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城から始まる異世界物語  作者: 紅蓮
大陸騒乱編
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133話 休息と神獣

ハンゾー達が仲間になり数日が過ぎたある日

俺は1人で城の天守閣にいた。


ここには長い間来ていなかった気がする。

小屋には仲間が増える度に足を運んでいたが、天守閣まで来る事は無かった。

陽炎城が王城になってからは初めてかもしれない。

何故突然ここに来たのかと言えば、自国の景色を見たかったからだ。


ハンゾー達を仲間にした事で、イグニアス王国は平定された。

これからはこの国をもっと豊かで平和な国にしていきたい。

その為にも大陸統一は必要だ。


だが、ここからは本物の強者同士の戦争になる。

もしかしたら仲間から死者が出るかもしれない。

俺自身も今後無事でいる保証もない。

だからこそ、今このタイミングでここからこの城下町や国全体を見ておきたかった。


この景色を守りたいと思いつつ、これが見納めになる可能性も無いわけではない。

自分自身に逃げ道を作らない為にここに登ってきたのだ。


「俺はこの景色を守れるのか?もし負けてしまったら……」


色々な考えが頭の中を駆け巡る。

この世界に来た時は、ここまで大きくなるとは予想もしていなかった。

ケインと出会い、少しずつ仲間も増え今では王都と呼ばれる程発展した。

裏側にはテーマパークも建設中だ。


プロスパラスには属州になっていない国内の街から移住希望者が殺到していた。

田舎街のラティフンディアでさえ、今では1万人を超える移住者が住んでいる。


たった1人で小さな城から始まった俺の異世界生活は今では数えきれないほどの家族がいる。

俺は国全体を見回すと、ゆっくりその場に寝転がる。


「天守閣……ここから始まったんだよな〜」


寝転がりながらゆっくり目を閉じると、畳のいい匂いがする。

城下町からは賑やかな声が聞こえてくる。

もうこのままでいいんじゃないかと思えてくる。


しかし、近い将来ここも戦場になるかもしれない。

街にはバリアがあるとはいえ、俺が負けて占領されてしまえば今と同じ境遇とは限らない。


ここに住む全ての人々の人生が変わってしまう。

とは言えそれは他の国の住民達全員に言える事だから、ここだけが特別という訳ではない。

それでも俺を慕ってここに集まってくれたメンバーやこのイグニアスに住んでいる住民達を路頭に迷わせる訳にはいかない。


メンバー達は俺を大陸王にする為に今日もレベル上げや軍事演習を行っている。

最近では将軍クラス相手でも対抗できるほどの軍隊が出来ているらしい。


陣形や個々の軍事力アップまで、細部に渡って訓練しているそうだ。

俺は訓練にはほとんど参加していない。


俺が参加したり視察すると無駄な力が入ってしまい訓練にならないと言われてしまったからだ。

なので、カイザーを筆頭にロイ、ネージュ、ギート達に計画から訓練までの全てを任せてある。


ケインとフランは総合演習の時や新しい陣形が出来た時などに参加しているようだ。

小隊長の任命は俺の仕事なのだが、各部隊長から推薦された人物を任命するだけなので全く把握はしていない。


それじゃあ、お山の大将じゃないかと思われるかもしれないが月に一度行われる対抗模擬戦には参加している。

対抗模擬戦とは各部隊を東西に分けて全メンバーと軍隊で行う実践形式の戦闘訓練だ。

その時には東軍の総大将として参加するのだ。


その時にメンバーのスキルや部隊の能力を把握する事が俺の仕事なのだ。


その他ミーシャとサリーは操作性に問題がある機動戦士の製造を一旦諦め、魔導兵器を巨大化させる方向で調整した。

クーパーに任せているテーマパークも数ヶ月後にオープン出来る所まで完成している。

各属州都市もそれぞれ特産を見つけそれを活かして観光や移住に力を入れながら大きくなってきている。


まだまだやりたい事もあるし、作りたい物もある。

それに大陸王になる事が目的ではなく、邪竜を討伐して魔物の脅威を取り除く事が最終目的なのだ。


畳の上に寝転がりながらそんな事を考えていると、小さなテーブルの上に本がある事に気がつく。

王城になってからは、謁見の間の椅子の上に出る事が多かったので気にもしていなかったのだが、確かに最初の頃はここに本が出ていた。


「あれ?なんだろう?」


俺は立ち上がると本を手に取り中を見る。


『王による恩賞と官職就任によるスキルに関して』


と書かれていた。

俺によくわからないがとりあえず読み進める。


前者は活躍したり利益をもたらした将軍に対して俺から恩賞を与える事が出来るらしい。

それによって装備に能力が付加されるらしい。

付加される能力は恩賞の物次第だそうだ。


後者の官職によるスキルは、そのまま官職のスキルを覚える事が出来るようだ。


これはまた整理が必要になりそうだな……

まぁメンバーも増えたし再編が必要か……

面倒だな……


でも、官職に就けるだけで新しいスキルが手に入るのであれば戦力アップに使えるのかな?

もしかしたら官職の名前次第で得られるスキルが変わるかもしれない。


例えば参謀を取ってみても軍事参謀や宰相、軍師、相国みたいに名前を変えると得られるスキルが違う気がする。

その辺りも考えて官職を決めないとメンバーによっては使えないスキルを手に入れてしまう可能性がある。


これは最重要事項だな……ケインに相談してみよう。


ケインといえば忘れてたけど、建物のアップグレードをするようにお願いされていたんだった……

それに少数部族の捜索と遺跡から出た巻き物での召喚なんかも頼まれていた気がする……


落ち着いたらやるよって言い訳して逃げてきたけど、流石にもう落ち着いたよな……

みんな頑張っているのだから俺もそろそろ頑張らないと申し訳ないな。


ん〜〜!!

俺は両手を頭の上で組んで思いっきり背伸びをするとそのまま天守閣を後にする。


「リブ様、そこにいらっしゃいましたか!!」


階段から降りてきた俺にケインが声をかけてきた。


「どうかしたの?」


「はい、先日お願いしておりました召喚をお願いしたく探しておりました」


「それは神獣?それともドラゴン?」


「現在集まっているパズルは神獣です。ドラゴンのパズルはピースがかなり数が多いようでして流石に集めきれていないです」


「そうか、それで何体分なの?」


「はい、恐らく2体分かと」


ケインが恐らくと言った理由はそのパズルが俺にしか完成させられないからだ。

パズルのピースをなんとなく似た感じの物同士仕分けてくれているのだが、その作業だけでもかなり大変だろう。

その作業は、参謀庁も職員が総出で頑張ってくれている。


「じゃあ行こうか」


俺とケインはパズルのピースを手に訓練所に向かう。

今日の訓練は終わっているのか中には誰もいなかった。


「あれ?今日はもう終わりなのか?」


「いえ、本日は城外にて実践訓練をしております」


ケインが微笑みながら答える。

なるほど……

召喚するからわざわざ城外訓練にした訳か……


「まぁいいや……それじゃ始めるか」


俺はそう言うととりあえずドリー達を召喚する。


『クロート今日はどうしたのだ?』


「ああ、今から神獣を召喚するからドリー達にも立ち会ってもらおうと思ってな。知り合いかもしれないだろ?」


『おお!!ついに新たな神獣を復活させるのか!!』


『私達の仲間だったらいいのですわね』


「そういえばハティは?」


「ハティ様は自分は裏切り者だと思われているだろうからと」


「そういえばそうだったな、まぁいいか……じゃあとりあえずまずは1つ目だな」


俺が手に持ったピースを集めパズルを完成させると、地面に魔法陣が描かれゴゴゴゴっと影が上がってくる。


「さて、まずはどんな奴が出てくるかな?」


(わらわ)を目覚めさせたのは貴様か?』


体と同じくらいの大きな尾を9つ持った狐がギロっと俺を睨むと威圧してくる。


九狐(きゅうこ)か!!久しいな!!』


俺の後ろからドリーが声をかけると九狐はそちらを見る。


『お主は……ドリーか!!では隣におるのはリコルなのか?』


『ええ、久しぶりね』


『汝らがここにおるという事は、まさか妾を呼び出したのは……』


『ええ、クロート様よ?』


リコルにそう言われた九狐は俺の方を見直すと先程とは違いゆっくりと頭を下げる。


『知らぬ事とはいえ真の主人を威圧してしまうとは……許してくだされ……』


「ああ、別に気にしてないよ。ドリーも似たような感じだったしな」


『クロートよ……それを言うなよ……』


「リブ様……お話中申し訳ございません。こちらの九狐様のお名前を……」


4人?でそんな話をしているとケインが目を光らせながら俺に小声で聞いてくる。


「ああそうだったな、なぁ九狐は名前はなんていうんだ?」


『これはこれは、妾とした事が忘れておりんした』


九狐はそう言うと再度頭を深く下げると


『妾は九尾の狐で妲己(だっき)と申します。以後よろしうおたの申します』


妲己か……

それって確か中国の……


「妲己様でございますね?私リブ様の参謀をしておりますケインと申します。こちらこそよろしくお願い致します」


『ん?もしやお主は?』


妲己はケインの顔をマジマジと見つめるとドリーとリコルの方を向く。


『妲己もそう思ったか?俺も初めてこいつに会った時からな……』


『なんの話ですか?』


『リコルは気が付かんのか?』


3体の神獣はケインについて何か話をしているようだ。


「なぁ、もう1体召喚したいんだがこのままやってもいいか?」


『ほう、まだ復活する奴がいるのか?』


「ああ、じゃあ行くぞ?」


俺はそう言うと2つ目のパズルを完成させるのだった。


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