第10話: 天才科学者
激戦を潜り抜け、マキシマムが辿り着いたのは切り立った崖の影に隠された秘密基地。
そこでカイを待ち受けていたのは、敵か味方か――。
連合軍を追放された天才科学者、ドクター・マヤ。
彼女の登場により、白銀の機体「メモリア」に隠された、あまりにも残酷で美しすぎる真実が明かされます。
カイの身体に起きている異変、そして「神の座」という言葉の真意とは?
物語が大きく動き出す新章突入の第11話、ぜひお楽しみください。
マキシマムは激しい噴射音とともに、切り立った崖の影に隠された秘密ドックへと滑り込んだ。
そこは反世界政府軍の最前線基地。
ハッチが開くと同時に、油の匂いと湿った潮風がカイの鼻を突く。
タラップを真っ先に駆け下りたアパッチが、大声で叫んだ。
「おい! 無事か! 戻ったぞ、ドクター・マーヤ!」
奥から歩み寄ってきたのは、ゆったりとした白衣を羽織った、おっとりとした雰囲気の女性だった。
長い髪を無造作に束ね、眠たげな瞳で微笑んでいる。
「あらあら、おかえりなさい。アパッチちゃん、顔が煤だらけよ? 怪我はないかしら」
「『ちゃん』付けで呼ぶなって言ってるだろ! それより電話で話した、こいつを見てくれ!」
アパッチが顔を赤くして毒突くが、マーヤと呼ばれた女性は気に留める様子もない。
彼女こそ、かつて連合軍で核コアのレプリカ開発を主導しながら、その「危険すぎる性格」ゆえに追放、指名手配犯だが、天才科学者だった。
マーヤの視線が、白銀の機体「メモリア」に注がれる。その瞬間、彼女の穏やかな空気が一変した。
「……ふふ、あはは! ついに、ついに私の『可愛い失敗作』がパイロットと共鳴したのね!」
ガチガチと、彼女が持っていたPCの端を爪で叩く。
マーヤは極度の二重人格だった。
研究や解析のスイッチが入ると、聖母のような慈愛は消え去り、冷酷なマッドサイエンティストの顔が剥き出しになる。
「カイくん、だっけ? 任せなさい。そのコアが吐き出したナノマシンの組成を、一滴残らずしゃぶり尽くしてあげるから……!」
「……っ、何なんだ、この人は……!?」
メモリアを庇う、カイは、マーヤの豹変ぶりに圧倒され、思わず後ずさりする。
禁断の解析
マーヤはメモリアの装甲に愛おしそうに触れ、モニターに表示された
戦闘データの数々と――【デッド・エンド・パレード】
の残像記録を凝視した。
「私が作ったレプリカは、ただの『模造品』だった。でも、この子がユナという意識を宿し、君という触媒を得たことで、空間書き換え(リライト)の領域にまで達した……。
素晴らしいわ、カイ君の神経系はもう、半分以上メモリアに食われているけれどね」
「食われてる……? 一体どういうことだ!」
リング「あれには、母親の名の…」
リングが割って入るが、マヤは狂気を含んだ笑みを浮かべるだけだった。
「あ〜ら、銀河は無限の可能性が秘めてるの〜?
何処かで、ブラックホールが時空転移して…か?僕が転移したか…かな?」
それより、連合軍が追ってくる理由?
決まっているわ。
この機体は『兵器』じゃない。
神の座へ至るための『鍵』なのよ。
……さあ、アパッチちゃん、すぐに整備に取り掛かるわよ。増幅器を接続して、この子をもっと『自由』にしてあげなきゃ」
「……チッ、相変わらず話を聞きゃしねぇ。
だが、こいつの腕は確かだ。カイ、今はマーヤに従え、連合の追撃が来る前に、メモリアを完全な状態にするぞ」
アパッチ「安心しな、リング、お前のバルジーナも強化できるぞ!」
リング「カイは…昔の人?」
基地の奥深く。
薄暗い照明の下、メモリアの背中から再び蒸気が噴き出し、マヤの手によって禁断の調整が始まろうとしていた。
第10話をお読みいただき、ありがとうございます!
マーヤの狂気で壊れそうなので、ブックマ、評価お願いします。
ついに登場しました、本作きってのクセ強キャラ、ドクター・マヤ。
おっとりした「聖母」の顔と、研究に憑りつかれた「狂気」の顔……。この二面性が、今後のメモリアの調整にどう影響していくのか、書いている私もワクワクしています。
特にマヤが口にした「カイの神経系が食われている」という一節。
ただのロボットSFではない、本作の「代償」の部分が少しずつ見えてきました。リングが抱く「カイは昔の人?」という疑問も、今後の重要な伏線になっていきます。
次回、メモリアの禁断の調整が完了。
果たしてカイは、その力を制御できるのか?




