57話 開始の刻
フランは、不思議そうな顔で俺達を見る。
「お願いですか?」
「ええ、実は俺達はもうレナードさんから、街を統合したいという要請を受けていて、協力関係にあります。そちらの情報もうちの偵察から入手済みです」
「なんと、レナードは既にリブ様と接触していたのですか、しかし監視の目がある中で一体どうやって?」
フランは、更に不思議そうな顔をしている。
しかし、その方法は教える気はない。
「レナードがこちらに協力しているということは、偵察者が暗殺者だったというのも嘘だったという事ですね。私をここに来るように仕向けて一体何をしようというのですか?」
フランは予想通り、頭が切れる男だった。
俺は、ケインと目を合わせると軽く頷き
「そこで、フランさんにも俺達に協力して頂き、このジーガという人が謀反を起こそうとしているという話を流して欲しいのです」
と、フランにデマを流すようにお願いする。
「なるほど、内通させて流言を……リブ様は優しいお顔で怖い事を考えられるお方ですね」
俺の顔を見ながら怖いと言いながらも口元は笑っている。
「どうだろう?協力頂けるのであれば、その後の話も続けたいのだが?」
俺は、フランに選択を迫る。
「考えるまでも御座いません。私は既にグランツを裏切る発言をしております。ここには監視もいませんので、腹を割ってお話も出来ますし、是非協力させて頂きたく存じます」
フランは俺達に寝返る事を了承した。
「ふー、良かった。これで少しでも楽に戦えそうだ」
俺の安心した顔を見てフランは、何かを感じとる。
「この後の話という事は他にも何か策を弄しておられるのですか?」
流石に鋭いな
「ああ、実は既に軍を城の近くにある森に配置してある。少数で城に潜入して奇襲を仕掛ける準備も出来ている。レナードさんに言ってシールドを張る話もついている。後は開戦のタイミングだけなんだ」
俺は包み隠さず、フランに現状を教える。
「な……」
フランは俺の話を聞くと、言葉に詰まる。
それはそうだろう、いきなり聞かされた内容は、既に戦争が始まる準備が出来ているという事だったのだ。
「それで?私に流言を流させたタイミングで攻撃を仕掛けると?」
「いや?逆だ。俺達が攻撃を仕掛けた後、流言を流して欲しい」
「え?そうなのですか?私もてっきり流言で混乱している間に攻撃を仕掛けるものだと」
ケインも驚いている。
「今、グランツは暗殺者を送り込んだ犯人を探しているはずだ。フランにこちらを任せたという事は、恐らくセシルが犯人探しをしているだろう。となれば他の城から送り込まれたか、ジーガが忍ばせたかの2択になる。当然何も知らないジーガは身の潔白を主張するだろう。となると、他の城から送り込まれたと考える。そこに俺達が攻め込めば、犯人は外部という事になる。しかし、そのタイミングで流言が流れれば疑心暗鬼に追い込めるという訳だ」
「リブ様は恐ろしい方ですね……しかしながら1つお願いがございます。そのセシルなのですが、先程お話差し上げた、私の元盟主なのでございます。出来ますればこの作戦に加えて頂きたく」
俺が内容を説明すると、フランが作戦にセシルを加える事を進言して来た。
「いや、それは出来ない。セシルを信用していないという訳ではない、そもそも犯人探しをしているのがセシルなのだからこの作戦を教えてしまったら、綻びが出てしまうかもしれない。そうなったら、グランツを疑心暗鬼に追い込めなくなってしまう」
この流言工作は、ジーガとグランツが激突してくれれば成功、もしそうならなかったら失敗だ。
まぁ、この作戦に全てを賭けている訳ではないので、そこまで重要ではないのだが
「その事なのですが、逆にセシルに知らせておいた方が成功率が高いと愚行します」
フランがセシルをどうしてもこちらに引き込めと言って来た。
俺達が知らない何かがあるのだろうか?
「なぜそこまでセシルをこの作戦に加えたいんだ?」
「はい、グランツはセシルよりもジーガを気に入っています。そのジーガが裏切ったと言われてもセシルの狂言だと受け取られるでしょう。そのくらいジーガとセシルでは差があるのです。しかし、セシルをこちらに引き込んでおけば、こちらの戦力として一緒に戦ってくれると思います。戦力が多い方がリブ様もよろしいかと」
俺はてっきり、フランが参謀に登用されていたので、ジーガよりセシルの方が上だと思っていた。
しかし、実際はセシルが嫌われているから、フランが参謀なのだと言われた。
「じゃあそれで行こう。時間もないから、とりあえずガンマを解放してグランツを倒しに行くか」
俺はセバスチャンにガンマと使者を解放するように言うと、ケインとノエルを連れてグランツの城に向かう事にした。
街を抜けると、城門の内側にマーチとカイザー達が出撃の時を待っている。
「マーチ行くよ、準備はいい?」
「はい!!みんな、リブ様が向こうの城に入ったら全速力で出陣よ!!」
「「おお〜〜」」
俺の言葉に、マーチが兵士達の士気を上げる。
「カイザー、ギート無理はするなよ?」
「はい、お任せください」
俺はカイザーに一言声をかけると、城門を抜けてグランツの城に向かって歩き出す。
少し後ろに、フランとガンマと使者が付いて来ていた。
後ろにいるガンマと使者に不審がられないように、狩りをするかのように一度森の中に入る。
チャコ達と合流する予定もあるので、カモフラージュには丁度良かった。
城門にいる騎兵は訓練だと言うように、フランに伝えてあるので大丈夫だろう。
そして、森に入った俺達はチャコ達と合流すると、フラン達が街の中に入るのを確認して
「よし、ここからが本番だ。ロイ、ネージュ頼んだぞ」
とロイとネージュに声をかける。
「はい、頑張ります」
ロイは小声で俺に返答する。
「じゃあ行こうか」
俺達は森を出て、グランツの城に入る。
街に入ると、そこに1人の女性が立っていた。
「私はレナード様から派遣された商人です。商談をしに来た振りをしてください」
と小声で耳打ちして来た。
「本日は、商談を受けて頂きありがとうございます」
女性は大きな声でそう言うと
「どうぞこちらへ、私の商店がございますのでそちらでお話しを致しましょう」
と言いながら、俺達を内門の中にある商店に案内する。
店の中に入ると、奥の部屋に通される。
「ここでしたら、監視の目はございませんので通信は可能です」
そう言うと部屋から出ていった。
俺は本を取り出すと、グループ通信を開始する。
「潜入に成功した。マーチ頼むぞ」
俺がそう言うと、マーチの号令がかかる。
それに呼応するかのように、城壁の方から大きな声がする。
と、同時に街にシールドが張られた。
そのタイミングで、まずチャコとマガストールが隠れ身と忍び足でグランツの城に向かう。
俺とケイン、ノエルは商店の中から外の様子を伺う。
すると、騎兵隊が出陣して行くのが見える。
「あれがジーガかな?」
先頭に大男がハンマーを肩に乗せて走って行く。
俺達は騎兵が通り過ぎるのを待って、店から出て行くのだった。




