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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

声劇台本

【声劇】勇者トンカラトン

作者: 緑野タニシ
掲載日:2025/12/27

声劇台本


登場人物

トンカラトン

女神

魔王

その他モブ

ナレーター

ナ「夕暮れの小道、少年が何となく湧いた好奇心で普段通る学校の帰り道とは違うその小道を歩いていると、それは現れた」


自転車の音


ト「トン、トン、トンカラトン」


ナ「自転車に乗って不気味な歌を歌う全身を包帯でぐるぐる巻きにされた…怪人。怪人の名はトンカラトン。そいつは背中に背負った日本刀を引き抜き、少年に向けてこう言った」


ト「トンカラトンと言(トラックのクラクションの音)」グチャ


ナ「トンカラトンは言い終える前に、前方不注意のトラックによって轢かれてしまった。

しかし、トンカラトンの…果てしなく壮絶な旅路は、これから始まるのだった」


女神「勇者様…お目覚めください…勇者様」


ナ「どこまでも透き通るような青空の下、気持ちのいい風が吹く草原に、美しい女神と自転車と共に横たわるトンカラトンがいた」


女神「ああよかった、転生の儀は上手く行ったみたいです。勇者様、あなたには魔王を倒していただくためにこの世界へーー」


ト「トンカラトンと言え」


女神「えっ、どうしたのですか勇者さ」


ト「おい、トンカラトンと言え」シャキン(刀を抜く音)


女神「なっ…いくら勇者様といえど、女神である私に刃物を向けるとは何たる狼藉…いいですか?私は女神でとーっても偉(斬撃の音)……い?」バタッ(倒れる音)


ナ「こいつは怪人トンカラトン。道行く人に『トンカラトン』と言うように強要し、従えば満足して帰っていくが、もし逆らえば問答無用で切り捨てる。その正体には様々な噂があるものの、本当のことは誰も知らず、妖怪ではないかとも言われている。ましてや、女神の言うような勇者であるはずはなかった」


ト(女神)「トン、トン、トンカラトン」


ナ「そして、トンカラトンに斬られたが最後。どこからともなく現れる包帯に全身をぐるぐる巻きにされ、同じトンカラトンにされてしまうのである」


ト「おい、お前の自転車を用意しろ」


ト(女神)「自転車とは何ですか」


ト「この乗り物のことだ(チリンチリン)俺達はこれに乗る」


ト(女神)「(魔法みたいな効果音)魔法で作りました。だけど乗り方がわかりません」


ト「…教えてやる」


ナ「そうして、日本刀を背負ったトンカラトンと女神の杖を持ったトンカラトンの2体は、まずは町を目指したのであった」


魔物「ケケーッ!」


ナ「道中、魔物と遭遇するトンカラトン」


ト「トンカラトンと言え」


ト(女神)「トンカラトンと言いなさい」


魔物「ケケ?」


ト「おい、トンカラトンと言え」


ト(女神)「トンカラトンと言いなさい(怒)」


魔物「ケ…ケケ(恐怖)」ザシュ バーン


ナ「人の言葉がわからない魔物に対してはまさに問答無用の一閃、ダメ押しの魔法攻撃。2体のトンカラトンの行手を阻むことができる者は誰もいませんでした。…そして」


(大勢の自転車の音)


町人A「おい、あいつら何なんだ?」


町人B「魔物よ!きっとそうだわ!あんな奇妙な鉄の馬に乗ってるんですもの!」


町人C「いや、あいつが持ってるのは女神様の杖だ!きっと勇者の一行だよ!」


ナ「町の人々が大騒ぎする中、いつの間にか大人数になったトンカラトン達は、手当たり次第に例の言葉をぶつけていく」


ト「トンカラトンと言え」


町人A「何だこいつ…気持ちわり、無視無視…(グサッ)ぐへっ!」


ト(女神)「トンカラトンと言いなさい」


町人B「何!?近付かないで!キャッ(バーン)」


ト(魔物)「トンカラトントイエ」


町人C「ん、何て?とんからとん?」


ト(魔物)「ヨシ」


ナ「そうして、町を出る頃にはトンカラトン達の数は倍以上になっていた。しかし、そんなトンカラトン達の横暴が見過ごされるはずもなく、果敢にもトンカラトン達に立ち向かう1人の戦士が現れた」


戦「トゥッ!セイヤァ!貴様らァ!これ以上の殺戮は俺が許さない!"トンカラトン"だか何だか知らないがまとめてブッザシュ


ナ「不幸にも、戦士はトンカラトンの生態を知らなかった。知る由もなかった」


ト「トンカラトンは俺が言えと言ってから言うんだ。勝手に口に出す奴は敵だ」


戦「不意打ちとは卑怯…な」


(自転車の音)


ト(全員)「トン、トン、トンカラトン、トン、トン、トンカラトン」


ナ「自転車に乗ったトンカラトンの大行列は野を越え山を越えダンジョンを越え、やがて魔王の城へ辿り着いた」


バタン(扉が開く音)


ト(全員)「トンカラトンと言え(言いなさい)!」


チリンチリン(自転車のベルの音)

(色々な攻撃音)

(魔物達の悲鳴)


魔王「ええい静まれい!勇者にしては野蛮な連中だ。我が城でこれ以上の狼藉は見過ごせん、覚悟しろ!」


ト「トンカラトンと言え」


魔王「我に命令するのか?ミイラごときが身の程を知れ!!」


ナ「遂に現れた魔王は今までの魔物とは一味も二味も違う、圧倒的な強さを誇っていた。次々と数を減らしていくトンカラトン達。それでもトンカラトン達は戦いをやめようとはしなかった」


(魔王の攻撃音)


魔王「消え去れ!我が魔力、我が波動をこれだけ浴びてもまだ立ち向かうか!」


ト「トンカラトンと言え」


ト(魔物)「トンカラトントイエ」


ト(戦士)「トゥアッ!セイヤ!ヌウオオオ!トンカラトンと言えエエエエ!!」


魔王「うわ、一人うるせっ!」


ナ「トンカラトン達の疲れ知らずの猛攻はいつまでも続いた。やがて、とうとう魔王は片膝を着き、屈辱に顔を歪めながら、例の言葉を発してしまうのであった」


魔王「わ、わかった…言えばいいんだろう!言うよ、それでいいんだろ!」


ト「トンカラトンと言え」


魔王「だからわかったって!…ええい、トンカラトン!(バーン)……え?」


ナ「瞬間、魔王の半身が吹き飛んだ」


ト(女神)「私はトンカラトンと言えと言っていません。勝手に口に出す方は敵です」


魔王「そんな…どうしろと…(バタッ)」


ナ「やがて、魔王も例外ではなく、これまでトンカラトンになった者と同じように、どこからともなく現れた包帯に身を包まれ…」


ト(魔王)「トン、トン、トンカラトン」


ト(女神)「トン、トン、トンカラトン」


ト「トン、トン、トンカラトン」チリンチリン(自転車のベルの音)


ナ「こうして、この世界から魔王はいなくなった。やがて魔物もいなくなった。確かにこの世界は平和になった。しかし、人間達は忘れてはいけない。トンカラトンと言えと言われたら必ず指示に従うこと。言えと言われる前にトンカラトンと言ってはいけないこと。…そして、集団のトンカラトンに会ったら覚悟を決めること」


ト「トンカラトンと言え」


ト(女神)「トンカラトンといいなさい」


ト(魔王)「我はトンカラトンと言えと言っておらぬ(魔王の攻撃音)」


ナ「次はあなたの町かもしれません…」

2024年5月21日 作

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