71話 家に帰ろう
「それでは、俺達は帰りますのでリベンジ頑張ってください」
放心状態のクリオさんに別れを告げると
「リブさん!!いや……リブ様!!俺の……私のリベンジを助けてもらえないでしょうか?」
といきなりお願いしてきた。
「いや、これはクリオさんの復讐でしょ?俺は別にその人に恨みはないしそもそも相手が誰なのかわからないのに戦えないよ?」
誰かもわからない相手と戦うなんて、そこまで俺も暇じゃないし、今日会ったばかりの人の為に戦争を起こす程お人よしでもない。
「そうですか……仕方ないですね……ではあの鬼人と戦うのは自分で頑張ってみます」
ん?鬼人?もしかして
「その鬼人って部下にロン毛のエルフがいたり、細身の剣士がいたり馬に跨った巨人がいたりしなかった?」
俺には少し心当たりがあった。
「ロン毛のエルフはいませんでしたが、巨人と細身の剣士はいましたね。後、綺麗な女性がいました」
ほぼ間違いないな。
「リブ様その人と知り合いですか?」
チャコは不思議そうに俺に聞いてくる。
「うん、みんなもよく知ってるよね?細身の剣士と綺麗な女性」
俺がそこまで言うと、4人とも気がついたらしい。
「セシルさんとライズさんですか?」
「そうだと思う。鬼人でこの辺にいた攻撃好きな男って言ったらグランツでしょ?」
そう、クリオさんを攻撃したのはグランツなのだ。
「えっと……すごく言い難いんだけど……クリオさんの復讐する相手ってもう俺が倒しちゃったみたい」
クリオさんは完全に思考が停止している。
「じゃあ、そういう事なんで俺達は帰るね?」
立ちすくむクリオさんを、放置して再度帰ろうとすると
「ちょっと待ってください!!では、私のやっていた事は無意味だったという事ですか?」
「何をやっていたのかは知らないけど、意味はなかったかもね?」
クリオさんは目的を失って、困惑している。
そもそも、やってた事ってなに?
「私は毎日、城の前でモンスターを倒しながらあいつらが攻めて来るのを待ち続けていたんです」
ふむ、すごく無駄な時間を何日も過ごしていた訳か。
ここまでくると、呆れるを通り越して敬意すら湧いて来るな。
俺の後ろでは、4人が我慢の限界を超えて爆笑している。
「リブ様……この人面白いから一度連れて帰りませんか?マットを見れば自分のやっていた事が意味のある事だったかわかると思いますし」
ミーシャは絶対新しいおもちゃを見つけたくらいの感覚だろう……
俺が悩んでいると
「その方がいいと思います。ご自分の立場を知る事も大事ですから」
とノエルミーシャの案に乗ってきた。
マットを見てその上でどうするかはクリオさん次第だから別にいいか。
「じゃあ一緒に行きますか?とりあえずこの城が攻撃される事はないですし」
俺がクリオさんを誘うと、
「見せて頂いていいですか?これからの参考にさせて頂きたく」
と、あくまでこの世界で1人で生きていく覚悟のようだ。
でも、参考になるのかな?まぁ、好きにすればいいか。
敵対するなら倒すだけだし、そもそもクリオさんは盟主側なのか?
気にしても仕方ないか
そして、クリオさんを連れてマットに戻る。
マットに戻ると、時計塔の針は16時を指していた。
「今のはなんですか?一瞬で移動しましたよ?」
「範囲ワープですよ。私のスキルです」
クリオさんの質問にノエルが答える。
そして、街に入ると、クリオさんは辺りをキョロキョロしている。
「ここはなんですか?」
「ここはマットの首都プロスパラスの商業区です。左の奥に見えるのが工業区で右側が住宅区です。工業区の向こうが属州都市シキリアになります」
さすがは外交官のノエルだ。
案内も完璧だった。
そして、内門を潜るとセントラルシティに出る。
「ここも街なのですか?」
「ここは、マットの主要施設があるセントラルシティです。私達の職場になります」
「職場ですか?皆さんは仕事をされているのですか?」
「はい、リブ様の元でお仕事をさせて頂いています。私は普段は大使館で外交官の仕事をしています」
ノエルが説明しながら進んで行くと陽炎城の前にセバスチャンが立っていた。
「おかえりなさいませ。そちらはお客様ですか?」
セバスチャンは俺達にお辞儀をすると、クリオさんに気がつく。
「ああ、俺は今から兵器工場に行くから、悪いけど部屋を用意してあげて、城内を案内してあげてくれる?」
俺はセバスチャンにそう頼むと、クリオさんを任せてミーシャと一緒に兵器工場に向かう。
工場の奥の部屋に着くと、サリーとウェンツが作業をしていた。
「特大魔法石、採ってきたよ〜」
俺は、サリーに声をかける。
「おお!!おかえりなさい。ほな、早速はめ込んでみますか?いつでもええように、外に出しておきました」
そう言われて、サリーについて行くと
兵器工場の裏側の城壁に見慣れない扉が出来ていた。
「こんな所に扉なんてあったっけ?」
「ああ、それは毎回魔導兵器を街の中通すんも悪いし、遠回りなんでワイとウェンツはんで作ったんです」
なるほど、それはいい考えだ。
そして、そこから外に出ると魔導兵器が置いてあった。
俺は、エクスブロードの魔法を特大魔法石にエンチャントすると魔導兵器の胸元にはめ込む。
そして、サリーが乗り込み魔法を発動させると
「あれ?あかんわ……発動せえへん……」
何回やっても魔法が出なかった。
どうやら、精霊魔法は無理みたいだ。
まぁ、そんな簡単に使えるようになったらスキルの意味もないし、それはそうか……
仕方ないので、せっかくの特大魔法石だからファイヤーストームをエンチャントしておく。
そして、大広間に戻るとクーパーさん達がクリオさんが話をしていた。
「あれ?クーパーさん?」
「お客様が来たみたいだから宴会かと思って」
クーパーさんはお酒を飲みに来たらしい
「あまり飲みすぎないでくださいよ?」
「お酒?宴会?ここには米以外の食べ物があるんですか?」
クリオさんがクーパーさんに聞いている。
「あら?何も知らないの?このお城はほとんど日本よ?」
「え?どう言う事ですか?」
「大浴場にはシャワーやサウナもあるし、シャンプーやリンスボディソープも完備だし。ラーメンやカレーもあるのアイーナの唐揚げは最高よ?うちのメイドもここで修行中なの」
クーパーさんのメイドさんもここにいたのか……知らなかった。
あれ?じゃあ今まで食事は?
「私とコウリュがここから食材をもらって作っているのよ」
なるほど、そういうことか。
「大浴場にサウナ?ラーメン?カレー?」
「あれ?セバスチャンから案内されたはずだけど?」
「すみません……この城が自分の城と違いすぎて呆気に取られていたもので……」
クリオさんは聞いていなかったみたいだ。
とりあえず、クリオさんを連れて風呂に行くのだった。




