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[後述または前説]

「______って、事があったの」

数日後の昼休み。

がやがやとした喧騒に紛れて、雪葉は美々奈に先日の異界遊郭のことを話していた。美々奈はフルーツサンドを頬張りながら、ふむふむと雪葉の言葉を聞いている。・・・・・・ちなみにデザートではなく、あれが美々奈の昼食だ。いつも彼女は昼ご飯とは名ばかりの甘いスイーツばかりを食している。雪葉は常々どうして美々奈が虫歯にも肥満にもならないのか不思議でならない。

閑話休題。

口の中のフルーツサンドを飲み込んでから、美々奈は心底面白そうに口を開く。

「なんだ。随分愉快なことを経験してるじゃないか、マイフレンド」

購買で買った焼きそばパンを食しながら、雪葉はジト目で美々奈を見つめた。

「どうせ何が起こるか知ってたくせに」

「にゃは」

冗談のように笑っているが、否定はしない。雪葉と白が遊郭でどんな目に合ったかも知っているのだろう。そういうものなのだ、雪葉の幼馴染は。理解を諦めた方が早い。

「でもまあ随分と仲良くなったみたいじゃないか。新しい友達が出来るかもしれないねぇ」

「出来ないよ」

美々奈のからかい混じりの言葉に、雪葉は間髪入れずに否定の言葉を紡ぐ。別に照れ隠しでも何でもなく、事実だ。あれ以来、彼とは一度も話していない。まあそうだろうなと思う。下手に私と関わると、ああいうのにまた巻き込まれてしまうのだ。彼だって御免だろう。きっと、これから疎遠になっていくのだろうと雪葉は思う。いや、別に今までもクラスメイト以上の大した関係は築けていないのだが。

それでも、雪葉はそれで構わない。いや、”それがいい”。

更紗雪葉の友達は、社印堂美々奈だけでいいのだ。

雪葉は美々奈以外いらないし、美々奈以外必要ない。ーー必要としては、いけない。

「それはどうかなぁ?」

雪葉の思考を逆撫でするように、にやにやと笑う美々奈。トレードマークの三日月型のヘアピンが、蛍光灯の光を反射して輝いていた。

怪しい様子になんなのだ、と雪葉が問う前に、予想外の声が掛かってくる。

「更紗さん」

ぱちり。雪葉はひとつ瞬きをする。聞こえてきたのは、イギリスの聖歌少年隊にでもいそうなアルトの声。

声の方を振り向くと、そこには、薄い茶髪に同色の瞳の、王子様と呼ぶに相応しい美少年が立っていた。つい先程まで話題に上がっていた見覚えがありすぎる少年の姿に、少しだけ雪葉の頬が引き攣る。

彼___白紙縒は、切実な声音で言葉を発した。

「食事中にごめん。でも、相談したいことがあるんだ」

その瞳は、異界でも見られなかった焦りと不安で揺れていた。

彼は不可思議で、不可解な悩み事を雪葉に告げる。

「ーー遺影の中から、母が消えていくんだ」





____どうやら、一度繋がってしまった縁は、そう安々とは切れないようだった。


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