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ちょっとしている

 学校をサボるのはある意味特権で優越感がある。催眠災害でサボるのは心情的にはサボりとは言いたくないけどこれは間違いなくサボりだって言える。だって4人で学校を抜け出してクレープを食べに来ているんだから。

 食べている3人を見ると私は幸せ者だって心から思う。否穂(いなほ)は陸上部に所属している。運動神経がよくていつも元気で私の事を引っ張てくれる。虚雨(きょう)は基本的に一人で本を読んでいる事が多い。普段は誰とも積極的に関わろうとしないけど誰よりも優しい。枯花(かれか)は誰とでも仲良くなれて流行に敏感で明るい。それは周りの人を良く見ているからで私が悩んだり悲しんだりしたらすぐに気がついてくれる。彼女達がいなければ私はどうなっていたんだろう。何度もそう思う。(あい)恋理(れんり)がいなくなった後私は世界から置いてお行かれたように感じていた。催眠災害も起きて嫌なものを見過ぎて全てがどうでもよくなりかけた事もあった。それでも何とか今生きていてよかったって思えるのは彼女達のおかげ。こんな彼女達が催眠なんて理不尽な物のせいで不幸になる事がないようにしたい。その為に頑張ろう。私は改めてそう思った。


 私の目に宿っている催眠の力はとても強力で一歩間違えれば簡単に世界を狂わせることが出来てしまう。催眠には強さがある。弱い物だと完全に操る事は出来なくて精々パシリにするくらいしか出来ない。強い物だと言剥(ことはぎ)みたいに人を完全に操る事が出来る。催眠ツールで性能が違うのは多分だけど恋理が実験で色々作っていたから。私の目にある完成品は他の物に比べて段違いで強い。他のツールが数人しか操れないのに対して私のは生きているだけで勝手に掛かって私の意志一つでいつでも操る事が出来る。だから私は自分の力に幾つか制限を掛けて使用している。だって寝ぼけて間違って能力使って朝起きた時に世界が滅茶苦茶になっていたなんて絶対嫌だし。

 一つ目は目にサインを出す事。あのよくわからない模様。何の意味があるのか私には理解できないけど多分意味があるんだと思う。あれは別に出さなくても催眠を掛けられるけど、自分が使うぞって意識できるように敢えて出すようにしている。…まあ変な反応される事多いから最近はあんまりやってないけど。次に命令を口に出す事。思うだけでも掛けられるけどそんな事怖すぎて出来ない。他にもいくつか自分に催眠を掛けて制限を掛けている。まあ自分に掛けている催眠だからいつ無意識に解いてもおかしくないから怖いんだけど。

 まあ取りあえず私は催眠について自分が出来る範囲で慎重に取り扱っているし色々気をつけているんだよね。

「やっぱさあ、眼の模様もっとかわいい風に変えられないかなあ。ハートとかさ。あれカッコいいけどちょっとごちゃごちゃしすぎな気がするんだよね」

「まあもっとシンプルな方がいいとは思うなあ」

 そんな風にいじらないで欲しいなあ。放課後否穂の家で枯花と否穂とテスト勉強をしている時、勉強に飽きた二人がいきなりもっとスマートに催眠を掛けられないかという議論を始めたのだ。ちなみにクレープ食べた後はちゃんと学校に戻って授業を受けました。テスト前だしね。枯花は泣き叫びながら拒否していたけど。そこまで嫌なの?

「無理だからね!あれどういう仕組みで目に模様ついているのか知らないし」

「可愛くするのが無理ならいっそもっと格好つければ?」

「決め台詞とかどう?」

「それいいね」

「やだよ!そんなの恥ずかしいし!」

「「えー」」

「何で二人してそんな反応なの!おかしいでしょ!」

「私達はね、催眠使う度に辛そうな悲愛(かなえ)の為を思っているんだよ」

「そうそう、悲愛が少しでも楽しく催眠を使えるように色々考えているんだよ」

「嘘でしょ!絶対楽しんでいるでしょ!」

「そうは言うけどさ。悲愛だって目に模様だす時わざわざ手をかざしているじゃん。あれカッコつけているんじゃないの?」

「違うからね!あれは自分なりのルーティンで催眠使うぞって意識を変えるための物だからね!」

「それは知っているけどさ、あれやる時、少しどや顔になっているよ」

「そんな事ないでしょ」

「なってるよね」

「ねー」

「え?本当に?なってないよね?ね?」

「さあどうかなあ」

「知りたければこっちの要求に答えて貰おうか」

「それおかしいよね!」

「さあてどうする?かーなーえー」

「盛り上がっているけど何の話?」

「あ、虚雨!丁度いい所に来た!助けて」

 珍しくテスト勉強に参加すると言っていた虚雨は後から行くねと途中から参加してきた。多分私が午前中の事でまいっているから気を使ってくれたんだと思う。

 虚雨が買ってきてくれた差し入れのドーナッツを食べながら(今日甘い物食べ過ぎで太りそうで怖い)さっきの話をする事数分。

「いや悲愛は今のままで十分カッコいいよ。いつも人助けしているしね」

「…ありがとう」

「後から出てきていいとこ取りはズルくない?悲愛も何照れてんのよ」

「二人してからかうからいけないんだよ」

「それはそれとしてドヤ顔はしてないよね?」

「五月蠅い、成績優秀者共」

「そうだそうだ」

「は、私達のおかげで赤点にならない奴らが何か言っているね」

「私達じゃなくて悲愛で・す!虚雨が勉強教えてくれたこと殆どないじゃん」

「普段から勉強してない方が悪いんだよ」

「前から思っていたんだけど虚雨って勉強している?授業もちゃんと受けているように見えないんだけど」

「え?まあ聞いていれば憶えられるし」

「え、何それズルい」

「どうやっているのそれ」

「私催眠災害に巻き込まれても頑張って勉強しているのにそれは卑怯」

「あれ、何で悲愛まで敵になっているのかなあ?」

「こうなれば三人で虚雨を妨害してテストの点を下げるよ。行くよ否穂、悲愛」

「わかった」

「う、うん」

「いやおかしいでしょ。今日テスト勉強しに来ているんでしょ。そんな暇あれば勉強しなよ」

「それは確かにそう」

「悲愛寝返ったな!」

「裏切りだ」

 そう言って私に向かって来る二人とわざとらしい高笑いをしている虚雨を見ながら私は自然と笑っていた。ああこの三人と居られて幸せだって。考えてみたら催眠なんて危険な物を持っていても変わらず接してくれていじってくれるのは三人だけだしね。

 …そう言えば結局誰も答えてくれてないけど私ドヤ顔してないよね?

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