第11話 魔導新商品
森のカフェしっぽっぽの朝。
店内にはコーヒーの香りと猫のあくびが漂っていた。
イチはカウンターの上で王様のように座っている。
きなはクッションの上で丸まり、すでに夢の中。
トラは窓際で外を見ながら尻尾をゆらゆら。
チビは床のど真ん中で堂々と通行妨害。
ジルは棚の奥から慎重に様子をうかがっている。
そして入口には――
犬のロン。
相変わらず寝ている。
「……平和だな」
サトルはコーヒーを飲みながら言った。
みどりさんが笑う。
「昨日まで魔導雑貨がバズってましたからね」
そう。
魔導ランタンのSNS投稿が広まり、しっぽっぽはちょっとした話題になっている。
だが今のところ店内は普通の猫カフェだ。
――今のところは。
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地下の異変
その時だった。
ぽん。
小さな音が地下から聞こえた。
サトルは止まる。
みどりさんも気づく。
「……聞こえました?」
サトルは静かに立ち上がる。
「聞こえた」
この音は嫌な予感しかしない。
地下の倉庫。
つまり――
異世界の商品。
サトルはゆっくり階段を降りた。
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謎の箱
地下倉庫。
木箱が並んでいる。
魔導ランタンの箱。
保温カップの箱。
スプーンの箱。
そして。
見覚えのない箱。
サトルは眉をひそめる。
「……こんなの仕入れたか?」
箱の表面には異世界の文字。
サトルはため息をつく。
「絶対ガルドだ」
蜥蜴人族の商人。
頼んでない物を混ぜるのが得意である。
サトルは箱を開けた。
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新商品
中にあったのは――
小さな丸い玉。
手のひらサイズ。
透明。
中で光がゆっくり動いている。
サトルはつぶやく。
「……何これ」
説明書。
異世界文字。
読めない。
サトルは玉を持ち上げる。
その瞬間。
ぽん。
光が膨らむ。
サトルは慌てる。
「やばい」
玉が――
ふわっと浮いた。
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浮遊玉
玉は空中に浮かび。
ゆっくり回転する。
サトルは言う。
「……またか」
魔導商品はだいたい浮く。
異世界では普通らしい。
問題は――
猫がいることだ。
サトルは急いで階段を登る。
「触るなよ……」
願いはだいたい叶わない。
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猫の発見
一階。
玉がふわっと現れる。
チビが見つける。
目が輝く。
サトルが叫ぶ。
「だめぇぇぇ!」
遅い。
チビがジャンプ。
ぺし。
玉が回転。
ぴかー。
店内がキラキラする。
みどりさんが笑う。
「綺麗」
サトルは頭を抱える。
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猫大興奮
トラ参戦。
ジャンプ。
玉回転。
きな起きる。
ふわふわ光。
イチは観察。
ジルは――
パニック。
棚の奥にダッシュ。
臆病猫である。
ロンは寝ている。
さすがである。
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お客さん到来
ちりん。
ドアベル。
新しい客が入る。
店内は――
光る玉。
猫ジャンプ。
サトル叫ぶ。
客は言う。
「すごい」
サトルは固まる。
「……え?」
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意外な反応
客は笑う。
「猫のおもちゃですか?」
みどりさんが即答。
「新商品です」
サトルは見る。
みどりさん。
営業の天才である。
客は言う。
「欲しいかも」
サトルは考える。
……売れる?
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実演販売
サトルは玉を持つ。
スイッチらしき部分。
押す。
玉が浮く。
柔らかい光。
猫が追う。
客が笑う。
写真。
動画。
SNS。
サトルの脳が計算する。
これは売れる。
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新商品決定
夕方。
玉は完売。
猫のおもちゃとして大人気。
みどりさんが言う。
「商品名どうします?」
サトルは考える。
猫がジャンプ。
光る玉。
笑う客。
そして言う。
「魔導ねこ玉」
みどりさんがうなずく。
「完璧です」
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異世界へ
夜。
サトルは地下へ。
市場側。
ガルドがいる。
蜥蜴人族。
サトルは言う。
「玉、追加」
ガルドが笑う。
「売れたか」
サトルは肩をすくめる。
「猫が売った」
ガルドは不思議そうに言う。
「猫とは偉大な生き物だな」
それは間違いない。
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平和な夜
一階。
猫たちは寝ている。
イチ。
きな。
トラ。
チビ。
ジル。
ロン。
サトルは椅子に座る。
コーヒーを飲む。
みどりさんが言う。
「また人気商品ですね」
サトルは笑う。
「猫カフェだからな」
その瞬間。
地下からまたぽんという音。
サトルは天井を見る。
「……次は何だ」
森のカフェしっぽっぽ。
猫カフェであり。
異世界貿易店であり。
そして今――
魔導ペット用品店にもなり始めていた。
ただし。
トラブル付きである。




