78話 大戦開幕
ロジットに勝利した俺達は、王城に向かってきている大軍勢に備える。
カイザー達騎兵隊と弓騎隊、そしてサリーの魔導兵団はもうすぐ到着しそうだ。
そして、戦闘が終わったケイン達も城壁の上に戻ってくる。
「お疲れ様、無事終わったな」
「はい、しかし私達もまだまだです。1人に対して4人がかりでしたから」
「まぁ、仕方ないんじゃないか?」
俺とケインは軽く会話を交わす。
大軍勢とマットの軍が目視できる距離まできているからだ。
「本番はこれからだから、そっちで頼むよ」
「はい、リブ様が知らないマット軍をお見せしますよ」
とケインは不敵な笑みを浮かべた。
ん?俺の知らないマット軍?確かに、軍隊に関しては全部ケイン達に任せっきりだったからな。
すると、爆音と共に騎兵隊と魔導兵団が王城に到着する。
しかし、歩兵と弓兵はこの速度には追いつけないだろうから、結局開戦に間に合わないんじゃないか?
騎兵隊と魔導兵団の後ろに大きな箱の様な物が見えた。
あれは何だろう?
そう思っていると、箱の横にある扉が開く。
なんとそこから歩兵隊と弓兵隊が降りてきたのだ。
「あれは何?」
俺が驚いていると
「あれは私が電車の客車をイメージし開発した移動用牽引軍車ですよ」
ミーシャが自慢気に説明してくれた。
移動用牽引軍車?それを魔導兵器で引っ張るのか……
しかし、これで歩兵隊も弓兵隊も間に合ったのだ。
「騎兵の移動速度を上げているのはあの台車みたいなやつ?」
「ええ、サリーが馬の速度を上げるより、乗せて運んだ方が馬も疲れないからって」
馬の蹄を台車の底盤に固定して、荷締めベルトで胴体も固定されている。
馬が驚かない様に日々の訓練で慣らす訓練もやっているそうだ。
この時点ですでに俺の知らないマット軍なんだけど……
これ以上何かあるんだろうか?
「それでは行って参ります。リブ様はこちらでご覧になっていてください」
ケインはそう言うと、ミーシャと一緒に城壁から降りて行く。
そして、軍の所まで行くと何やら指示を出している。
すると、軍は陣形を取り始める。
鶴翼や魚鱗なら知っているが、ケインの陣形は見た事のない陣形だった。
先頭にカイザー率いる騎兵を配置して、1列後ろの右手側にロイの第一歩兵隊が左手側にネージュの第二歩兵隊がいる。
ここまでは魚鱗の陣形なのだが、中央にミーシャとサリーが率いる魔導兵団がいる。
その後ろにギートの重籐弓隊が1列に並んでいる。
弓騎隊は歩兵隊の外に陣取っていた。
レオンの軍は遊軍として、最後列に配置されていた。
これはどういう意図があるんだろう?
俺が不思議に思っていると、マーチが隣で感心している。
「マーチこの陣形の意図がわかるの?」
「ええ、この陣形は魔導兵団と重籐弓隊の火力を最大限に生かした陣形ですわ?」
え?でも魔導兵団の直線上には騎兵がいるし乱戦になったら重籐弓は打てないと思うけど?
俺の思っているのとは違うのかな?
「リブ様?今うちの重籐弓の飛距離はどのくらいだと思いますか?魔導兵団の攻撃方法は?」
「飛距離?200mくらいじゃないの?魔導兵団は機関銃と魔法では?」
「ふふふ、その認識が違うんですよ。開戦したらわかりますよ」
どうやら俺の認識が違うらしい。
マーチは楽しそうに始まればわかると言っているが、一体どうなっているんだろう?
そんな事を考えていると、大軍勢がマット軍の前に姿を現した。
そして陣形を取ると、1人の男が前に出る。
「俺はクイーン・デルタ様の従者でボルドと言う!!王になるのは我らがクイーン様だ!!なので今回の貴様らの行動は許しがたい暴挙だ!!だから、粛清しに来た!!」
ボルドと名乗る大男は、そう叫ぶと俺の方を睨みつける。
この世界の奴らは睨むのが好きなんだな……
というか、俺が勝手に王になろうとしているから怒っているのか……
それにしても、クイーン様?どこかで聞いた事がある名前だな?
どこだっけ?よく覚えていないな……
そんな事を考えていると
「私はリブ様の参謀をしているケインと申します!!リブ様を王にする為、ここは死守させて頂きます!!」
とケインが名乗りを上げている。
しかしケインの名乗りは紳士的で迫力はないが、言葉に力があるな。
クイーンの軍勢は鶴翼の陣で、前方両脇は騎兵隊、2列目に歩兵隊、3列目に弓隊と攻城兵器隊がいる。本陣は騎兵隊だ。
見た目だが、総勢10万はいるだろう。
対するマット軍は5万〜6万くらいか
数では負けてるけど、マーチが言ってた火力っていうのが気になるな。
そしてしばらくの静寂が辺りを包むと、ボルドが兵士に気合を入れる。
「クイーン様の為に逆賊を撃ち倒すぞ!!死をも恐れず我が主の為に戦うのだ!!」
「「おお〜!!」」
クイーン軍の士気が上がっていく。
マット軍は兵力差と初めての戦争で、気圧されている。
それなら
「俺の大事な家族であるマットの兵士達よ!!俺の為に死ぬ事は許さない!!必ず生きて帰るのだ!!戦いとは数ではない!!質だ!!俺は君達が日々努力している事を知っている!!今、その成果を俺に見せて欲しい!!」
俺は城壁の上から兵士達を鼓舞する。
それを聞いた兵士達は体の芯から力が湧いてくるのを感じていた。
盟主であるリブ様が自分達を見ていてくれている。
ただそれだけでよかったのだ。
「「おお〜!!」」
クイーン軍よりも大きな声が戦場に響き渡る。
そして、今まさに開戦の時を迎えた。




