90話 会議
ラヴァタートルの暴走を抑えた俺とフェルノはラルゴを連れて城に戻った。
丁度同じタイミングでギャルドを連れたケイン達も戻って来ていた。
「リブ様、ラヴァタートルの鎮静お疲れ様でした」
「今回は討伐じゃなかったからね、面白いモンスターには会えたけど」
俺はラヴァタートルの中であった事をケインに話した。
「なるほど、それは面白いモンスターですね」
「ああ、それはそうと今回の処理はどうしようか?」
「その事なのですが、ギャルドを操っていた商人がいるみたいなのですが」
「商人か、ラルゴさんもそんな事を言っていたな」
俺とケインは、商人に関しての情報を擦り合わせる。
そして、ギャルドを幽閉している部屋に向かう。
「お前がギャルドか」
俺の問いかけにギャルドが顔を上げると、俺の方を睨んでくる。
「そういうお前は誰だ?」
「俺はこの城の城主でイグニアス王国の王になったリブ・クロートだ」
「イグニアス王国?そうか……」
俺の言葉にギャルドは何やら考え込んでいる。
だが今はそんな時間はない。
「それで、お前に接触していた商人って何者なんだ?」
「あいつか……俺は詳しい事は知らん。女を奴隷にして好き勝手やってくれと言われただけだからな。亀に関しても結界を張るから誰も俺に手出しできないって言われただけだしな」
こいつは本当のクズだな……
それにしても、その商人はギャルドを利用して何がしたかったんだ?
「その商人は今はどこにいるんだ?」
「さあな?俺の所に来たのが数年前で最後に会ったのは亀を見つけたって言って来た時だから数ヶ月前じゃなかったか?どこから来てどこに行ったのかなんて俺にはわからないな」
嘘を言ってる感じではないな。
隣でケインがめっちゃ怒っているのか殺気が凄いがとりあえず気にしないでおこう。
「そんな事より俺は殺されるのか?」
「そうしたい所だが、お前の処分は一旦保留だ」
俺がそう言うとケインは驚いた顔をしている。
ケイン的には直ぐにでも死刑にしたいのだろう。
「こいつを囮にしてその商人を釣り出したいんだ」
俺はギャルドに聞こえないように、ケインに小声で説明する。
「なるほどです……上手くかかってくれればいいですが」
「そこは賭けだな、俺に捕まった事は向こうも把握しているだろうし」
もう一度こいつに接触してくる可能性はかなり低いだろうが、相手の素性がわからない以上少しでも確率を上げておきたいのだ。
「今後の方針が決まるまで、お前の処分は保留にしておく」
そう言うと、俺とケインは部屋から出ていく。
「甘い奴だな……」
1人にされたギャルドは暗い部屋でボソッと呟いた。
ギャルドの部屋を出た俺達は、大広間にいた。
今後の方針を決める為に会議を開く事にしたのだ。
マットのメンバーはもちろん、セバスチャン達も参加している。
「さて、今回はイレギュラーな展開になってしまったけど、最初の方針通り国の安定を優先したいと思う。そこで、街と城の方は予定通り進めるけど、モンスター討伐は一旦中止してこの王城内の強化を図ろうと思う」
「しかし、この王城にしばらく危険はないと思いますが?」
カイザーが首を傾げる。
「いや、姿の見えない敵がいる可能性がある以上、内部の防衛強化は必須だと思う。それに、龍人のような少数民族がいるのなら仲間にしておきたい」
もしかしたらあの商人が、すでに街の中に入り込んでいるかもしれないのだ。
「そういえば、ドラゴニュート達がリブ様との謁見を申し出て来ていますが、いかか致しましょう?」
セバスチャンがそう申し出て来た。
「それは会っておきたいな、セバスチャン明日の10時に予定を入れておいてくれるか?」
「かしこまりました」
「それでリブ様?あの街はどうされるのですか?」
マーチがバランをどうするのか聞いてきた。
「出来ればマットの属州都市として取り込みたいけど……代表があれだからな……」
「その事なのですが、我々はギャルドなどという代表を聞いた事がないのです」
レナード達は顔を見合わせると、そう発言した。
「ん?それってどういう事?ギャルドがバランの代表じゃないって事なのか?」
「はい、芸術都市バランの代表はパラスドールだったはずです」
俺の問いにセバスチャンが答える。
しかし、どういう事だろう?
ギャルドは代表じゃなくてパラスドールが代表?
じゃあ、そのパラスドールはどこに行ったんだ?
「ギャルドの屋敷に監禁されているとか?」
「いえ、ギャルドの屋敷には女性しかいませんでした」
ますますわからない。
とりあえず、ギャルドに聞いてみるか
「もう一度ギャルドの所に行ってみるか」
そう言うと、会議を休憩にして俺とケインでギャルドのいる部屋に向かう。
部屋のドアを開けると、暗い部屋の奥にいるギャルドに話しかける。
「ギャルド、パラスドールはどこにいるんだ?」
しかし、ギャルドから返事はない。
寝ているのか?
ケインが部屋の電気を付けると、そこにはギャルドが血まみれで項垂れていた。
「おい!!ギャルド!!」
俺は急いでギャルドの元に駆け寄るが、すでに息はなかった。
「どういう事だ?まさかこの城の中に誰かいるのか?」
「リブ様、ここは私が調べておきますので、確認をお願いします」
ケインにそう言われて、俺は急いで大広間に戻る。
「リブ様どうかしましたか?」
慌てて戻った俺の顔を見たマーチが驚いきながら聞いてくる。
「ギャルドが何者かに殺された……もしかしたらこの城の中に敵がいるかもしれない」
俺の言葉に全員が固まる。
「でも、あの部屋には鍵がかかっていたはずですよね?鍵は壊れていたのですか?」
「いや、鍵はかかっていた。ギャルドは今ケインが調べてくれている」
「では我々は城内を確認して来ますわ」
そう言うと全員が城内の調査に向かう。
しかし、犯人は密室でどうやってギャルドを殺したんだろう?
自殺の可能性もあるのか?
でも、ギャルドは縛られていて両手は使えない状態だったはず、自殺は難しいだろう。
何かのスキルでドアをすり抜けた?
でもどうやってこの城に入ったんだろう?
謎は深まるばかりだった。
とりあえず、みんなの報告を待とう。
そんな事を考えていると、ケインがギャルドを抱えて戻って来た。
「リブ様、どうやら体の内部から破壊されているようです」
「体の中?と言う事はそいつは今出てしまったと言うことか?」
「いえ、恐らくですが契約か呪いの類いかと……」
「何かをトリガーにして内部から破壊されるって事?」
「はい、そのトリガーが何かまではわかりませんが、その可能性が高いかと」
俺がケインと話をしているとみんなが戻って来る。
「城内は異常ありませんわ?」
「ありがとう。ケインが調べてくれたのだが、どうやら呪いか何かみたいだ」
「そうですか……」
とりあえず、もっと詳しく調べたいのでギャルドの遺体は病院の地下に安置する事にした。
「しかし、これでパラスドールの件は更にわからなくなったな」
「街の住民に聞いてみてはいかがでしょう?」
セバスチャンがそう言うと
「では、私が赴きましょう」
と、レナードがバランに行くと言っている。
「じゃあ、レナードとノエルで行って来てくれるか?」
「私も行きましょう」
とケインも同行してくれるみたいだ。
「ケイン、ノエル任せていいか?」
「はい、では早速行って来ます」
そう言うとケイン達は城を出ていく。
「俺は国内の城を回って来るよ」
「では我々とご一緒に」
フランがそう提案してくれたのだが
「いや、1人で見て回るよ」
俺はそう言うと、城から出ていくのだった。




