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城から始まる異世界物語  作者: 紅蓮
大陸騒乱編
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143話 南方国境侵略戦争 1日目

俺が鬼人の街を統合させた頃、リゲルの国『デスモス連邦国』の南方ではクイーン軍との戦いが始まろうとしていた。


クイーン軍の総大将はボルド。

一方、リゲル軍の総大将はコランだ。


「城?こんな所に城などなかったはずだが?」


ボルドは目の前にある城を見上げる。


「リゲルめ……長期戦に持ち込んで兵糧攻めにするつもりか……だが!!短期で決着をつけてしまえばどうという事はない!!ジェイク!!騎兵隊を前に出せ!!ラルフの歩兵隊を2線で待機!!リリスの攻城兵器隊はジェイクの支援!!急ぎ陣形を組め!!」


クイーン軍が陣形を展開して行く。

ジェイクを先頭に矢尻状に騎兵隊が陣取るとその後ろ側に歩兵隊が逆三角形になる形になり後方にラルフがいる。

上から見ればダイヤ状になっているのだ。

そしてその両翼後方にリリスの攻城兵器隊が待機している。


「コラン様、相手の陣形が整ったようです」


「ああ、人様の国に攻め込んできた蛮族には死をもって償ってもらわないとな……総員!!戦闘準備!!とっととお帰り頂こう!!」


コランも陣形を組み始める。


ギャスパーのヨーロッパ軍『重装歩兵隊』が前方に4列で真横に並ぶと、中央にシャディのアメリカ軍『銃器兵隊』が陣取る。そしてその銃器兵隊を囲むように左翼にチャンのベトナム軍『大盾騎兵隊』が、右翼にレオのロシア軍『コサック槍騎兵隊』が陣取る。

後方左翼には『カタパルト隊』、右翼には『バリスタ隊』が援護する陣形になっていた。


お互いの準備が整うと、ほとんど同時に両軍から号令がかかる。

開戦の時である。


ジェイク率いる騎兵隊が100騎ほどでギャスパーの重装歩兵隊に突撃してくる。


「防御体形!!」


ギャスパーの号令に重装歩兵隊が守りを固める。


「騎兵隊!!突っ込むぞ!!」


ジェイクは構わず重装歩兵隊に向かって行く。


「あそこだ!!一点突破!!」


そして、何かを見つけると方向を変えると三角形だった騎兵隊が一直線になり、戦闘のジェイクが槍を真っ直ぐ前に突き出すと重装歩兵隊の小さな隙間に入って行く。


「入られました!!」


「円形陣形!!突破はさせるな!!」


横に並んでいた重装歩兵隊が円を描くように両翼を後ろに回し厚みを作って行く。

そして、突破してくる騎兵隊を左右から締め付けるように押し潰す。


「ジェイク様!!両サイドから挟み込まれます!!」


「右に抜けるぞ!!」


そう言うとジェイクは右手に方向を変え、装甲の薄くなった隙間を抜けて行く。


「包囲から出ます!!」


ジェイクは重装歩兵隊の包囲から抜け出すと味方の陣に合図を出す。

すると、ジェイク達のいる方と逆側の左手側に向かって弩弓が飛んでくる。


「目標!!大盾騎兵隊!!打て!!」


クイーン軍後方からリリスの声が響き渡る。

すると木で出来た大きな砲台のような装置から第2射が発射される。


「大盾騎兵隊!!上空からの矢に対して防御!!」


今度はリゲル軍からチャンの声が響く。

大盾騎兵隊はその号令に反応するように持っている大盾を上に構える。

そして放たれた矢を全て防ぐと第2射に備える。


「ふっ!!かかったな?」


リリスが不敵な笑みを浮かべると、ドーン!!という爆発音が戦場に鳴り響く。


「大盾騎兵隊の半数がやられました!!」


城の城壁に陣幕を張っていたコランの元に報告が入る。


「爆弾付きの矢か……1射目は囮という事か……」


コランは陣幕から出ると、城壁の上からお互いの位置や戦況を確認する。


「やはり相手の方が戦い慣れているな……軍力でも向こうの方が上か……」


「はい、こちらは防衛戦ですので無理に攻める必要もないのですが、流石にこれは……」


「バリスタ隊!!発射準備!!」


城壁の上からコランがバリスタ隊に指示を出すと、後方右翼のバリスタから大きな矢が発射される。


「撃ち落とす!!」


リリスは左翼の攻城兵器から爆弾付きの矢を発射すると、両軍の中央の上空で爆発が起こる。


「中々やるな……カタパルト隊発射!!」


今度はコランが右翼からカタパルトによる爆弾を発射する。


「左翼攻城兵器隊!!発射!!」


リリスによる迎撃が行われると、再度空中で先程以上の爆発が起こる。

空中で攻城兵器同士の一進一退の攻防が行われている一方で、地上ではジェイクと重装歩兵隊の鍔迫り合いが行われていた。


「このままではジリ貧だな……一度退がるか……」


ジェイクは騎兵隊を退却させるよう指示を出す。

円形になっていた重装歩兵隊も少しづつ元の一直線の陣形に戻っていく。


すると、陣形を戻している重装歩兵隊の一部が隙間を開け出す。


「なんだ?」


ジェイクも応戦しながらその事に気がついた。

次の瞬間、その空いた場所からシャディの銃器兵隊から弾丸が飛んでくる。


「マジかよ!!あれってアサルトライフルか?」


ジェイクの目線の先にはM16自動小銃を構えた兵士が自分達を狙っていた。


「急いで撤退だ!!あんなのに狙われたら流石に厳しいぞ!!馬を狙われないように大きく蛇行しながら速やかに戻るぞ!!」


100騎の騎馬が自軍に向けて大きくうねりながら戻って行く。


「簡単には逃しませんよ?騎乗している兵士を狙え!!」


そして、再度一斉射撃が始まる。


「シャディ様このままでは味方の重装歩兵隊にも当たってしまいます!!」


「ふぅ……撃ち方やめ!!」


シャディの掛け声で射撃が止まる。


「半分……まではいかなかったですか……」


30〜40騎ほどの騎兵が負傷して地面に倒れている。


「あとは重装歩兵隊に任せましょう」


その倒れた兵士に重装歩兵隊が攻撃を仕掛ける。


「ジェイク様……30騎ほどやられました……」


「まぁそのくらいで済んだのならいいだろう。しかし、あんな物まで作っていたとはな……次は不用意に突っ込んだらあいつの餌食だな……」


ジェイクは後ろを振り返りながら次回の突撃方法を考える。

そして、自軍に戻ったジェイクは騎兵隊から離れてボルドの元に向かう。


クイーン軍後方には木杭で囲まれた野営地が作られており、大小様々な天幕があった。

野営地は国境付近にあり、食料や物資を自国の街から運べるように道が出来ている。

そしてその野営地の1番奥に一際大きな天幕が張られていた。


「よう!!ボルドはいるか?」


天幕の前から声をかけながら中に入る。


「ジェイクか?どうした?」


「あちらさんアサルトライフルを中央に置いてるぜ?不用意に突っ込んだら銃弾の餌食だぞ?」


「自動小銃か……面倒だな?」


「ああ、モデルはM16自動小銃みたいな感じだったが、装弾数は20くらいだな?」


「それで?銃器隊はどのくらいの兵数なんだ?」


「50くらいじゃないか?撤退しながらの確認だから正確ではないけどな」


「50くらいか……ロジットいけるか?」


ボルドは隣にいるロジットを見る。


「ジーガとビルを連れて行ければ……だな」


「ジーガはいるが、ビルは今向こうの偵察中だ……」


「それなら無理だな、ビルの隠密スキルが必要だからな」


「戦場は膠着状態だからな……とりあえず今日の所は攻城兵器隊で様子を見て、地上戦は明日以降だな」


ボルドの提案にジェイクとロジットは大きく頷く。


「じゃあリリスに伝えてくるよ」


ジェイクは天幕を出ると、リリスに伝言を伝えそのまま騎兵隊に合流する。

こうして1日目の戦場には日が暮れるまで爆発音が響くのだった。


「全軍戻れ!!今日の戦闘はここまでだ!!」


ボルドが全軍に指示を出すと、クイーン軍は野営地に戻って行く。


「コラン様、クイーン軍は野営地に入りました」


「よし!!こちらも城に戻ってゆっくり休ませろ」


リゲル軍も後方の城に兵士を戻す。

日も暮れ静まり返った戦場には遺体処理部隊が味方の遺体を自軍に戻す作業を行っていた。



そしてその光景を少し離れた場所から見ている人影が2つあった。


「初日からこれじゃこの戦争は長引きそうね」


「そうですね……何日かかる事やら……」


「わからないけど、私達の仕事はこの戦争の結末を見届ける事だから」


「ですね……」


「じゃあ私は一度報告に戻るから後はよろしくね」


そう言うとチャコはイグニアス王国の国境に向かって走り出す。


「それにしてもすごい戦いだったな〜これからこんなのが続くのか……それにその内俺達も……」


クリオはその場に座り込むと空を見上げる。


「さて、ここで野宿する訳にはいかないな……誰かに見つかる前に引き上げないと」


クリオは立ち上がると戦場を後に、近くの街に向かう。

1日中戦争の一部始終見ていた2人は、それぞれの思いを胸にそれぞれの夜を迎えるのだった。



その夜、ボルドの天幕では翌日に向けて戦略会議が行われていた。


「さて、明日の戦略を決めるわけだが、まずはジェイクから聞いた銃器隊への対策を話し合おうと思う」


「あれは考え無しで突っ込んでいったらあっという間に蜂の巣だぞ?」


ジェイクは思い出しながら身震いしている。


「でも、攻城兵器じゃ無理よ?狙って撃ってもカタパルトかバリスタに撃ち落とされるわよ?」


リリスも今日の戦闘で攻城兵器はほぼ互角であることを確認している。


「どうにかあそこまで辿り着ければなんとかなるんだけどな」


ロジットが何か策がある言い方をする。


「ロジット?策があるのか?」


ボルドがロジットを見る。


「ああ、俺のスキルで無効化する事は可能だな……だがいくつか問題がある」


「問題とは?」


「まず、相手に気づかれないように接近する事とスキルが発動するまでの間攻撃を凌いでくれる護衛が必要だ。それに、あくまで今あるアサルトライフルを無効化するだけだから新しいライフルが出てきたら意味がない」


「まぁ今あるライフルが無効化出来れば多少は時間を稼げるな……護衛はジーガを連れて行けばいいが、気づかれないように接近するのをどうするかだな……」


「ビルはまだ戻らないのですか?」


「あいつは今向こうの戦略会議を提案中だ」


「それってこっちも偵察されているのでは?」


リリスが天幕を見回す。


「それなら大丈夫だ。こっちの天幕には関係者以外入れないように細工をしてあるからな」


「ねぇ……もしかして……」


「ヤバくないっすか?」


「リリス、ラルフどうした?」


「いえ……それは向こうも同じ事になってない?」


「俺もそう思った」


天幕内が一瞬無言になる。


「ビル……生きて帰ってくるかな?」


ラルフが天井を見上げる。


「そ……それは……」


「ボルドはいつもそうよね……まぁビルの事だから大丈夫だとは思うけれど……」


ボルドとリリスも困惑した顔をしている。


「ビルなら大丈夫だ!!あいつはいくら命令でも無理をするやつじゃない!!それに小心者だからな!!」


ジーガが大笑いしている。


「酷いな〜いくら僕でもそこまで小心者じゃないよ?」


愚痴を言いながら天幕の入口からビルがフードを外しながら入ってくる。


「おお!!ビル!!無事だったか!!」


それを見たボルドが大声で無事を確認する。


「一応生きてはいますね……ただ……みなさんの思っている通り、向こうの城には入れませんでした……」


「いやいや!!無事ならそれでいい!!」


ボルドは自分のミスを隠すようにビルの無事を祝う。


「あまり無事ではないんですけどね……それと……僕の隠密スキルじゃあの重装歩兵隊を抜けないですね」


ビルが申し訳なさそうに答える。


「どういう事だ?」


ロジットが不思議そうにビルを見る。


「この通り……」


ビルがロングマントを取ると、左腕がなくなっていた。


「ちょっと!!その左腕はどうしたの?」


リリスが驚きながらビルに駆け寄る。


「隠密スキルで敵の大将の所に行こうと思ったらさ……剣士にスパッと……」


ビルが下を向く。


「そうか……すまない……」


ボルドがビルに向かって謝る。


「しかし……ビルの隠密スキルを見破る剣士がいるって事か?」


ジェイクが困った顔をしながらビルの左腕を見る。


「うん……あの人には僕が見えているみたいだった。それに……」


「それに?」


「あの剣士以外にもバレてた気がするんだ……」


「なんだと?」


ビルの言葉に流石のジーガも驚いている。


「と言う事は俺の策は使えないな……」


ロジットも困った顔をしている。


「そんな事よりビルの治療が先よ!!さぁ行くわよ!!」


リリスがビルを連れて天幕から出て行く。


「相手を侮っていたな……今夜は長くなりそうだ……」


後に残ったメンバーは頭を悩ませる。

こうして作戦会議は振り出しに戻り、そのまま夜は更けて行くのだった。

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