85話 新たな刺客?
その日は朝まで飲んで騒いだ。
王になったという実感はまだ無いが、その内出てくるだろう。
時間は既に14時を過ぎているが、マットの街はまだお祭り騒ぎだ。
「俺も街に出てみるか」
みんな、どこかに出かけているみたいで、城には俺しかいなかった。
城にいても仕方ないので、街に出てみる事にした。
街は急遽用意された割には飲食店が出店を出しており、イートインスペースも配置されていた。
「あっ!!リブ様!!うちのお肉食べて行ってください!!」
「リブ様!!一緒に飲みませんか?」
と、住民達に声をかけられる。
適当に肉や飲み物を受け取ると、食べながら街の中を歩き回る。
そして、とある食堂の前まで来ると、
「あなたが王様ですね?前回の戦争では実力がわからなかったのですが、よろしければ手合わせをお願いしたいのですが?」
突然、後ろから声をかけられる。
俺が振り返ると、そこには若い男が立っていた。
男の後ろには女性と老紳士もいる。
「えっと……どちら様でしょう?」
「ああ、これは失礼しました。私はヨシツネと言います。後ろにいるのは私の仲間で、ラーレンとレリック言います。私達はこの地に飛ばされて来た者です。しかし王候補ではなく、将軍でして……王城攻防戦には参加資格がなかったのです。それで、先日の戦争を影から見ていたのですが、あなた様は城壁の上から何をする訳でもなかった。配下の方達は強かったのですが、あなた様の実力がわからない。ですので我々が仕えるに値する盟主様なのか知りたいのです」
なるほど、王候補なら正面切って意義を唱えられるが、将軍だけでは参加する事さえ出来なかった訳か。
「ああ、いいよ。でもここだと迷惑がかかるから外に出ようか」
「ありがとうございます」
そう言うと、俺達は城壁の外に出る。
王城から出てしばらく草原を歩く。
「この辺りでいいかな?ここなら思いっきりやっても被害は無さそうだし」
俺がそう言うと、ヨシツネ達は戦闘の準備を始める。
「それでどうする?3人まとめて相手すればいいのかな?」
「ふふ、大した自信ですね。ええ、あなた様がそれでいいと仰るのなら3人で行かせて頂きます!!」
ヨシツネはそう言うと、
『高速剣!!』
と、いきなり剣を抜き攻撃を仕掛けてきた。
不意を突かれた俺は、その攻撃をギリギリのところで躱す。
しかし、頬から薄っすら血が滲む。
『正拳突き!!』
そこに、ラーレンと呼ばれていた女性の拳が迫ってくる。
その、攻撃を右手で受け止めると、
『回転斬り!!』
と再びヨシツネが横から攻撃してくる。
俺は、ラーレンの拳を離すとバックステップでヨシツネの攻撃を避ける。
『サンダー!!』
その俺が避けた先にドーンと雷が落ちる。
「王になった方の実力はこんなものですか?」
サンダーが直撃したのを見て、ヨシツネがそう言っている。
しかし、雷が落ちた砂煙の中から俺は悠然と姿を現す。
残念ながら、俺には各種無効スキルがあるので攻撃は一切効かないのだ。
「なっ……」
それを見た3人は驚き固まってしまう。
「それなら!!」
ヨシツネが攻撃をしようとした瞬間
『フライ!!』
『シルフの息吹!!』
俺は空高く舞い上がると、風魔法を発動させる。
3人は俺の攻撃で吹き飛ばされて、地面に倒れ込んでしまった。
「かなり手加減したけど、大丈夫かな?」
俺は心配になって3人を見る。
「う……うう……」
良かった、何とか息はありそうだ。
『『ヒール!!』』
その時、ノエルとライズの声がした。
俺が後ろを振り返ると、そこにはケインを先頭に幹部メンバーが立っていた。
「リブ様……これは一体……」
ケインは呆れた顔で俺に聞いてくる。
「いや、俺が王になるのを阻止したかったらしいんだけど、王候補じゃないから参加出来なかったみたいで、俺の実力を知りたいって言うから……」
俺がケイン達にそう説明すると
「あなた達は死にたいのですか?」
と、マーチは大きなため息と吐くと、ヨシツネ達にそう聞いている。
「しかし、リブ様に勝負を挑むなんて、クリオさん以上の勇者ですね」
ミーシャが笑いながら、3人を茶化している。
マットの幹部達に囲まれた3人は、回復はしているのだが、起き上がれないでいた。
「ねえ、あなた達は何をしでかしたかわかっているの?」
その状況で、マーチがさらに追い打ちをかける。
ヨシツネ達は、ゆっくり起き上がるとそのまま正座する。
「全く……自殺行為もいいところだわ?私達でさえリブ様に歯向かうなんて出来ないのに……たかが、1次職で実力を試すなんてあり得ないし……どれだけ自意識過剰なのよ?」
マーチは物凄い勢いで説教を始めた。
「でも、なんでみんなここにいるの?」
「街の人がリブ様が見慣れない3人組と外に出て行ったと教えてくれまして、急いで外に出たところ雷が落ちるのが見えたので慌ててノエルさんの範囲ワープで飛んできたのです」
ケインは心配はしていなかったが、もしもの時の為に幹部を全員招集したらしい。
そして、ここまで来たと言う事だった。
「そういえば、あの3人はどうする?」
「どうしましょうか、リブ様に対してここまでの事をしたのですから簡単にメンバーに入れるというのは他のメンバーからも異論が出そうですが」
と言っても、頬が少し切れたくらいでダメージはほとんどないのだが。
それでも、俺に攻撃を仕掛けたという事が問題なのだそうだ。
「まぁ、後はケインとマーチに任せるよ。俺はどっちでもいいから」
俺はそう言うとマーチの所まで行く。
「マーチ、もうその辺でいいだろ?ヨシツネ達も泣きそうだし」
「ふー!!リブ様は本当に甘いんだから……あなた達もリブ様に感謝しなさい?本気で戦われたら今頃、影も形も残ってないんだから!!」
マーチにそう言われて、3人は目を丸くした。
今戦っていた王は全然本気ではなかったのだ。
それなのに圧倒的な力の差で負けてしまったのだから、自分達の弱さを痛感したのだった。
「「申し訳ありませんでした!!」」
ヨシツネ達は、俺に深々と頭を下げる。
そして、向きを変えるとマーチ達にも謝っている。
「わかればいいのよ、今後リブ様に挑もうなんて馬鹿な事は考えないでね」
マーチはそう言うと、俺の方を向き
「リブ様も!!こんなのをいちいち相手にしないでください!!」
と何故か俺まで怒られてしまった……
まぁ、今後はもし絡まれたら相談しよう。
とりあえず解決したので、みんなで城に戻って祭りを楽しむのだった。




