表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
城から始まる異世界物語  作者: 紅蓮
大陸騒乱編
142/160

139話 初めての旅と鬼人の街

編成会議から数日後、俺はマガストールと一緒に国境の塀の前にいた。


「さて、ここからはリゲルの国だから気を引き締めていかないとな」


「はい、特にリブ様はこの国から出るのも初めてですから」


「そうですよ?絶対にバレないようにしてくださいね?」


「ええ、私達も初めてですので気をつけないと」


……

…………

………………


ふ〜結局4人とも着いてくるとは……

なんでこんな大所帯で行かなければならないんだ……


そもそもノエルに行ってもらってワープで移動すれば良かった……

まぁ、今更言っても始まらないのだが、たまにはゆっくり旅をしたいと思った俺が悪いんだろうな……


「とりあえず同行は許可したけど、一応俺達は商人だからな?そこの所間違えないでくれよ?」


「もちろんですわ?ここからは夫婦として……」


「カラさん?ふざけないでください!!どこをどう見たらあなたがリブ様の伴侶に見えるというのですか?」


カラとアイーナが睨み合う。

ってこれ前回も見たな……


「はいはい、喧嘩するなら帰ってもらうぞ?それから俺は『独身』の商人として行くからな?4人はメイドと使用人って設定だからな?間違えるなよ?」


「了解しましたわ?」


「申し訳ありません」


「それから……紅玉と霞は何故忍び装束なんだ?」


「私達は影から護衛するのが仕事ですから」


「はい、私達がしっかりお守りしますのでご安心を」


うーん……この2人もどこかズレてるよな……

影からとか言いながらがっつり一緒にいるし……


「じゃあ2人はここからは一緒にいないんだな?」


「え?」


「え?」


「え?」


………

……………


「え?じゃないよ!!影からって言ってるんだから姿を見せちゃダメだろ!!そもそもその格好は逆に目立つんだよ!!」


全く……こんな調子で大丈夫か?

マガストールは息を潜めて気配を殺してるし……


「マガストールそろそろ行くぞ!!」


俺の言葉にマガストールが戻ってくる。


「それで?鬼人族の街までどのくらいかかるんだ?」


「普通に歩くと3日はかかるかと」


「3日か……それまでに戦争が起きなければいいんだが」


「そうですね……開戦してしまったらかなり大規模な戦争になるようですし」


俺とマガストールが心配していると


「戦争ってなんの事ですの?」


カラ達が不思議そうな顔で聞いてくる。


「あれ?言ってなかったか?リゲルの国にクイーンの軍隊が攻めてくるんだ。リゲルはまだ気がついていないみたいだけど、流石に攻められたら防衛の為に応戦するだろう。だからかなり大規模な戦争になるはずだ。その戦場になりそうなところに鬼人達の街があるらしい。というわけで一刻を争うんだ」


「そんな事聞いてませんよ?そんな危ないところに行くんですか?」


「今ならまだ間に合うから帰ってもいいよ?」


「帰りませんよ!!せっかくリブ様と旅行できるんですから!!」


いや……旅行ではないんだが……


「そんな事より急ぐぞ」


そう言うと俺達は国境を超えてリゲルの国に入る。


イグニアスと景色は変わらないが、モンスターの領域がそのまま放置されている。

特に倒す必要もないので今回は素通りして行く事にした。

そして、3時間ほど歩くと小さな街に着く。


「リブ様、こちらがザザの街です。まだリゲルに支配されていない数少ない街の1つです」


「と言う事は今日はここに泊まるのか?」


「はい、宿屋に話をしてきます」


マガストールは真っ直ぐ宿屋に向かって歩いて行く。


「それでは誰がリブ様と一緒の部屋に泊まるか決めましょう」


「鬼人達の街まで3日、そこから獣人の街まで数日イグニアスまで数日……とりあえず全員1回はチャンスがあるわけですね?」


「順番を決めておきましょう」


女性陣が何かコソコソ話し合っているが、どうせろくな事ではないだろう。


「リブ様、お部屋が取れました。しかしながら3部屋しか無いようで相部屋になります」


戻ってきたマガストールの説明を受けると女性陣が小さくガッツポーズをしているように見えるが気のせいだろう。


「それは残念ですわね?では……」


「俺とマガストールで1部屋、後は女性達が2人ずつだな」


カラに何か言われる前に俺が部屋割りを決める。


「え〜〜!!」


「いや……当然だろう?」


何故か残念そうなカラ達を後にさっさと宿屋に向かう。


「お部屋は2階になります。こちらがお部屋の鍵でございます。食事はこちらの食堂でお願いします。料金は別になりますのでお気をつけください。ではごゆっくりどうぞ」


宿屋の主人から鍵を受け取ると、2階に行き部屋に入る。


「ふ〜〜なんか別の意味で疲れるな……」


「しかし、よろしかったのですか?」


「何が?」


「カラさん達の事です。リブ様と同じ部屋に泊まりたかったのでは?」


「そうなるとマガストールも必ず誰かと同部屋になるって事だぞ?チャコに殺されたくはないからな」


「なるほどです……それは私も身に覚えのない罪で裁かれたくはないですね」


俺とマガストールは笑いながらベッドに腰掛ける。


「それで?鬼人達の規模はどのくらいなんだ?」


「はい、鬼人族は老人、女性、子供も合わせると500人程度です。戦闘要員として招集できる男性は100人くらいかと」


「100人か、まぁ小隊としては丁度いいな。ドラニュートも200人くらいだし、ロイ達歩兵隊もいるしな」


「特殊能力は持っているのか?」


「申し訳ありません。そこまでは……」


「まぁそれは直接会えばわかるか」


マガストールと情報のすり合わせをしているとコンコンと部屋をノックする音がした。


「はい」


「リブ様、カラです。まだ早い時間ですし、お食事の前に街に出てみませんか?」


こんな小さな街を散策しても何もないと思うけど……


「私は休ませていただきますので、リブ様はどうぞ」


マガストールはそう言うとベッドに横になってしまった。

まぁやる事もないしいいか……


「わかった、今行く」


俺は渋々ながら扉のところまで行く。

でも5人で歩きまわるっていうのはどうなんだ?

そう思いながら部屋の扉を開けると、そこにはカラが1人で立っていた。


「あれ?カラ1人?」


「はい、今日は私の番ですから」


私の番?

もしかして、これからずっと日替わりで相手が変わるって事じゃないよな?


「えっと……ちなみに明日は?」


「明日は霞さんの番ですわ?」


やっぱりそういう事なのか……

俺は肩をガックリと落とすと諦めモードに入った。


4日間の辛抱か……

ってあれ?鬼人族の街まで3日、その後獣人族の街まで数日、イグニアスまでさらに数日……

もしかしてこの旅の間、毎日とかいう事じゃないよな?

流石にそれはきつい……

うん!!どこかで諦めてもらう事にしよう!!


俺はそう決意するとカラと街に出て行くのだった……




それから2日後、俺達は目的の街に辿り着いた。

この3日間カラ、霞、紅玉と謎のデートを繰り返して何故か無駄に疲れてしまっているのだが、それも後1日で終わりだ。


「マガストール、鬼人族の長に会いたいんだけど、アポ取れるか?」


「聞いてまいりますので、ここで少々お待ちください」


マガストールはそう言うと近くにいた鬼人に話かけている。

そして、少し困った顔で戻ってきた。


「リブ様、どうやら鬼人族には長がいないそうです」


「え?長がいない?じゃあ誰がこの街を仕切っているんだ?」


「それが……」


「ん?」


「各々繋がりはあるそうなのですが、特別誰かが取り仕切っているという事はないらしく……」


それは困った……

じゃあ一体誰と話をすればいいんだ?

ここまできたのに、鬼人族を仲間にできないって事なのか?


俺達が困っていると、そこに数人の若い鬼人達が寄ってきた。


「おい!!そこのお前達!!貴様らは何者だ?この街に何の用があってきた!!」


先頭にいる1人の男が怖い顔で睨みつけてきた。


「失礼ね!!この方はリブ様と言って!!」


カラがそこまで言うとアイーナに止められる。


「カラさん、私達は今はまだ商人です。素性を明かすのはまずいかと」


「そ……そうでしたわ……」


カラは下を向いて黙り込む。


「ふん!!どこかの商人風情が何をしに来た!!この街で商売をする事なんて出来ないぞ?」


ん?どういう事だ?


「すまない、連れが失礼した。それで?商売が出来ないというのは一体?」


「そもそも俺達は金を持っていないからな!!商人から買い物をする事なんて出来ないのさ!!」


金がない?

という事は物々交換って事か?


「あ〜〜先に言っておくが物々交換でもないぞ?鬼人族は全員家族同然だからな、食べ物は全員で分け合っているんだ」


は?500人分の食料を分け合っている……だと?

そんな事できるのか?

そもそもどうやってその食料を集めているんだ?


「不思議そうな顔をしているな?まぁいい、見せてやるついて来い」


「おい!!大丈夫か?こんなどこの誰かもわからない奴らを」


「ああ、何となくだがこいつらは大丈夫な気がする。それに何かあれば俺が始末してやる」


「お前がそう言うなら構わないが……」


男達が何やら揉めていたが、この男は相当信頼されているようだ。


「こっちだ」


男はそう言うと街の奥に向かって歩き出す。

とりあえず俺達は、ついて行く事にした。


「リブ様大丈夫でしょうか?このまま人気のない所に連れて行かれて突然襲いかかってきたら……」


アイーナが小声で聞いてくる。


「ん?その時はやり返せばいいんじゃないか?」


「そうですわ?あんな奴らリブ様お1人で倒せますし」


カラが自慢げにアイーナに返すと紅玉と霞も大きく頷く。

って俺が1人でやるんだ……

というか……だとすると、君達は一体誰の為の護衛なの?


そんな事を考えながら歩いて行くと街の外に出る。

するとそこには、大きな農園と牧場が広がっていた。


「ここで作物や家畜を育てているのさ」


「なるほど、自給自足の生活をしてるって事か」


「ああ、だから食べ物には困らないし、衣類は女性達が折ってくれるから問題ないんだ」


そう言われて初めて男達の服装を見る。

和服?洋服?

なんとも言えない不思議な着物のような格好をしている。


上には着物?袴?のような物を羽織っているが下を見るとかなりダボっとしたズボン?のような物を履いている。

このズボンどこかで見たことがあるんだが……どこだっけ?

あ!!ニッカポッカだ!!

日本の工事現場でよく見る下がダボっとしたあのズボンのようだった。


というかセンスがないな……

着物にニッカポッカって……


俺がそんな事を考えていると、男が不思議そうに俺をみてくる。


「どうかしたのか?」


「あ……いや……すまない。少し考え事をしてた。それで?この街には長がいないと聞いたのだが?誰か代表で話が出来る人はいないか?」


「はっ?お前俺の話を聞いてたか?この街では商売は……」


「ああ、それは聞いたよ、そうじゃなくてな?俺は鬼人族を仲間にしに来たんだ」


「はっ?仲間に……だと?」


男達はお互いに顔を見合わせると、突然大声で笑い始める。


「はっはっは!!誰が貴様などの仲間になるか!!冗談はやめてくれ!!」


「ほむ……俺は真面目な話をしているんだがな?」


「それなら聞くが鬼人が商人の仲間になってどうするのだ?そもそも俺達鬼人は人間が嫌いだ。疎外され続けてきたからな」


「この〜!!さっきから黙って聞いていれば好き勝手言いやがって!!いいか?このお方はイグニアス王国の王であらせられるぞ?」


鬼人の男の暴言に紅玉の怒りが爆発する。

そして、俺の正体までさらっとバラしてしまった。


「はっ?この女は何を言っているんだ?こんなところに王様がいる訳ないだろう?そもそもイグニアス王国ってどこにあるんだよ?」


鬼人達はこの街からあまり出る事がないらしくイグニアス王国を知らなかった。

ってあれ?もしかして


「なぁ、ひとつ聞いていいか?」


「なんだ?」


「この街が新しい国の中にある事は知ってるか?」


「はっ?なんだそれ?馬鹿な事言うなよ!!俺達がどこかの国に属してるって言うのか?」


ああ……やっぱり……

街から出ないって事は、自分達の置かれている状況も知らないって事だ。


「マガストール、説明してやってくれ」


俺に促されてマガストールが鬼人達に説明している。


「な!!なんだと?そんな……急いでみんなを集めないと!!」


男達は顔色を変えて走り去ってしまった。


「あっ!!まぁいいか……とりあえず後を追おう」


置き去りにされた俺達は鬼人達の後を追うのだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ