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【完結】で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?  作者: Debby
本編

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5/22

全く身に覚えがないのだけれど


それからしばらくして一般クラスの中でも平民と下位貴族の在籍するクラスを中心に『ウィスタリア侯爵令嬢が婚約者のフロスティ公爵令息と親しいエボニーを虐げているらしい』という噂が流れ始めた。


曰く、近くを通っただけで平民がと叱責された。

曰く、教科書を奪われボロボロにされた。

曰く、失くしたハンカチがゴミ箱から出てきた。

曰く、歩いていると花瓶が落ちてきて危うく死ぬところだった。

曰く、湖に突き落とされた。

曰く、階段から突き落とされかけた(これはすんでのところで手すりを持ち助かったらしい)。


「全く身に覚えがないのだけれど・・・」


そもそも貴族の中でも優秀な生徒が揃い王太子も在籍する特別クラスのキャナリィには平民の生徒との接点は全くないと言っても過言ではない。

身に覚えは無いが心当たりといえば、女生徒が立ち入り禁止区域に入ろうとしていたときのことと、教科書の件だ。

先にも述べたがキャナリィをはじめ特別クラスの生徒は高位貴族と一部の優秀な生徒である。

当然採用している使用人も出入りの商人も貴族であるため学園での平民の商人との交流も騎士や文官候補の生徒との接触を必要としていない。

一般クラスの生徒は特別クラスの生徒の姿を見ることもまれであるにもかかわらず、噂は瞬く間に学園中に広がった。

高位貴族の生徒は全く信じてはいないが、下位貴族の間ではそうでない。それに高位貴族より下位貴族の方が圧倒的に人数も多く噂好きも多い。

しかも学園では全く交流していない様だがウィスタリア侯爵令嬢がフロスティ公爵令息の婚約者であることが事実であることも噂の拡散に拍車をかけた。

しかし下位貴族や平民に誤解を受けようと痛くも痒くもないため、キャナリィは噂を放っておいている。


クラレットが

「キャナ様が平民(アレ)を気にすることはありません。私に任せて頂いてもいいですか」

と言ったことも理由のひとつだ。


クラレットは国一の商会を営んでいる伯爵家の跡取り娘である。話し方こそ固いが昔からの付き合いで、キャナリィの幼馴染みであり信頼できる唯一の友人でもある。その彼女が任せて欲しいと言っているのだからなにか考えがあるのだろう。否やはない。

それにこの件はクラレットも無関係ではない。

クラレットは続ける。

「キャナ様がそんな陳腐な嫌がらせをしたと信じること自体が全く理解できないのですが・・・」

侯爵令嬢が平民に嫌がらせ?笑ってしまうほどあり得ない出来事に、なにも感じず面白おかしく噂するだけの下位貴族達には失笑を禁じ得ない。

下位貴族と優秀な平民生徒の一部は違和感を覚え、親に報告し正しい情報を得ている者もいるようだ。一般クラスなのに噂に耳を貸さない者もいるのが見てとれる。

高位貴族も噂を好むがこのような場合はきちんと裏を取ることを忘れない。事実も確認せずにただ面白おかしく噂するだけでは足元をすくわれるからだ。

何か制裁を加えるべきか。


「ジェード様はともかく、キャナ様に手を出すとは良い度胸ですわね」

クラレットは日頃からあまり感情が表に出ないタイプではあるが、フッと愉しそうに微笑むその珍しい表情を見た者はいなかった。


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