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城から始まる異世界物語  作者: 紅蓮
大陸騒乱編
133/160

130話 ハンゾーと決着

準備を始めて3日後、俺達は半蔵の城の前に立っていた。


城門の前には半蔵の軍が展開している。

対してこちらは数人で軍隊は連れてきていない。


側から見れば、とてもこれから戦争が始まるとは思えない光景だ。

俺はゆっくりと前に進み出ると、その軍隊を率いている人物に話かける。


「俺はこの国の王、リブ・クロートだ!!こちらの軍門に降るなら攻撃はしない!!だが、こちらに反するというのなら容赦はしない!!よく考えて返答して欲しい!!」


「私は半蔵様の四天王が1人紅玉である!!その問いに関しては考えるまでもない!!我々はそちらと1戦交える覚悟はできている!!遠慮はいらない!!全力でくるがいい!!」


四天王の紅玉と名乗った人物は、数日前にクリオを攻撃しその後捕えられ俺の前に連行された女性だった。


「なるほど、じゃあ遠慮なくやらせてもらおう」


「ふん!!軍隊も連れず数人だけで攻めてくるなど、我らも舐められたものだ!!」


紅玉の隣にいた男が俺達に向かって怒鳴り声を上げる。

次の瞬間、軍隊に指示を出すと陣を形成する。


「さぁ、どこからでもかかって来い!!」


一度横に広がった軍隊は紅玉達を頂点にV字型に変形すると、ゆっくりと前進してくる


「中々統制が取れたいい軍隊だな」


「ええ、一朝一夕で作られた軍隊ではないようですね」


俺の横でケインも感心している。


「そんな事よりこの状況をどうするのですか?」


ノエルが心配そうに聞いてくる。


「ん?別にどうもしないよ?適度に攻撃出来ない距離を保ちながら前進と後退を繰り返して時間を稼ぐだけだよ?」


「え?本当にそれだけなのですか?」


「ああ、無血開城してもらうのが目的だからね」


俺の返答にノエルが困惑している。


「やる気満々の相手が無血開城するとは思えないのですが?」


「大丈夫、その為のチャコ達なんだから」


この場にチャコとゼキルはいない。

カイザーとケインが俺達の前で大盾を構え、その後ろにネージュが控えている。

最後方に俺とノエルがいる。


「さて、カイザーとネージュであの四天王の誰かに攻撃を仕掛けてくれ」


「わかりました!!では先程指示を出していた男性からいきます!!ネージュさん前に出過ぎないよう!!」


「了解しました!!」


そう言うと2人は真っ直ぐ男に向かって行く。

その速さはまさに電光石火の如く、一瞬にして相手の目の前まで移動する。


と言うのは大袈裟で、ノエルのワープによって2人が男の前に移動しただけなのだが、男にしてみたら、突然目の前に敵が現れたのだから驚きを隠せない。


『リフレクトシールド!!』


『閃光脚!!』


カイザーが大盾を構えながらカウンターの準備をすると

その後ろからネージュが飛び出し、男に閃光の蹴りを放つ。


突然攻撃された男は何も出来ないまま、後ろに飛ばされると城壁に叩きつけられる。

次の瞬間、カイザーとネージュはノエルのワープでまた元の位置に戻ってくる。


「はっ?えっ?小太郎?えっ?今一体何が起きたの?」


紅玉をはじめとした残りの四天王も何が起きたのかわからないと言った顔だ。

隣にいたはずの仲間が、突然後ろの城壁に叩きつけられていたのだ。


紅玉はこの時初めて恐怖という感覚を覚えた。

自分達が最強で、誰にも負けない自信があった。

だからこそ主であるハンゾーの意思に反してこの戦争を仕掛けたのだ。


しかし、目の前にいる敵はその自信をたった2人で、しかも数秒のうちに打ち砕いたのだ。


「ハヤテ……霞……今の攻撃見えた?」


「いや……全く見えなかった……」


「ええ……全然……」


「この戦争……負けるわね……」


紅玉はこの戦争は失敗だったと思った。

というか、たった一度の攻撃でそう思わされてしまったのだ。


「紅玉?どうするの?このままじゃハンゾー様に顔向け出来ないわよ?」


「そうね……せめて一矢報えないと……」


紅玉はそう言うと、弓隊に指示を出す。

指示を受けた弓隊が一斉に矢を放つ。


『『バンデット ガード!!』』


ケインとカイザーが同時に遠距離攻撃を無効化するスキルを発動させる。

俺達に向かってきていた矢は全て見えない盾に弾かれてカイザーとケインの手前で全て落ちる。


「なっ!!」


それを見た紅玉達は驚きを隠せない。

一矢報いるどころか、攻撃自体を無効化されてしまったのだ。


「これは無理ね……」


一連の攻防でお互いの実力差を知ってしまった半蔵軍は一気に士気が低下し、絶望感が広がって行く。


「紅玉、下がりなさい」


その時、紅玉達の後ろからハンゾーと小太郎を抱えたガルフォードが現れる。


「ハンゾー様……申し訳ありません……」


「ここまで差を見せつけられたらもういいでしょう?どうやらあちらの目的も果たされたようですし……」


ハンゾーは後ろを振り返る。

それに気がついた紅玉達も振り返ると、城門から数人の人影が出てくるのが見えた。


「あれは!!」


「ええ、私達がどうする事も出来なかったスパイ達です。どうやらあちらの王様も彼らを捕縛する事が目的だったようです。最初から私達は相手にされていなかったと言う事ですよ」


「そんな……なんて事……じゃあ今までの攻防は?」


「陽動ですよ……あなた達と交戦している間に別働隊が彼らを捕縛する……と言うのがあちらの作戦でしょう……なので先程の攻防もまだ本気ではないと言う事ですよ……」


「あれが本気の攻防じゃなかったと……そんな……」


紅玉はその場に崩れ落ちる。

ハヤテと霞も信じられないといった感じだ。


「紅玉達は小太郎をお願いします。私はガルフォードと共に王に挨拶に行ってきます」


ハンゾーはそう言うとガルフォードと一緒にリブの元に歩いて行く。


「なぁガル……王は俺達を受け入れてくれるかな?」


ハンゾーが小声でガルフォードに話かける。


「さぁな?だが、あちらの目的があいつらだったとすれば話くらいは聞いてくれるんじゃないか?」


ガルフォードは肩をすくめると両手を広げる。


「だな……出来ればこのまま白旗を上げたいのだが」


そんな話をしながらリブ達の前に出ると2人は地面に片膝を着き、頭を下げる。


「お初にお目にかかります。ハンゾー・ブランと申します」


「あなたが半蔵ですか?そちらは?」


「はっ!!こちらは私の親友のガルフォードと申します」


「半蔵にガルフォード……忍者が好きなのか?」


「はっ!!我々はアメリカのN・Y出身で幼い頃から日本のニンジャに憧れておりました。こちらに来た時にニンジャになれると喜びこの職につきましたが、私が王候補だったせいでこの様な組織ができまして……そして今回王と交戦する事態に……私は望んでいなかったのですが……」


「ふむ……まぁそれはそれで仕方ないんじゃないか?」


「え?」


「王候補だからこちらの世界では、お互いに戦うのは当然だったのだから別に気にしてないよ」


「しかし……」


「うーん……細かい事は俺にもよくわからないけど、俺の元にはクーパーみたいに王候補のまま配下に入った人もいるし、半蔵が無血開城して俺の配下に入るのであれば今回の件は特に責める事はしないよ?」


ハンゾーとガルフォードは驚いている。

俺に首でも差し出すつもりだったのだろう。


「というかアメリカ出身という事は半蔵じゃなくてハンゾーなのか?」


「はっ!!日本のニンジャで有名なのがハンゾーでしたので」


「なるほどな……それで?ハンゾー達はどうする?」


「我々はリブ様にお仕えしたいと考えております」


「それはガルフォードも四天王達も同意の上か?」


俺はガルフォードの方を見る。


「はい……私は元々ハンゾーの意思を尊重しておりましたので……紅玉達が暴走して今回の戦争を起こしましたが、他のメンバーは説得済みです。紅玉達四天王も先程の攻防で実力差を痛感していましたので問題ないかと」


「ふむ……お互い予定通り……という事か」


俺の言葉にガルフォードが一瞬顔を上げて目を大きく開くが、すぐに下を向く。


「さすがでございます……お見それいたしました……」


ガルフォードに変わってハンゾーが答える。


「さて、チャコ達もそろそろ着く頃だ。ハンゾー達も一緒に尋問しようか」


俺が城門の方を向くとチャコとゼキルがすぐそこまできていた。


「はっ!!」


俺はハンゾーとガルフォードを俺とケインの後ろに立たせるとチャコ達の到着を待つのだった。



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