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何故私がお二人に嫉妬をしなければなりませんの


迎えた卒業式後の祝賀パーティーでのことだった。


「キャナリィ・ウィスタリア侯爵令嬢!君はエボニーを平民だからと蔑み、嫌がらせをしていたそうだな」


三年生を送る卒業式後の祝賀パーティーの最中、庇護欲をそそる可愛らしい女子生徒を纏わり付けたフロスティ公爵家子息であるジェードは突然キャナリィ・ウィスタリア侯爵令嬢を名指ししそう言った。


「あら、ジェード様。本日はご卒業おめでとうございます」

とりあえず笑顔で祝辞を述べたキャナリィはスッと真顔になると

「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」と問うた。


「それはこちらの台詞だ。どうしてエボニーを執拗に苛めるのだ」

心底わからないと言った顔でジェードはキャナリィに問い返した。


これにはエボニーも慌ててジェードに耳打ちするが、最近学園を騒がせている噂の渦中にいるフロスティ公爵令息とウィスタリア侯爵令嬢の会話を聞き逃すまいと静まった会場にその声は思いの外響いた。


「そ、そんなのあたしとジェード様の仲を嫉妬してに決まってるじゃないですか」


ジェードに向けて言った言葉に困惑気味のキャナリィが答える。


「何故私がお二人に嫉妬をしなければなりませんの?」

「それは──」

エボニーが答えようとしたその時、敢えてキャナリィはそれ以上言わせないとばかりに高圧的に言った。


「それに私はジェード様とお話ししているのです。確か一般クラスの授業では貴族の会話に入ることはマナー違反だと習うはずですが?」

一般クラスでの平民生徒の授業には貴族と接する際のマナーがある。学園に通う平民生徒は授業での座学と学園生活での実践、それを学ぶために高い授業料を払っていると言っても過言では無い。

エボニーも商家の娘だ。分からないわけでは無いため黙るしかない。

それはエボニーにこれ以上貴族への不敬を重ねさせないが為にというキャナリィなりの優しさであり噂を放っておいた為にこんなことになってしまったせめてもの詫びであったのだが、今更であったし伝わってもいないだろう。


「そもそも婚約者のある身でありながら他の女生徒と懇意にし、あまつさえ名前で呼ばせるなど言語道断ですわ」

──彼女が勘違いしても仕方ありません。

キャナリィはジェードに向き直るとエボニーの不敬の責任はあなたにもあるのだと言わんばかりにいらつきも隠さず言い放った。


「いや、「キャナ様」

ジェードが何か言いかけたその時、クラレットが静かにキャナリィに声をかけた。


「──そうね、この件はクラレットに任せていたわね。私ったら思わず・・・」


キャナリィがクラレットへ向き直ったその時、会場が黄色い喧騒に包まれた。

見ると会場の入り口に長身の美しい青年が立っていた。

どことなくジェードに似たその青年は暫く誰かを探すように会場を見渡していたが、目的の人物が視界に入ると真っ直ぐその方向へと歩みだした。

途中勇気のある令嬢が声をかけようとするが、青年の全身から漂う雰囲気がそれを拒否しているかのように感じ幾人もの令嬢が挙げた手を下ろした。

青年は目的の人物──キャナリィとクラレットに近付くと声をかけた。

「やぁ、二人とも久しぶり。どうしたの深刻な顔をして」

そこで青年のその美しいかんばせに見惚れていたエボニーはハッとすると、先ほどキャナリィに指摘されたことも忘れ、問われてもいないのに声を上げた。

「ウィスタリア侯爵令嬢があたしとジェード様の仲に嫉妬して散々嫌がらせをしてきたので次期フロスティ公爵夫人にふさわしくないことをみんなに知ってもらおうとしていたんです!」

その瞬間青年の空気が変わった。

青年はキャナリィとクラレットを背に庇うように立つとジェードとエボニーを冷たい視線で睨みつけた。


「説明してもらおうか──兄さん」

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