルは立ち上がった。


 「ちょっと地下行ってくる」



異世界の市場


 地下倉庫の奥。


 木箱の並ぶ倉庫のさらに奥に、小さな扉がある。


 そこが――


 異世界との通路。


 サトルだけが通れる。


 サトルは慣れた足取りで扉を開いた。


 空気が変わる。


 向こう側は石造りの通路。


 そして市場の声。


 異世界の商人たちが行き交う。


 蜥蜴人族(リザードマン)

 鉱人族(ドワーフ)

 森猫族(フォレストキャット)

 魔導士族(メイジ)


 様々な種族が商売をしている。


 サトルはいつもの店へ向かった。



商人ガルド


 露店の前に立っているのは、知り合いの商人。


 鱗のある体。


 鋭い目。


 蜥蜴人族(リザードマン)のガルドだ。


 ガルドはサトルを見ると笑った。


 「来たか、人間」


 「来た」


 サトルは言う。


 「魔導ねこ玉、全部売れた」


 ガルドは目を丸くする。


 「全部?」


 「全部」


 ガルドは腕を組む。


 「人間界は変わった市場だ」


 サトルは肩をすくめた。


 「猫が強い」


 ガルドはしばらく考え――


 「では追加を出そう」



新しい注文


 ガルドは箱を出す。


 ねこ玉。


 大量。


 サトルはうなずく。


 「助かる」


 その時。


 別の声がした。


 「人間の商人か?」


 振り向くと、小柄な人物。


 ひげ。


 筋肉質。


 鉱人族(ドワーフ)だ。


 名前はバルドン。


 鍛冶職人である。


 バルドンは言った。


 「変わった市場で売っていると聞いた」


 サトルは笑う。


 「猫カフェだ」


 バルドンは首をかしげる。


 「猫?」


 説明が難しい。



ドワーフの提案


 バルドンは袋を出した。


 中から取り出したのは――


 小さな鈴。


 だがただの鈴ではない。


 金属が魔力で光っている。


 サトルは聞く。


 「これは?」


 バルドンは胸を張る。


 「魔導鈴だ」


 「何ができる?」


 バルドンは言う。


 「鳴らすと落ち着く音が出る」


 サトルは思う。


 猫に良さそう。



実験


 サトルは鈴を鳴らす。


 ちりん。


 柔らかい音。


 市場の空気が一瞬静かになる。


 近くの森猫族(フォレストキャット)が耳を動かす。


 そして。


 ゴロゴロ喉を鳴らす。


 サトルは確信した。


 「買う」



魔導士の商品


 さらに奥から声。


 「その市場、面白そうだ」


 現れたのはローブの人物。


 魔導士族(メイジ)


 名はセレナ。


 彼女は箱を差し出した。


 中には――


 光る羽根。


 サトルは聞く。


 「これ何?」


 セレナは言う。


 「浮遊羽根」


 「用途は?」


 「飾り」


 サトルは考える。


 猫。


 羽根。


 ……危険な組み合わせ。


 だが。


 「買う」



地上へ


 サトルは箱を抱えて地下へ戻った。


 倉庫。


 そして階段。


 一階へ。


 みどりさんが言う。


 「仕入れですか?」


 「大当たりの予感」


 箱を開ける。


 ねこ玉。


 魔導鈴。


 浮遊羽根。


 猫たちが近づく。



猫の反応


 まず鈴。


 ちりん。


 トラが止まる。


 きなが目を開ける。


 イチが耳を動かす。


 そして。


 全員ゴロゴロ喉を鳴らす。


 みどりさんが言う。


 「すごい」


 サトルもうなずく。


 「ヒット確定」



羽根の結果


 次。


 浮遊羽根。


 空中にふわふわ。


 チビの目が光る。


 トラがジャンプ。


 イチも珍しく立つ。


 猫大興奮。


 ジルは棚の奥へダッシュ。


 ロンは寝ている。



新商品決定


 みどりさんが言う。


 「商品名どうします?」


 サトルは考える。


 鈴。


 羽根。


 猫。


 そして言う。


 「魔導にゃん鈴」


 「羽根は?」


 サトルは言う。


 「魔導ふわ羽」


 みどりさんが笑う。


 「売れますね」




 店が閉まる。


 猫たちは寝ている。


 サトルは椅子に座る。


 コーヒーを飲む。


 「また商品増えたな」


 みどりさんが言う。


 「異世界通販ですね」


 その瞬間。


 地下からまたぽんという音。


 サトルは天井を見る。


 「……今度は誰だ」


 森のカフェしっぽっぽ。


 猫カフェであり。


 異世界貿易店であり。


 そして今――


 異世界の商人たちが注目し始めた市場になっていた。


 ただし。


 猫が主役である。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ