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城から始まる異世界物語  作者: 紅蓮
異世界生活編
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6話 その女性、小悪魔につき

女の人を連れて森を抜けると、陽炎城の前に出た。

しかし、後少しで城門という所で、鎧を着ている集団に囲まれてしまった。


「なんだ?こいつら?」


よく見ると人間ではなく、鎧の下は骸骨だった。


「モンスターか!!」


俺は、すかさず両手を天にかざし魔法を唱える。

モンスター達は、剣を振り上げて一斉に襲いかかってくるが、間一髪の所で魔法が発動する。


『ライトクロス!!』


俺を中心に、十字型の光が天に昇りモンスターは泡となって消えて行く。


「あ、危なかった…」


俺は、鎧の騎士が落としたドロップ品を拾うと、足早に城門の中に入る。


「ここなら安心なはず……」


俺はふぅと息を吐き女の人の方を向くと、


「付いて来てください……」


と、俺の後ろでキョロキョロしながら歩く女の人に声をかける。


そして、参謀本部に入ると


「ちょっと……ここで待っててください……」


と会議室に通してそこで待っていてもらい、ケインを呼びに行く。


俺が執務室に入ると、ケインはまだ本を読んでいた。


「ケインちょっといいかな?」


俺が呼ぶと、何かあったのか?

と、ケインが顔を上げてこっちを向いた。


「どうしたのですか?」


「素材を集めようと外に出たら、城門の右手側に森が出来ていてね」


俺が説明を始めると、ケインは興味深々で聞いている。


「それで、その森の中でゾンビに襲われていた女の人を助けたんだけど……とりあえずここに連れて来て、隣の会議室で待っててもらって……」


俺がそこまで言ったところで、ケインは少し驚いた顔をしながら立ち上がると、


「なんと!!すぐお会いしましょう!!」


と、ケインは俺の前に出ると、足早に執務室から会議室に向かう。

そして、会議室の扉をノックしてから開けると、こちらを向いて立っている女の人に声をかける。


「はじめまして、私はリブ様の参謀をしているケインと申します。突然で申し訳ありませんが、もしよろしければ、お名前を教えていただけませんか?」


ケインはそう言うと、スッと頭を下げる。


おっと……さすがケインだ、俺なんて名乗りすらしていなかった。


「リブ様?」


女の人は誰だろう?みたいな顔をして俺の方をチラッと見てくる。


「すみません……俺がリブ・クロートです……ここの城主で……盟主をさせてもらってます」


ケインは少し呆れたように俺を見たが、突然だったし、モンスターも出て来たし、そもそも俺は女性と話をするのが苦手なのだから仕方がない。


「リブ様……まぁ今回は緊急事態だったようですので、仕方がなかったという事にいたしましょう」


うん、さすがケインだ。

俺の事情をしっかり汲んでくれている。


「私はこっちの名前はミーシャ。日本からこちらに来ました。種族はエルフで回復士をしています」


ミーシャさんはちょっと笑いながら、俺達に自己紹介をしてくれた。


おっと、また日本人だ。


「ミーシャさんですね、日本からという事は、やはり突然ですか?」


ケインがその言葉に反応する。


「ええ、買い物に出かけて、いつも行くお店と違うお店に行こうとしたら道に迷ってしまって、気がついたらお城の前にいたの」


どうやらミーシャさんは、買い物の途中で迷い込んでしまったらしい。


「そういえば、種族はエルフなんですね?」


ケインの質問は続く。


「はい、そうです。種族が選べるって書いてあったから、エルフにしてみたの。それで……盟主とか参謀ってなんなのですか?」


今度は、逆にミーシャさんから質問される。


俺の方を見ているが、ここはケインの出番だ。

決して、俺が説明出来ないとか、女性と上手く話が出来ないって理由じゃないよ?


そう思いながら、俺がケインの方をチラッと見ると、ケインはため息をついたように見えた。


うん、気のせいだ。ケインはそんな器の小さい男ではない。

はずだ……多分……きっと……そうだろう……そうだといいな……


そんな事を考えていると、ケインはミーシャさんに説明を始めた。


「私もまだ完全に理解はしていませんが、私達はどうやら日本からこの世界に飛ばされたらしいのです。そして、リブ様と話をしていると、同盟に参加する可否を問う声が聞こえて来ました。ですので、リブ様を盟主として選ばせてもらい、同盟に参加して参謀の役職を授けて頂きました」


ケインはそう言うと1冊の本を取り出してミーシャさんの前に出す。

それを見たミーシャさんは、自分の懐から本を出して見比べている。


「なるほどね、どうやら私も選ぶ側ってやつみたい。ケインさんと全く同じだわ」


そう言うとケインに本を返し、自分の本を開くと俺の方に向き直す。


「では、私もリブさんの同盟に参加させていただけますでしょうか?私にも役職を頂けると嬉しいのですが?」


ミーシャさんはそう言うと、ニコッと笑った。


「え?本当に俺でいいの?」 


「ダメかしら?リブさんには助けてもらったし。それに、今からここを出て行っても、この先どこに行けばいいのかわからないから、是非参加したいんですけど?」


まぁ確かに、勝手に助けておいて、はい、さようならっていうのも薄情だよね。


「わかりました」


俺はそう言うと、魔法のバッグから本を取り出すと、役職が書かれたページを開きミーシャさんの役職を選ぶ。


「えーと……じゃあミーシャさんには……研究者の役職を与えます」


俺が役職を与えると、ミーシャさんの体が光り出す。

そして、その光が収まる頃には、真っ白な白衣に身を包んでいた。


「ありがとうございます。それから、そんなに緊張しなくても襲ったりしませんよ?もっと普通に話をして欲しいです」


ミーシャさんに、そう言われてしまった。


「これからは、『さん』はいらないのでミーシャと呼んでください」


敬称も不要だと言う。


「あ〜後、私もケインさんに習って、『リブ様』って呼びますからよろしくね」


続けてミーシャは笑いながら、茶化すようにそう言った。


何故かケインの真似をして、俺の事をリブ様と呼ぶと言っている。

これはあれだな……ケインと違って、盟主だからとかそういう感じじゃないな……完全に俺をからかって楽しんでる感じだ……絶対わざとのやつだ……


本当に勘弁して欲しい。

ただでさえ、女性と普通に話をする事だけでもハードルが高いのに……


俺がそんな事を考えていると、地面が揺れはじめた。

外でゴゴゴゴっと例の音が鳴り響く。


「始まったか……」


「何これ?地震?」


「今度は何の施設でしょう?」


三者三様のリアクションをして、3人で参謀本部の外に出る。

すると、陽炎城の左側に円形の建物が建っていた。


「ケイン、本は持ってる?」


俺がケインの方を見ると、


「これは、研究所ですね」


と、既に建物を特定していた。

さすがはケイン、仕事が早い。


なるほど、ミーシャに研究者の役職を与えたから研究所が出来たのか。


そして、内門の所にもう1つ、2階建ての建物が出来ている。


あの建物はなんだろう?

俺がそう思っていると


「リブ様、ミーシャさんが回復士の職業である影響でしょうか?研究所とは別に、ミーシャさんの城が病院へと変化したみたいです。後、リブ様の建設スキルで建物の移設も可能だそうです」


と、本を見ていたケインが説明してくれた。


何?それ?あの大きな建物を移動できるの?

後、城が変化したって?ケインの時は何も変化してなかったはず……

と、そこまで思った時に気がついた。


ケインの城は参謀本部の地下に、訓練所として吸収されていたのだ。


「でも、さすがにミーシャ1人で病院と研究所の両方をみるのは厳しいのでは?」


そう、病院があっても回復士がいなければ意味がない。

逆に研究所があっても研究員がいなければこちらも意味がないのだ。


「回復士か研究員を探さなければならないって事か……」


俺がそう言うと


「とりあえず3人だけだったら、私1人でも両方見る事は可能ですよ?でも早めに回復士を探して頂ければ、私は研究だけに集中できますね」


ミーシャが1人でも大丈夫と言っている。


でも、どうやらミーシャは回復よりも研究をしたいらしい。

じゃあ、何故回復士を選んだんだ?と俺が言うと


「だって、怪我をしたら治せないと困るでしょ?」


当然でしょ?と言わんばかりにミーシャが笑って言う。

まぁ俺が生産職を選んだ理由と変わりないか……


そう思ったらミーシャも合理的な人なんだな?

と思わず笑ってしまった。


「これから、よろしくお願いします」


ミーシャが俺とケインにお辞儀をする。


「こちらこそ、よろしくお願いします」


色々あったが、ケインとミーシャという2人の仲間が出来た。

これからも増えていきそうだな、と思いながら空を見上げると夜が近いて来ていた。


ちなみに、ミーシャのステータスは


名前 : ミーシャ

種族 : エルフ

職業 : 回復士(研究者)

性別 : 女

基本スキル

片手杖装備、両手杖装備、ローブ装備、軽鎧装備、ヒール、リカバリー、

光魔法使用、闇魔法攻撃無効、全魔法攻撃耐性

研究者スキル

開発研究、医療研究、軍事研究


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