84話 暗躍する者達
街中がお祝いムード1色の中、ある一角だけ異質な空気を放つ場所があった。
そこには、3人の男が座っていた。
「ついに王が誕生してしまった……どうする?このままだとかなりヤバいぞ……」
「しかもあの新しい王って前回の……」
「ああ……なんて報告すればいい……」
3人は困った顔をしながら相談を続ける。
「しかし、時間の問題だよな……」
「でも、あの人にそれを伝えても……」
「この際、あの人を見限って王都に移住するか?ここに住んじゃえば流石にあの人でも手は出せないだろう?」
「それもそうだな、逆に王様に情報を教えて保護してもらうとか?」
と、コソコソ話をしていると
「さっきから面白そうな話をしているな?俺にも教えてくれよ」
1人の男がその3人に話しかける。
「ん?貴様!!いつからそこに?」
「何者だ!!」
「ああ、俺はクリオってもんだ。気にするな、たまたま隣で飲んでたら面白い話が聞こえたんで声をかけただけだ」
たまたまではなく、クリオはチャコに言われて怪しい3人組を調査していたのだ。
「それで、あの人って言うのは誰の事なんだ?」
「初めて会った奴に、そんな事教えられるかよ!!」
「おっ?いいじゃねーか。ここで会ったのも何かの縁って言うだろ?この街に住みたいって言うなら協力するからよ〜」
「こいつが協力してくれるって言うなら教えてもいいんじゃないか?どうせあの人はもう終わりなんだから」
「まぁそれもそうか、じゃあ教えてやるけど、誰にも言うなよ?」
男達はモブキャラがよく言うような台詞で話を切り出す。
「あの人っていうのはよ?ある街の代表の事さ。街の住人から税金を吸い上げるだけ吸い上げて、払えない奴とか反抗する奴をいじめて楽しんでるイカれた野郎さ」
「イジメるってどんな事をするんだ?」
「そいつの嫁や娘を連れて帰って……後は男ならわかるだろ?」
「ああ……とんでもない野郎だな」
「だからよ、あの街の連中は代表に逆らえないのさ。それをいい事にあいつは最近では気になった女がいると、冤罪をでっち上げ始めてよ……」
「マジか?それはヤバいな。それでその街からお前達はここに何をしに来たんだ?」
「ああ、この国に王様が誕生したって聞いたからよ、あいつが王がどんな奴か見て来いって言うんでな?」
3人は段々呼び方があの人からあいつに変わっていく。
「でもよ?たかが街の代表如きが王様をどうこうできないだろ?」
「ああ、普通はな……でもあいつは感覚がおかしくなってるからよ……王が手玉に取れそうなら上手く言い丸めて今のままイケると思ってるんだよ……」
「流石にそれは無理だろ?舐めすぎじゃねーか?」
クリオは少しづつ腹が立ってきていた。
自分の主人が小さな街の代表に舐められているのがムカついたのだ。
「だから俺達もよ、さっきの王様のスピーチを聞いてあいつは終わりだって話をしてたんだよ」
男達も、リブのスピーチを聞いて代表では太刀打出来ないと悟り、王都に移住する事を考えていたのだ。
「そうか、じゃあお前達はもうそいつの部下じゃないんだな?」
「お……おうよ!!あんな奴について行ったら俺達も危ないからな!!」
「最後に確認だけどよ、お前らもそいつと同じ事をしてないよな?」
「してねーよ!!俺らはこれでもあの街の住民だからな!!」
クリオは最後に大事な事を確認すると、男達は全力で否定していた。
どうやら、この男達はあの街の一般人で普段は代表の部下ではないらしい。
今回、偵察という名目で雇われただけみたいだ。
「そうか……わかった。じゃあ約束通り協力してやるからついて来いよ」
クリオはそう言うと、男達を連れて城に向かう。
男達は、城に連れて行かれるなど思ってもいなかったのか、段々焦り始める。
「お……おい!!ここって王様の城だろ?勝手に入って大丈夫なのか?」
「ああ、任せろ」
クリオはそれだけ言うと、どんどん城に入っていく。
「こいつ何者だよ?」
「やばくないか?逃げた方がいいんじゃないか?」
「でも、逃げるってどこにだよ?」
男達は小声で話をしているが、クリオは逃がす気などない。
そして、エントランスに来ると
「セバスチャンさん、リブ様に話がありますのでこの人達をお願いします」
「クリオ様、了解致しました」
クリオはそう言うと男達をセバスチャンに任せて階段を上がって行く。
そして、バルコニーに着くと
「リブ様、例の街の住民を連れてきました。かなりヤバい事になっているみたいです」
「例の街?ああ、王城攻防戦の前にチャコ達に偵察させようとしてた街か」
俺はすっかり忘れていたが、あのおかしな街の住民が偵察に来ていたらしい。
「はい、どうやらあの街の代表はかなり危険人物なようで」
俺達はクリオから一部始終を聞く。
「はっ?何それ?最低すぎる!!殺しちゃえばいいのよ!!」
「リブ様!!そんな奴早いところやっちゃいましょう!!」
マーチとミーシャが過激な発言をしている。
「まぁ……とりあえずその人達と話をしよう。ケイン大丈夫?」
「はい、私はチャコさんから聞いていましたのでお酒は飲んでいませんから」
さすがはケインだ。
というか、俺は何も聞いてないけど?
どうやら、宴会の準備中にチャコが不審な3人を見かけてクリオに指示をしていたらしい。
「なるほど、じゃあ行こうか。クリオ悪いけどその人達を連れて来てくれる?」
そう言うと、俺とケインは玉座に向かう。
「わかりました」
クリオもセバスチャンに任せた3人を連れにエントランスまで戻る。
「さて、リブ様っが話をしたいそうだ。ついて来てくれ」
「ま……待ってくれ!!あんたは一体何者なんだ?」
「ああ、俺か?俺はリブ様の配下で諜報部員のクリオってもんだ」
「な……」
男達は言葉を失う。
まさか目の前にいるクリオは、王様の配下だったのだ。
「ここまで来たら覚悟を決めろよ?」
クリオはそう言うと、男達を連れて玉座に向かうのだった。
そして、部屋に入ると男達の緊張はMAXに達していた。
偵察に来ただけなのに、まさか王の目の前に連れて来られるなど想像もしていなかったからだ。
そして、王の前に来ると膝を付き頭を下げる。
「リブ様、この者達があの街の住民です」
「ふむ、顔を上げていい。ある程度の話はクリオから聞いた。それで?あなた達はどうしたい?」
俺の言葉に頭を上げた3人は、質問の意味がわからないようでお互いの顔を見合わせる。
「失礼ながら申し上げます。王様の言うどうしたいとはどう言う事でございましょう?」
1番まともそうな男が、丁寧に質問を返して来た。
「いや、俺に恭順しないのであれば街ごとこの国から追放するのだが、あなた達が俺に街を救って欲しいと言うのであれば、手を貸そう」
実際のところは、街ごと追放など出来ないので武力で街ごと潰す事になるのだが……
しかし、助けて欲しいと住民が望んでいないのであれば、わざわざ何かをしてあげる必要もないのだ。
「お恐れながら申し上げます。我らが街は、圧政に苦しんでおります。住民の多くはただ口をつぐむ事しか出来ず……耐え凌ぐ事で何とか生活ができている状態でございます。出来ますれば、王様にご助力をお願い申し上げます」
男達は深く頭を下げると、そうお願いして来た。
「ふむ、いいだろう。では、その為に必要な情報を全てクリオに提供せよ!!その情報を精査し住民に被害が出ないよう配慮した方法で代表を排除する事にしよう」
「はは〜〜!!ありがとうございます!!」
偉そうに喋るのは難しいな……
そんな事を思いながら、なんとなく王っぽく言ってみたのだが、どうやら大丈夫だったみたいだ。
「じゃあ、後の事はチャコとクリオに任せる。でも、今日はダメだ。大事な祝いの日だから仕事は禁止で。あなた達も、今日だけは全てを忘れて楽しんで欲しい。明日以降にやるように」
「了解しました」
クリオはそう言うと、3人を連れて部屋から出て行く。
俺達も、バルコニーに戻って酒を飲み直すのだった。




