表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
城から始まる異世界物語  作者: 紅蓮
大陸騒乱編
158/160

155話 悪魔龍と魔方陣

黒炎で燃やされた草原は何も残っていなかった。

陣営は離れた場所にあったので無事だったが、外にいた兵士が何人か倒れている。


「すぐに野戦病院に運んで手当てを!!他の者達は陣営に戻れ!!」


マーチがすぐに怪我人を介抱している。


「はっ!!」


さて……どうしたものか……

これだけデカいと、ここで戦えば陣営も無事では済まなくなってしまう。


『主様!!まずはここから離しませんと危険でありんす』


「そうだな、でもどうやってこいつをここから離そう?」


アスタロトが2発目を放つ前になんとかしないと……


「ルシファスはどうにか出来ないのか?眷属なんだろ?」


「ですから無理ですわ?それにあの色は邪気が流れ込んでしまっていて自我もないですわ?」


「そうか……困ったな……」


俺達はアスタロトを見上げる。


「そうだ!!ドリー達を呼んでみよう!!」


俺は指輪からドリーとリコルを呼び出す。


『今日はどうしたクロート?』


「ああ、あのドラゴンをここから引き離したいんだ。協力してくれるか?」


『ドラゴン?』


ドリーとリコルは俺の目線の先を見る。


『な!!なんだ?あれは?』


『アスタロトでありんす。邪気を入れられて無理矢理操られているでありんすよ?』


『なるほどな……アスタロトか……』


『それは難儀ですわね……やるだけの事はやってみましょう』


ドリーとリコルはそう言うとアスタロトに向かって行く。


「それで?妲己はどうにか出来そうなのか?」


『今のままでは無理でありんすね……まずはあの邪気をなんとかしなければならないでありんす……』


「そうか……どうするか……マーチ達は夜襲に備えて動かせないし、俺が行く訳にもいかないしな……」


「それでは俺達が行こう」


いつの間にか俺達の後ろにゼキルと羅刹が立っていた。


「いいのか?」


「ええ、問題ないです」


「じゃあ任せた」


『術者だけを倒しても邪気は消えんでありんす。魔方陣を確実に破壊するでありんすよ』


「わかった。では行って来ます」


ゼキル達はリゲル軍に向かって走って行く。


「これで大丈夫か?」


『いえ、もうひとつ……あちらからも邪気を感じるでありんす……』


妲己はリゲル軍とは別の場所を見る。


「あっちには……」


「ええ、私の軍がいる方向ですわ?」


ルシファスがその方向を向く。


「と言う事はリゲルの王城にも魔方陣があるって事か?」


「そのようですわね……あの嫌な感じは邪気でしたか……ではそちらは私達が受け持ちますわ?」


「ああ、でも王城に手を出せばドラゴンが出てくるんじゃないか?」


「リブ様……私もドラゴンですわよ?それに悪魔達は死なないのでご安心を」


そうだった……

いつもアホな事ばかりしているから忘れてたけど、ルシファスは聖なるドラゴンのニーズヘッグだったな……


「じゃあ王城の方はルシファス達に任せる」


「わかりましたわ」


ルシファスはリゲルの王城に向かって飛んで行く。


「後は邪気が切れるまでこいつを足止めだな」


アスタロトの方を見るとドリー達が必死に戦っていた。


『邪気が切れた所で封呪を行うでありんすからその時はアスタロトから離れてくださいまし。そうでないと主様も一緒に封印してしまう事になってしまうので』


「わかった。その時は急いで離れるようにするよ」


俺はドリー達の元に向かう。


「ドリー大丈夫か?」


『大丈夫ではないな……そもそも悪魔龍は不死だしな……』


そうか……ドラゴンの姿をしていてもこいつは悪魔だった。


「どうする?」


『自我がないせいかこちらが攻撃しても意識をこちらに向けてくれん……それに悪魔だから攻撃しても全く効いていないのだ……』


「首輪でも付けて引っ張って行くしかないって事か」


『そうなるな……だがこんな大きさのドラゴンに首輪など……』


ドリーはそこまで言うと、考え込む。


『『そうだ!!』』


そして、ドリーとリコルが同時に声を上げる。


『クロート様!!ハティをここに!!』


リコルが興奮している。


「ハティを?」


『ああ、クロートよハティならこいつに首輪を付けれるかもしれん』


ドリーも何かを思いついたようだ。


「わかった、ノエルに頼んでワープで……」


俺がそこまでいうと


『いえ!!指輪から呼び出せますわ!!」


リコルが俺の言葉を遮るようにそう言ってきた。

指輪でハティを?

やった事はないのだが大丈夫だろうか?


『神獣召喚!!ハティ来い!!』


俺はドリー達に言われるがまま、指輪からハティを呼び出す。


『リブ様、お呼びでしょうか?』


すると、ハティは人化ではなく狼の姿でその場に現れる。


「ああ、あのドラゴンに首輪を付けてここから引き離したいんだ。出来るか?」


俺の言葉にハティがアスタロトを見る。


『悪魔龍ですか……恐らく出来るかと』


ハティもすぐにアスタロトだと気がついたようだ。


「じゃあ早速頼む」


『やっとリブ様のお役に立てる時が来ました』


ハティはそう言うとアスタロトに向かってジャンプする。


『シャドウチェイン!!』


ハティの体から複数の黒い鎖がアスタロトに向かって放たれる。

そしてその鎖がアスタロトの体に巻き付くとそのまま締め付けていく。


『ドリー、リコル!!今だ!!』


ハティの声にドリーとリコルがハティの体を掴むと、そのままアスタロトと一緒に引きずって行く。


「ここなら大丈夫だろう。後は邪気が切れるまで足止めだな」


俺達はそのままアスタロトと戦闘に入るのだった。



一方その頃、ゼキルと羅刹はリゲル軍の後方にいた。

クリオからの情報で、そこで韓国軍が魔方陣で何かをしていると聞いたからだ。

そして、そこで監視を続けているクリオと合流する事になっていた。


「クリオさんどうですか?」


「おお、ゼキルさん。今は数人で何か儀式みたいなのをしていますが、リーダーはどこかに行ってしまいました」


「という事はあれを潰せばいいって事か」


「だが、そう簡単にはいかなそうだぞ?」


「羅刹?どういう事だ?」


「あれを見ろ」


羅刹が魔方陣を指差す。


「あれは……罠か……」


「そういう事だ。あれはフェイクで本当の魔方陣はここではなさそうだ」


羅刹は魔方陣の後方を見る。

そこから薄らと嫌な感じがする。


「あっちだな?あのテントから嫌な感じがする」


リゲルの陣営から離れた場所に不自然なテントがあった。


「ちょ……あそこはリゲル軍の食料庫ですよ?中も確認したので間違いないです」


クリオが慌てて羅刹の意見に反論する。


「という事はそれも偽装だったという事です。食料庫だと思わせておけば安全に儀式が出来ますから」


羅刹がクリオの方をチラッと見る。


「そ……そんな!!しかし、韓国軍のリーダーはあっちに行きましたよ?」


クリオは陣営の中央を指差す。


「なるほどな……そこが入口だって事か……」


ゼキルがクリオの指差す建物を見る。


「ええ、今回城を持って来なかった事が不自然でしたが恐らくそういう事でしょう」


羅刹もゼキルの意見に賛成のようだ。


「ど……どういう事ですか?」


「あの建物から地下を通ってあのテントに繋がっているんだ」


「ええ、そしてあのテントには城への移動手段もある……という事です」


「移動手段?」


「恐らくワープポータルかと」


「ワープポータル…‥ですか?」


「ええ、地上は食糧庫……そして地下にはワープポータル…‥恐らくそういう事でしょう」


「後はどうやってシールドが張られている城に忍び込むかって事か」


ゼキルと羅刹は頭を悩ませる。

地下から行くのは間違いなく防衛兵士が守っていたり、罠が仕掛けてあるはずだ。

だとすると正攻法では無理だろう。

かといってシールドが張られている城に外から忍び込むのも現実的ではない。


「ある意味詰みですね……」


羅刹が諦めかけたその時、


「あれ?そういえば」


クリオが何かを思い出す。


「クリオさんどうかしましたか?」


ゼキルがクリオを見る。


「ええ、あの城の中に小太郎さん達がいるはずです」


「は?」


「え?」


ゼキルと羅刹は顔を見合わせる。


「それは間違いないのですか?」


「ええ、小太郎さんとハヤテさんが偵察任務で城内にいるはずです」


クリオの言葉にゼキルは慌てて本を取り出す。


「小太郎さん聞こえますか?」


ゼキルは本に向かって小声で話しかける。


「その声はゼキルさんですか?どうしました?」


すると、本の向こうから小太郎の声が聞こえてきた。


「小太郎さん達がリゲルの城内にいるというのは本当ですか?」


「ええ、リゲル軍の兵士に扮して潜入して、今は宿屋におります」


小太郎の言葉にゼキルと羅刹は小さな光を見る。


「小太郎さん、リブ様からの特殊任務です。その城内のどこかに魔方陣があると思うのでそれを破壊して欲しいのですが出来ますか?」


「魔方陣……ですか?それってこれの事ですかね?」


小太郎が不意におかしな事を言う。


「もしかして魔方陣の近くにいるのですか?」


「これがそうかわかりませんが、食堂の床に魔方陣が描かれています」


それを聞いたゼキルは絶句する。

まさか宿屋の食堂に魔方陣があるなんて事があるのだろうか?


「羅刹です。申し訳ありませんがそこから邪気は出ていますか?」


言葉を失って固まっているゼキルの隣から代わりに羅刹が声をかける。


「邪気ですか?出てないようですが?邪気というより別の何かを感じますね」


「別の何か……ですか?」


「はい、体が重くなって何かを吸われている感じですね」


「もしかして、その魔法陣は……すみません、その魔法陣は壊せそうですか?」


「壊す……ですか?宿屋自体が壊れて大変な事になりそうですが」


「そう……ですか」


「羅刹何かわかったのか?」


「憶測ですが、この邪気はリゲル軍の兵士達から生気を吸い取って本命の魔法陣を起動している可能性があります」


「な……マジか?」


「ええ、その証拠に兵士が集まる場所に魔方陣が書いてあり、そこから何かを吸い取られている感覚がある……という事です」


「なるほど……それで?どうする?」


ゼキルは羅刹を見る。


「シールドのせいで街の中には入れない。更に建物やテントの地下通路には兵士が配置してある可能性が高い……ですがその先には既に小太郎さん達がいる……となればここは小太郎さん達と協力してなんとか城に潜入するしかない」


「なるほどな……簡単に言えば挟み撃ちって事か」


「です」


羅刹は笑いながらゼキルの言う事を肯定する。


「だが、騒ぎが起これば集まってくるぞ?」


「ええ、ですので4方向から攻めましょう」


「4方向?」


「ゼキルは正面から強行突破してください。そこに小太郎さんが後ろから挟み撃ちます。そして私とハヤテさんはあちらから」


羅刹はそう言うと城の後方を指差す。


「なるほどな、城にはシールドがない……という事か」


「はい、街にはシールドがありますが城自体にはシールドは張れません。ですのでそちらから攻めようと思います」


「だったら全員で城に行った方がいいんじゃないのか?」


「それこそ相手の思う壺です。シールドのない所が手薄な訳がありませんから」


「それで俺達に囮になれって事か」


「まぁ簡単に言えばそんな感じです」


「全く……笑いながら怖い事を言うなよ……でもそれしかなさそうだな。行くぜ?」


「はい、しっかり大騒ぎしてくださいね」


そう言うと2人はそれぞれ走って行く。


「結局最後まで俺は蚊帳の外だったな……」


クリオは寂しそうに下を向くのだった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ