134話 ケイローンと霊獣
パズルを完成させた俺の目の前に2体目の神獣が姿を現す。
上半身が屈強な戦士で、下半身が白馬?の不思議な神獣が目の前にいる。
右手には槍を持ち、左手には盾を持っている。
「えっと……」
俺がドリー達の方を見ると
『ケイローンか、懐かしいな』
『ドリーにリコル、妲己までいるのか』
ケイローンと呼ばれた神獣もドリー達の方を見ながら懐かしそうにしている。
『お前達がいるという事は、私を召喚したこの方がクロート様という事だな?』
ケイローンはそのまま俺の方を向くと4本足を器用にたたみ頭を下げる。
「俺はリブ・クロートだ。よろしくな」
『私はケンタウロス族のケイローンと申します。賢者と呼ばれておりましたので他の神獣とは違い知力でお役にたてると思います。医療にも精通しておりますので回復等もお任せください』
なるほど、参謀プラス回復役みたいな感じか……
「ではケインとアドオン達の方を任せよう」
俺がケインの方を向く、そして一緒にケインの方を向いたケイローンが驚いた顔をする。
『お前は!!』
『やはりケイローンも気がついたか?』
『というよりケイローンが気が付かない訳もないだろう?』
『ああ!!思い出した!!そうか!!ケイローンの』
他の3体もケインを見ている。
全員に注目されたケインは、少し恥ずかしそうにしながらも自分が何者なのか気になっていた。
「私はリブ様の参謀をしておりますケインと申します。どうやら神獣の皆様は以前より私の事を知っておられるようなのですが?一体どういう事なのでしょう?」
『ケインと言うのか?なるほど……そなたはこれまでクロート様にどのような助言をしてきたのだ?』
「助言ですか?申し訳ございません……こちらでの以前の記憶がありませんので、どちらかというとリブ様の事務的や軍事的な面で補佐をしております。ですので私からリブ様に助言する事は少ないですが?」
『ふむ……それはお主の真の実力を半分も発揮出来ていないという事だな?まぁ私がいなかったのだから仕方ないのであろうが、それにしても記憶がないというのは不便な事だな……おっと……そろそろ神力が尽きそうだ……ケインよ私の指輪はお主が持つが良い……それではクロート様また後日お会いしましょう』
ケイローンはそう言うと指輪となり姿を消す。
その指輪はケインの手の中に収まる。
『妾もそろそろお暇させていただこうかの……』
妲己もそう言うと指輪になり消えていく。
『ふむ、妲己にケイローンか……あの者たちならクロートの力になるだろう。それでは俺達ももどるとするかな』
『そうですね、それではこれで』
ドリー達もスッと消えていく。
「リブ様、これからはケイローン殿と一緒に更なるお力になれますよう精進致します」
ケインが畏まりながら頭を下げる。
「まぁそんなに気負わなくていいよ。今まで通りのんびりまったりいこう」
「はい、そうですね」
俺とケインは顔を見合わせて笑うのだった。
「リブ様!!」
そこに慌てた声でロイが入ってくる。
「おっ?ロイ?そんなに慌ててどうしたんだ?」
「はい!!カイザーさんから連絡がありまして、模擬戦中に地形が発生して、調査した所見たこともないモンスターが出現したようです!!今、カイザーさん達が交戦中ですが、かなり苦戦していると」
「見たこともないモンスター?それで?誰が戦闘してるの?」
「はい、現在戦闘しているのはカイザーさん、マーチさん、ノエルさん、ネージュさん、ギートさん、ミーシャさんの6人です。他の方達は部隊を率いて城に戻って来ています。私は伝令を頼まれました」
「なるほど……とりあえず地形とどんなモンスターなのかわかる?」
「地形は確認しましたのでわかりますが、モンスターは見ていないのでわからないです」
「そうか……」
俺とロイがどうしようかと悩んでいると
「リブ様、イフリート殿に聞いてみてはいかがでしょう?」
ケインがそう提案してきた。
「イフリートに?」
「はい、彼はあちら側におられたのですよね?もしかしたら地形を伝えればどのようなモンスターなのかわかるかもしれません」
確かに……元々モンスターとして現れた訳だし何か知ってるかも?
「イフリートを呼んで聞いてみるか」
俺はそう言うと指輪からイフリートを呼び出す。
『クロート様、どうされました?』
おや?なんか最初の印象と違ってやけに従順だな?
「ああ、新しいモンスターが見つかったみたいなんだけど、苦戦してるようだからそのモンスターについて何か知ってるか聞こうと思って」
『モンスターですか?それでそのモンスターはどのような?』
「容姿や特徴はわからないんだけど地形なら」
俺はロイの方を見る。
そういえばどんな地形なのか聞いていなかった。
新しい地形はなんだろう?
「はい、そのモンスターの地形は……」
俺達はロイの言葉を待つ。
「山です!!」
ん?
山?普通の?
「えっと……何か資源とかは?」
「それはわかりませんが、見た目は普通の山でした」
「あ……そう……」
『山か……』
「イフリートわかるのか?」
『ええ、山の地形を持つのは……カマイタチですね』
「カマイタチ?風で切り裂く……みたいな?」
『いえ、風では切り裂きませんが……簡単に言えば翼の生えた人喰い虎ですかね?』
「は?人喰い虎?」
『正確には虎ではありませんが、その表現が1番近いかと……しかし……カマイタチとは厄介ですね』
「厄介?強いのか?」
『戦闘力の強さもありますが、それ以前に奴は人語を使うのです』
「へ?人の言葉を話すモンスターって事?」
『はい、カマイタチに関してはモンスターという括りではなく霊獣なのです』
「霊獣?それってモンスターとどう違うの?」
『邪龍から漏れ出た邪気から産まれたのがモンスターです。奴らは知力も低く鉱山や岩山のような縄張りを棲家にしています。その縄張りを守るために他のモンスターを囲っているのが現状です。縄張りを持てない更に低位のモンスターは草原を徘徊しています。しかし霊獣は邪龍が自ら作り出したモンスターなのです』
「そうなんだ!!って事はそもそも今までのモンスターとは格が違うって事か……他にどんな霊獣がいるの?」
『霊獣は鱗蟲の長:応竜介蟲の長:霊亀毛蟲の長:麒麟羽蟲の長:鳳凰の四霊と呼ばれる長が眷属を持っています。カマイタチは麒麟の眷属です』
「なるほど……という事は各長に眷属がいるって事か」
『はい、ただ……私ではどんな眷属がいるのかまでは……』
「それで?カマイタチの弱点とかないの?」
『弱点ですか……申し訳ありません、私も霊獣には会った事がないのでそこまでは……』
「そうか、まぁそれだけわかればいいや、ありがとう」
『いえ、お役に立てたのでしたら』
「なぁ、それでさ……」
『はい?』
「ずっと気になってたんだけど、いつからそんな丁寧な話し方になったんだ?元々オラオラ系だったよな?」
『そ……それは……』
「それは?」
『は〜……シルフに散々説教されまして……再教育という名の……思い出すのも恐ろしい……』
なるほど……シルフにね……
「そうか……それは大変だったな……まぁ頑張れ」
俺は困った顔をしているイフリートをそのまま指輪に戻す。
「イフリートも大変だな……」
「そうですね……」
俺とロイは天井を見上げるのだった……