88話 合体奥義と見えない敵?
俺達は、ラヴァタートルの胃を目指して歩く。
甲羅から入ったのだが、なぜか中は洞窟になっていた。
「なぁ、モンスターってみんなこんな感じなのか?」
「こんな感じとは?」
フェルノが聞き返してくる。
「いや、俺の知ってる人体の中はもっと血液や筋肉みたいなのがあると思うのだが?」
「この子は噴火した溶岩から産まれた古代モンスターなの、だからあなた達のような生命体ではないの、胃の中に核があってその核のエネルギーで活動するの、今回はその核に何かを埋め込まれてしまったの」
妖精が説明してくれたのだが、内部が洞窟になっている説明にはなっていなかった。
まぁ、ここは異世界なのでそういうものなのだろうと割り切る事にした。
そしてしばらく歩くと、広い場所に出た。
中央に大きな光る球体が浮かんでいる。
「あれが核なの、本当なら青く光っているはずなの」
核と呼ばれる球体の物は赤く光っていた。
「という事は、あれを何とかすればいいんだな?」
「そうなの、でも傷つけたらこの子は消えてしまうの、だから気をつけて欲しいの」
そう言われても……保証はできないな。
「なるべく頑張ってみるよ」
そう言って、俺達が核に近づこうとしたその時だった。
「悪いが、この核には近づけさせないよ?」
と、核の下から1人の男が現れた。
「ん?お前がこいつを暴走させているのか?」
「正確には違うが、結果としてはそうなるな」
んー、こいつが言っている意味がわからない。
「それで?お前の目的はなんだ?」
「俺は、芸術都市バランの芸術家でラルゴという者だ。バランの代表であるギャルド様より、この亀を捕獲して街のシンボルになる芸術作品として街に飾りたいと依頼を受けたのだ」
捕獲?作品?
「なぁもしかしてそれって騙されてないか?」
「馬鹿な事を言うな!!ギャルド様はこの杭を核に刺せば亀は大人しくなって活動を停止すると言われている!!そうしたら街に持ち帰りオブジェとしてこの俺が作品として仕上げるのだ!!」
「でも亀は暴れ回っているぞ?」
「それは時間の問題だ。もうしばらくすれば核は赤から白に変わる。そうすればもう活動は出来なくなると言われている」
「それは違うの!!白になったら暴走して破壊の限りを尽くすの!!」
「そんな嘘には騙されないぞ?さては、俺の芸術作品を横取りする気だな?」
ラルゴはこちらの言うことを聞いてくれない。
「リブよ、こうなったら実力行使しかあるまい?」
「一般人に攻撃はできないな……しかもこんな所で暴れてもしあの核を壊してしまってラヴァタートルが消えでもしたら妖精が泣きそうだ」
「それは大丈夫なの、この子が消えるだけで、神力が回復したらまた別の個体として生まれ変わるの」
それを先に教えて欲しかった……
「じゃあやるか!!」
「おう!!行くぞ!!」
俺とフェルノは核を同時に攻撃を開始する。
が、次の瞬間核からモンスターが湧いてくる。
「はっ?」
「あのモンスターはラーヴァゴーレムとドッペルゲンガーなの、核の防衛反応なの、ラーヴァゴーレムは硬化してスキルも持ってるの、ドッペルゲンガーはこっちの攻撃をマネするの、ヒールも持ってるから倒すのが大変なの」
マジかよ……しかも次から次へと湧いてくるな……
「ラルゴさん死にたくなかったら核から離れてくれ、手加減できないから」
「な……何だ?こいつら!!こんなの聞いてないぞ?」
ラルゴは怯えながら核から離れる。
それを見た俺とフェルノは攻撃を再開する。
『ウィンドカッター!!』
しかし、俺の魔法は不思議な力でかき消されてしまった。
「え?もしかしてこれが結界?」
「そのようだな」
「ドラゴンブレスは魔法じゃないよな?」
「おお!!忘れていた!!」
『ドラゴンブレス!!』
…………ん?
フェルノはドラゴンブレスを使った……
しかし何も起こらなかった……
「えっと……人型だとつかえないんじゃないか?」
「ぬあ!!」
『ドラゴン化!!』
『ドラゴンブレス!!』
ドラゴンに変化したフェルノの口から炎が吐かれる。
すると、向かってきていたラーヴァゴーレム達が焼かれて消えていく。
「なるほど、じゃあ俺も」
『シルフの息吹!!』
風の精霊シルフが現れ、風を起こすとラーヴァゴーレム達を切り裂き消し去っていく。
「かなり倒したな」
フェルノのブレスとシルフの息吹でラーヴァゴーレム達はほとんど消えていなくなった。
しかし、俺達の快進撃もここまでだった。
ドッペルゲンガーが俺とフェルノのドラゴン形態に姿を変えると、ドラゴンブレスとシルフの息吹を放ってきたのだ。
しかも威力は俺達のそれより強いのだ。
「ぐはっ!!これは厳しいな」
俺は無効スキルでほとんどダメージはないのだが、フェルノには効果があるみたいだ。
「どうする?まだドッペルゲンガーは後4体いるぞ?」
「リブよ、合体奥義とかいうやつをやってみるか?」
「おお!!そんなのあったな」
『合体奥義!!炎龍煉獄羅刹!!』
大きな炎の渦が巻き起こると、ドッペルゲンガーの周りを取り囲む。
渦の内側に炎の刃が出てくると段々縮まっていき高速回転でドッペルゲンガーを切り裂き始める。
「おお……これはすごいな……」
内側にいるドッペルゲンガーだけではなく、外側にいる残りのラーヴァゴーレムも巻き上げながら倒している。
「なぁ、今のうちに杭を抜いたらどうだ?」
俺が威力に見惚れていると、フェルノにそう言われてしまった。
「確かに、今なら抜けそうだな」
俺は、核に向かっていくと核の中心に刺さっている杭を引き抜く。
すると、赤く光っていた核は段々青色に変化していく。
「ん?あれ?」
「リブよ、どうしたのだ?」
「いや、ちょっと気になってな……」
俺はそう言うと手に持った杭にスキル鑑定を使う。
スキルスティール : 相手のスキルを奪い自分にそのスキルの効果を発動させる
「どうやらこの杭にはラヴァタートルのスキルを奪って自分に効果を発動させる事ができるスキルが付与されているみたいだな」
『それなんなの?ラヴァタートルのスキルが誰かに奪われてたってことなの?』
「そのギャルドとかいう奴に効果が出ているって事か?」
「でも、ただの街の代表がそんなスキル使えるかな?」
「無理だな、代表とはいえ普通の人間だからな」
「えっと、ラルゴさんでしたっけ?この杭は本当に代表から受け取ったのですか?」
「え……ええ、ギャルド様がなんとかっていう商人から貰った杭だと言って……」
なんとかっていう商人?
絶対そいつが犯人じゃん!!
なんてわかりやすい展開だ。
その商人を見つけ出せば目的がわかるけど、どこの誰かわからないし時間の無駄だな。
俺が王になる前からっぽいし、もうこの国にいないかもしれない。
「まぁこれで、ギャルドって代表もラヴァタートルの無効結界が使えなくなったはずだから、今頃慌てているかもな?」
「すみません……俺が騙されていたなんて……俺のせいで、罪のない街や城の皆さんを……」
「仕方ないですね、しかし疑問があるのですが聞いてもいいですか?」
「はい?なんでしょう?」
「ラルゴさんはどうやってここまで来て、核の防衛反応を起こさせずに杭を刺せたのですか?」
「ここにはギャルド様……いや、ギャルドに渡されたカプセルに入って口からここまで来ました。核にはそのカプセルの中から杭を打ちました」
なるほど、最初からラヴァタートルのスキル狙いだったという訳か。
という事はこれはかなり練り込まれた計画を元に遂行された訳だ。
「それともう1つ……」
『貴方はどうしてラヴァタートルの寝床を知っていたの?誰にも見つからない場所だったはずなの!!』
俺が聞きたかった事を妖精が聞いている。
フェルノの話では、滅多に出てこないはずのラヴァタートルの居場所を知っていたのが疑問なのだ。
「それは、この地図を渡されたのです。ここに行けば大きな亀が寝ているからカプセルに入って口から入れば簡単に核までいけるからと」
「それはギャルドから?」
「いえ、これは商人からです。顔は隠していたのでわからないですが、声は女性なのか老人なのかわからない感じで身長は小さかったです」
とりあえずその商人に関しては一時保留だ。
ギャルドって代表から聞き出せればいいが、恐らくそれも無理だろう。
そんな事を考えながら、俺達はラヴァタートルの胃から出ると妖精と別れて城に戻るのだった。




